「ゼンブ・オブ・トーキョー」、青春のゼンブとアイドルへの偶像性が詰め込まれた大傑作!
【概要】
日向坂46四期生×熊切和嘉監督による東京を舞台にした、ハッピーオーラ全開の青春映画が誕生!
出演は、本作が映画初出演となる人気アイドルグループ日向坂46の四期生全員!
アイドルデビューから約2年で演技初挑戦の11人がメインキャストとして大抜擢され、東京を訪れた修学旅行生を堂々と演じる。11thシングル楽曲「君はハニーデュー」でセンターを務めたことが記憶に新しい正源司陽子が、主演として映画を引っ張っていく。
四期生11人それぞれの魅力を引き出しながら監督を務めたのは、『私の男』『#マンホール』など数々の革新的な作品を世に放ち、最新作「658km、陽子の旅」が第25回上海国際映画祭のコンペティション部門において、最優秀作品賞、最優秀女優賞(菊地凛子)、最優秀脚 本賞(室井孝介、浪子想)の最多3冠に輝いた熊切和嘉。これまでの作品群とはまったく異なる青春映画を作り上げ、新境地を切り拓いた。
制作陣は、企画段階から11人全員に直接事前インタビューを行い、それぞれの学生時代の思い出や、アイドルになる前のエピソード、東京への想い、彼女たち自身のキャラクターについてもヒアリングを重ねた。それを基に、彼女たちのリアルな物語が盛り込まれた完全オリジナル脚本を作り上げ、配役を決定した。
(公式サイトより抜粋)
【あらすじ】
「東京の全部を楽しむぞ!」と班長の池園(正源司陽子)は修学旅行で東京の名所を巡る完璧なスケジュールを立て、楽しみにしていた。
しかし、なぜか全員バラバラに!「なぜ!?これはマルチバース?」と池園は混乱しつつも、東京観光に繰り出す。
(公式サイトより抜粋)
【はじめに】
さて、作品の話をする前に軽く自分語りをしておこう。
筆者はこの春、実に約20年ぶりに東京を訪れた。20代のはじめにパニック障害を患い、それ以来公共交通機関の利用を避けていたため、これだけの間隔が空いてしまった。
長い時間をかけて少しずつリハビリを重ね、仕事に復帰、車を使っての遠出など、だいぶ自由に行動出来るようになり、いよいよ意を決しての東京旅行だった。
筆者は映画が趣味であるため、東京の最新設備が整った映画館を利用してみたいという想いももちろんあったのだが、それ以上にSNSを通じて知り合った人たちと実際に会ってみたいという想いが強くあった。
かくして東京旅行は大小様々なトラブルがありながらも無事に成功した。同じ趣味を持つ仲間たちと現実世界で時間を共有するというかけがえのない経験も出来た。ちなみにこれに味を占めて、その後も何度か東京を訪れている。
さて、こうした前提を踏まえて作品に話を移していこう。
【レビュー①】 ネタバレなし
ミリしら勢でも間違いなく楽しめる!
まず最初に、筆者は日向坂46に関してほとんどなんの知識も持ち合わせていない。恐らく46が47と書いてあっても疑問に持たないだろう…。
所属メンバーに関しても同様で、知っていると言えばその名前に大きなインパクトがある正源司陽子ぐらいで、その正源司陽子についても顔は分からないというありさま。
そのため、もちろん本作が四期生で構成されていることなど知る由もなければ、そもそも四期生までメンバーがいたことさえ知りもしない状態で鑑賞に臨んでいる。
さて、そんな筆者の率直な感想だが、衝撃的に面白かった!
ミリしらの日向坂46をモチーフに描かれた作品であり、且つ演技経験のない素人が演じているという状況から、はっきり言って舐めてた案件ではあるのだが、そのハードルの低さを考慮しても実に素晴らしい作品だった。
さらに素晴らしいのは、本作がアイドルの瑞々しさを切り取っただけの青春映画の枠に収まっていない点である。
もちろんアイドル映画としての側面は大いにあるが、ストーリーの構成や演出、その先にあるメッセージ性など、一流の映画と比較してもなんら遜色のない出来と言っても過言ではないだろう。
その上でさらに、日向坂46のメンバーを好きになってしまうという二重にも三重にも楽しめる作品になっているのだから恐れ入る。
その理由を事項ではより詳細に解説していこう。
【レビュー②】 ネタバレあり
離散からの集結が生む感動!
ここからはより具体的な話をしていく。
修学旅行のために東京へ向かう冒頭、グループごとに分かれて自由行動で東京観光をする序盤はさながらアイドルのPVのようだ。
のちの展開を踏まえた上で振り返ってみればここのキラキラ感は必要とも思えるが、鑑賞中はこの感じがずっと続くとなると少しキツいかもしれないと思ったのもまた事実…と正直に言っておこう。
物語は彼女たちが浅草を観光し、各々がバラバラに昼食を取ろうと言い出したところから大きく動き出す。
班のリーダー、池園(正源司陽子)が待ち合わせ場所に着くも、他のメンバーの姿が見当たらない。連絡をするものの、他のメンバーからはちゃんと待ち合わせ場所にいるよとの返信が来るばかり。
全員が同じ場所にいるはずなのに誰の姿も見えない。果たしてこれは異世界転生?マルチバース?というSF的な投げかけは非常に面白かった。
もちろん、これはタネを明かすとなんのことはなく、メンバーそれぞれに目的や事情があり、池園から敢えて距離を取りたかったというだけの話ではあるが、それまでのPV的な緩さからガラッと雰囲気を変えたことで、観客の興味をグッと引き寄せたに違いない。
池園から解放された羽川(藤嶌果歩)、桐井(渡辺莉奈)、説田(石塚瑶季)、桝谷(小西夏菜実)の4人はそれぞれの目的に邁進し、孤立した池園は自らが考案した観光スケジュールをこなしながらメンバーを探すことになる。
彼女たちが何を目的にどんな行動に出るかについては映画を観てのお楽しみにして貰いたいが、ここからの彼女たちの躍動感は本当に凄まじかった。
各々の目的に邁進するメンバーだが、様々なトラブルに見舞われ、なかなか思うようにことが進まない。
そんな彼女たちを知らず知らずのうちに手助けするのが班長の池園という点も実に良かった。
終盤には、その池園を中心にバラバラになっていたメンバーたちや別の班のメンバーがとある目的のために集結するという激アツの展開が待っている。
離散からの集結という展開は作劇におけるテッパンではあるが、本作では非常に上手く機能していたように思える。
高校3年間という刹那的な煌めきへの執着があるからこその離散であり、しかしその煌めきの本質は3年間を共に過ごした仲間たちとの絆である故に集結へと向かっていくのである。さらに言えば、その集結の先に待つのはアイドルという存在の肯定なのだ。
劇中におけるアイドルの役割と、演者たちの本来の姿であるアイドルがここに来て重なり合う構成は実に見事だ。
池園班は浅草を観光し、その後バラバラになり、新宿や池袋など、各々の目的地へと向かっていく。
ここで先に触れた自分語りの部分に話を戻すが、筆者が東京旅行で計画していた観光地巡りの一つが浅草であり、旅行の拠点が新宿であり池袋であった。池袋でのオタ活や新宿駅構内で迷子になる様子など、まさに身をもって体験した出来事が劇中でも描かれていたことに大きな親近感を覚えた。
また、大事なのは東京という街そのものではなく、そこでの出逢いや過ごした時間であるというメッセージ性についても、彼女たちと同じように趣味仲間と実際に会うという経験をした筆者にとってはより深い実感を伴って響いたのだ。
年間100作品程度を鑑賞する筆者だが、そのうち本当に面白いと思える作品は10数本程度で、その上これは自分のための映画だと思える作品はそこからさらに絞られる。そうした中で本作は間違いなく自分のための映画だと自信を持って言える。
もっとも、これはあくまでプラスαの部分であって、こうした体験の共有がなかったとしても本作の魅力が損なわれることはないだろう。
【最後に】
今回のレビューはあくまで日向坂46に関してミリしらである筆者の視点で書いたものにすぎない。当然のことながら、日向坂46のファン(どうやらファンのことを「おひさま」と呼称するらしい)であればより様々な角度から本作を楽しめることだろう。推しメンがあんな役やこんな役をやっている、こんな表情はアイドルの時には見たことがない、などファンであればあるほどディープな部分で楽しむことが出来るはずだ。
とは言え、繰り返しになるが、ミリしら勢でも十分作品を堪能出来る構成になっている上に、日向坂46のメンバーをちょっと追ってみようかなと思わせた時点で制作側の大勝利である。
すでに公開から4週目を迎えており、上映館数も決して多くはないため、劇場で鑑賞する機会は限られているだろうが、筆者としては強く鑑賞をおすすめしたい作品である。
ぜひ劇場に行ってもらいたい。
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