syudou『デイバイデイズ』の歌詞を考察!「ラーメン」を通して見えてきたカレシとカノジョの『愛』の境地
こんにちは!
ボカロ好きWebライターの勝哉エイミカです!
今回、久しぶりに歌詞考察をする時間が取れた為、ずっと考察をしたくて仕方がなかったsyudouさんの『デイバイデイズ』の歌詞考察をしてみようと思い立ち、筆を執らせていただきました。
なお、今回の歌詞考察は『キュートなカノジョ』『カレシのジュード』の2曲の内容も踏まえた上で行っていきます。
その点のみご了承いただけますと幸いです。
というわけで、早速歌詞考察開始です!
1. 注目すべき歌詞はCメロの「ラーメン」!?
本作の歌詞考察を始める際、1番最初に私が気にした事は、この楽曲の視点は誰から見たものなのかという点でした。
『デイバイデイズ』は、その歌詞から見てわかるように『キュートなカノジョ』『カレシのジュード』の流れを組んだ楽曲となっています。
その為、こちらの2曲にまつわる歌詞が多く盛り込まれた1作ともなっています。
歌詞の中には「アタシ」と「僕」、2つの一人称が使われています。
前述した内容から鑑みるに、「アタシ」が『キュートなカノジョ』のカノジョ、「僕」が『カレシのジュード』のカレシの視点である事はまず確かです。
とはいえ、「僕」視点で歌われているのは2番だけで、サビやCメロなどの楽曲の盛り上がりどころは全て「アタシ」という一人称が使われています。
となると、この楽曲のほとんどの視点はカノジョ側で構成されている事が考えられます。
さて、それを前提にまず注目したいのが、Cメロに出てくる「ラーメン」という歌詞です。
「」がつく歌詞であるところから察するに、これがカノジョとカレシの会話である事が察せられます。また後半に「アタシ」と出てくる事から、カノジョ視点の過去回想である事も察せられます。
ではここで一度、『キュートなカノジョ』の歌詞を振り返ってみましょう。
実は、こちらの楽曲にて「ラーメン」の単語を言及している歌詞があるのです。
『キュートなカノジョ』は、浮気をするカレシの事を「突きにきた」カノジョの話です。要するに、浮気症のカレシを刺してしまったカノジョの話、と解釈できるでしょう。
「過去を食らう程にポップなエレジー」という歌詞からは、カノジョがカレシと一緒に過ごしてきたこれまでの日々、その中にあった楽しい思い出すらも超えてしまう程の「エレジー(哀歌=哀しみ)」に囚われている様が伝わってきます。
そしてこの哀しみで胸が覆われている時に、続いて歌われた歌詞が「排気口から香るラーメン」という歌詞です。
前述の「過去を食らう程に」という歌詞と関連付けて考えると、この「ラーメン」というのが、カノジョとカレシの過去に関連する単語である事が想像できます。
そして今回公開された『デイバイデイズ』。
そこで歌われている会話の内容からは、2人がよく同じラーメンを一緒に食べに行っていた様が想像できるようになっています。
ここから察するに、カノジョにとってカレシとラーメンを食べに行ったという「思い出」が非常に大事なものであった事が察せられます。
何気ない日常の1シーンですが、そんな何気ないやり取りすらも愛おしく大事なものに思える程に、カノジョはカレシの事を愛していたという事なのでしょう。
その様からは、「1日1日」という意味を持つ曲名『デイバイデイズ』に通じるものを感じざるを得ません。
それすらも超えてしまう程の哀しみに囚われたカノジョの思いを考えると、本作の結末はなんとも複雑な気持ちにさせられます。
ちなみに『カレシのジュード』の方には、「ラーメン」は一切出てきません。
その思い出を振り返るような描写もない為、カレシ側からすればそこまで大事なものでもなんでもなかったのでしょう。
カレシとカノジョの価値観の差を感じる描写ですね。
2. ついに満たされちまったカレシ
それでは次に、カレシ視点の考察をしてみたいと思います。
カレシ視点は、2番の歌詞に綴られています。
その中でも注目すべきは、2番Aメロの歌詞です。
「流れる血も涙も息も絶え絶え身悶えさえも」という歌詞から、これがカノジョに刺されたカレシが死にかけているシーンの視点である事が察せられます。
つまり『カレシのジュード』でカノジョに追い詰められた、その直後のシーンという事になりますね。
しかしこんな死に直面した現状においてカレシが口にしたのは、死への恐怖でも痛みへの苦しみでもなければ、「これでこそなんだ この痛みが愛を語っている」という喜びに満ちた歌詞です。
この歌詞に込められた感情を紐解くには、一度『カレシのジュード』の歌詞を振り返る必要があります。
『カレシのジュード』2番サビの歌詞です。
ここで彼は「生身の言葉じゃ生かされない」事、自分の体に「穴」をあけ続けている事を歌っています。
ここで登場する「穴」がピアスホールである事は、最後の歌詞で歌われている「15ゲージ」から察せられます。ゲージ(g)はピアスのサイズを示す用語だからです。
「自分の普通で生きてみる」と誓ってからピアスを刺している描写、そして「生身の言葉じゃ生かされない」という歌詞を鑑みるに、彼は「痛み」を通してでなければ安堵や喜びといった感情を得られない人物である事が察せられます。
たとえば、カレシの事を「愛してる」と言葉で伝えても、カレシにとってそれは本当の事のように感じられない、という事です。
それを何か別の痛みに変換して与えられる事で、ようやくその言葉に込められた想いを彼は実感できるのでしょう。
そう考えると先程の『デイバイデイズ』の歌詞からは、彼がカノジョに刺された事で、その痛みからカノジョの本当の想いをようやく汲み取る事ができた、と考えられます。
また『カレシのジュード』では、このような歌詞も歌われています。
ここで登場する「アナタ」が、カノジョの事を指しているのは『カレシのジュード』の歌詞全体から察せられます。
後半では「でもでもアナタも独りじゃ生きられない」という歌詞も歌われており、『デイバイデイズ』でもそれに対する返答と思しき歌詞がカノジョ視点で歌われています。「アナタ」=カノジョの確固たる証でしょう。
言葉じゃ満たされないけれど、アナタ(カノジョ)を待っているというカレシ。
そこからはカレシが、カノジョが自分の為の痛みを運んできてくれるのを待っているような様が伺えます。そうなると、カレシが浮気を繰り返していたのも、カノジョが傷つく様から得られる罪悪感などから『愛』を感じる為のものだったのかもしれませんね。
そして刺された事で、ようやくカノジョの愛を知る事ができたカレシは、『デイバイデイズ』2番Aメロにて「全てがこの身の好みの求める望みと誇り」と歌い上げます。
「この身の好み」「求める望み」「誇り」これらは全て、自分を刺したカノジョの事を指していると推測できます。
彼にとって「痛み」を味わう事こそが至高。それにより、初めて相手の情を理解できる。
となれば「死」に到達する程の痛みを与えてくれたカノジョは、彼にとって自分の事を深く愛してくれた、最高の恋人という風に捉える事ができます。
この歌詞は、その喜びを露わにした歌詞だと言えるでしょう。
つまり『カレシのジュード』で永遠満たされずにいたカレシは、『デイバイデイズ』でようやくその心を満たす事ができたのです。
しかし『デイバイデイズ』の歌詞を見る限り、カレシの方が満ちても、愛すべき相手を見失ったカノジョの方が今度は満たされなくなってしまったように思えます。
繰り返し歌われる「笑っちまう程に満たされない」という歌詞が、そのいい例でしょう。
なんとも見事な思いの入れ違い。
最期の最期までお互いの思いが上手く重なり合わないところからは、改めて彼らの歪な関係性を感じられますね。
まとめ:カノジョとカレシの『愛』の境地『デイバイデイズ』
以上、『デイバイデイズ』の歌詞考察でした。
こうして『デイバイデイズ』の考察をしてみると、この曲はただの続編曲というよりは、『キュートなカノジョ』と『カレシのジュード』へのアンサーソングとも見て取れるような気がします。
『キュートなカノジョ』だけでは描けられなかった過去描写、永遠満たされずにいたカレシの充足感など、各楽曲のみでは得られなかった答えが本作からは読み取れます。
満足を得られたカレシにとっては言うまでもなく、本作で得た答えは彼にとっての『愛の境地』といっても過言ではないでしょう。
カノジョの方にとっても、満たされないという終わりではありましたが、見方を変えれば、それによってどれだけカレシという存在が自分の中で大きかったのかを理解したと捉える事ができます。
1番では「誰もアナタに敵わないの どこを比べたって全部段違いなのね」という歌詞も歌われていますし、カレシこそがカノジョにとっての「理想の相手」だった事は明確でしょう。つまりカノジョもまた、自分の『愛の境地』に気づく事ができたと解釈できます。
しかし達した時にはもう、元には戻れないとこまで来てしまった。
それとも、そこまで来てしまったからこそ、この境地に達する事ができたと言うべきか。どちらにせよ、彼らの相手への想い(愛)が、最後まで交わらずに終わってしまった事は確かでしょう。
2人の見事な価値観の差、感情の入れ違い。あまりの複雑な対比のさせ方からは、ここまで来るともう一種の『美』すら感じます。
改めて、syudouさんの作詞センスに度肝を抜かされる1曲でした!
以上、まとめ終わり!
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
※本記事は、あくまでも個人の考察・解釈による記事です。
楽曲制作者様等の原作に関わる方々とは、なんの関わりもございません。
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