事件解説シリーズ 西サハラ問題#1 ~はじめに~
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今回は事件解説シリーズ 西サハラ問題の第1回です。
次回: https://note.com/rekishinoakuma/n/n4ea2724d4419
はじめに
皆さんは西サハラ問題をご存知でしょうか。西サハラ問題はモロッコとサハラ・アラブ民主共和国による北西アフリカに位置する西サハラと呼ばれる地域の領有をめぐる問題のことです。西サハラ問題の主な対立軸は上記の2ヶ国ですが、実際はその2ヶ国に加えて様々な周辺の国家も絡む極めて国際的な性格をも有しています。
モロッコ・西サハラ概要
モロッコ・西サハラの概要
モロッコ・西サハラは北西アフリカに位置しており、両国ともアルジェリア・モーリタニアと国境を接しています。アルジェリア・モーリタニアは両国の隣国であるだけでなく西サハラ問題を語るうえで欠かせない国家となっていきます。
西サハラ最大の都市アイウン
今回の舞台となる西サハラ地域は領土の大半が北アフリカに広がるサハラ砂漠に占められており、農業に不向きで比較的不毛な土地でありベルベル人による放牧やオアシス農業が産業である一方で海岸沿いは世界有数の好漁場であり、石油・鉄鉱石・ウラニウムなどの鉱物資源が埋蔵され、1962年にブクラアで世界有数の埋蔵量を誇る燐鉱石が発見されるなど資源の豊富な土地でもあります。
列強のパワーバランス調整
スペインのモロッコ進出
米西戦争で旧来の植民地を失ったスペインにとってモロッコは最後の希望となった
そんな西サハラに目を付けたのがスペインです。スペインは15世紀以来サハラ北西洋岸に関心を寄せ、19世紀後半に遂に西サハラへの進出を開始しました。そして1885年には西サハラ地域の保護国化を布告し西サハラ地域の植民地化を進めていったのです。
当時のスペインでは1898年の米西戦争でアメリカに敗北して旧来の植民地を喪失したことからスペイン植民地帝国が崩壊し、その埋め合わせをアフリカ特にモロッコに求める動きが盛んになっていきました。そうしてスペインはモロッコへの進出を図ろうとしましたが、スペインの他にも大西洋・地中海と接するモロッコに着目した国が存在していたのです。その国はフランス・イギリスです。
北西アフリカ(マグリブ地方)への欧米諸国の進出
欧米列強にとってモロッコの領有は争点となった
フランスは既に1830年にアルジェリア、1881年にチュニジアに進出しており同じマグリブ地方に位置するモロッコへの進出を図っていました。またイギリスは地中海の入り口に位置するジブラルタルを領有し、1879年にモロッコに北西アフリカ会社を設立するなどフランスと同様にモロッコ進出を図っていました。
こうしてスペイン・フランス・イギリスの利害関係がモロッコを巡って衝突し、モロッコはどの国の勢力圏に入るかが問題となっていったのです。当時のフランスとイギリスはモロッコを含むアフリカの植民地を巡って対立しており、植民地帝国が崩壊し独自性を取ることが不可能となったスペインは英仏両国と協調することを求められました。
イギリス・フランス・スペインのモロッコを巡る関係
そこで英仏両国は1904年に英仏協商を締結することでフランスはモロッコを獲得し、イギリスはエジプトを獲得する代わりにモロッコから撤退することを約束しました。さらにフランスはイギリスを牽制するためにスペインとも協調を重ね西仏両国でモロッコを分割し、最終的に1912年にモロッコはフランスの勢力下に組み込まれました。
こうしてモロッコは欧米列強の都合で欧米列強によって分割されたのですが、住民の事情を無視したモロッコの分割支配は後に西サハラ問題という紛争の原因のひとつとなっていくのです。
次回はモロッコの独立と西サハラ問題の始まりについて解説していきたいと思います。それでは皆さん次回お会いしましょう!
【参考文献】
◎ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
◎日本大百科全書
◎モロッコ基礎データ|外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/morocco/data.html#section1
◎中山雅司「西サハラ問題と国連による解決」
『創価大学比較文化研究』1992(9):109-150
◎深澤安博「20世紀初頭のスペインのアフリカニスモ -1898年の「破局」から帝国の復活ヘ- (上)」
『茨城大学人文学部紀要. 人文学科論集』2002 37:21-49
◎部谷由佳「西サハラの変容と国際社会 –アフリカ最後の「植民地」の自立と共存に向けて-」
『アジア文化社会研究』2011(12):59-80
※『日本大百科全書』『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』は JapanKnowledge 及び コトバンク でご覧になれます。
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