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2024年上半期映画ベスト10発表!! 【後編】



前書き

さて、サクッと書き上げる予定で始めた上半期ベスト10の発表ですが、自由気ままに書いていたら随分と長文になってしまったので前編後編の2部構成となりました。
前編の記事はこちら↓

では、早速ベスト10の上位5作品の発表です。


第5位

第5位は、ルカ・グァダニーノ監督の「チャレンジャーズ」。
本作に関しては先日記事にしたものがあるのでそちらを参考にしてみてください。

上記の記事中でも触れていますが、筆者にとって本作の第一印象は実はそれほど良いものではありませんでした。とは言っても、決してネガティブな意味合いではなく、「面白かったけどそこまでじゃないかな」といった感じです。
そうした評価が数日後に一気に高まり、気付けば上半期ベスト10で5位にまで上り詰めてしまいました。数日間のうちに何故ここまで評価が高まったのかという点に関しては上記の記事で詳細に触れていますので、気になるよという方は是非読んでみてください笑
宣伝はさておき、記事中では触れなかった部分で言いますと、ゼンデイヤが圧倒的でしたね。これまであまり女優として彼女を意識することがなかったのですが、こんなに良い役者だったのかと自身の目の節穴ぶりを嘆くばかりです。


第4位 

第4位は、ジョージ・ミラー監督によるマッドマックスサーガの最新作「マッドマックス:フュリオサ」。
映画ファンを大熱狂させた前作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」から早9年。待ちに待った新作は大人気キャラのフュリオサの過去にフィーチャーした前日譚ということで、期待した映画ファンは非常に多かったと思います。
ただ、事前の期待値が高すぎたか、はたまた前作とは随分と違ったアプローチ故か、世間では賛否が大きく分かれてしまっていますね。
これに関しては記事にしたいことがあるのですが、なかなか纏まった時間が取れず先送りの状態です。気長にお待ちください。
もちろん、順位が証明するように筆者は肯定派です。前作のような神懸かった編集こそないものの、定型的な復讐譚から逸脱した物語と、前作に負けず劣らずのアクションの素晴らしさを思う存分堪能しました。
前作と続けてみるとそのカタルシスは何倍にも膨れ上がるという意味では理想的な前日譚ではないでしょうか。


第3位

第3位は、ショーン・ダーキン監督の「アイアンクロー」。
筆者の中では今年は女性が主人公の映画が圧倒的に面白いという印象なのですが、本作は家父長的な呪いに囚われたプロレス一家の顛末を描いた物語ということで、ベスト10の中でもかなり異色な作品となっています。
実話を基に描いた作品なのですが、もう信じられないほどに悲劇の連続です。映画のために脚色してるんでしょ?と思いましたが、とある知人に聞いた話ですが、映画の中では描かれていない悲劇が現実では起こっていたようで、むしろ現実の方が残酷でした…。
有害な男性性が顕在化される物語が多い昨今ですが、そうした物語で犠牲になるのは女性だけではなく、男性もまたその対象になるわけです。
本作では家父長制がもたらす呪いの恐ろしさ、そしてその呪いから如何にして抜け出すかという道標のようなものが描かれていて、大変素晴らしい作品でした。


第2位

第2位は、ギリシャ出身の奇才ヨルゴス・ランティモス監督の「哀れなるものたち」。
ランティモスと言えば毎回一風変わった世界観を提示してくる映画作家ですが、本作でも非常に奇抜な設定と世界観が描かれていました。
魚眼レンズを通して映し出される独特の映像や奇妙なキャラクター、突拍子もない展開など、これぞヨルゴス・ランティモス!と言った作品ですが、筆者が心を打たれたのは狂った世界で知性と主体性を獲得していくヒロインの力強い姿でした。
また、現在進行形で続くイスラエルによるガザでのジェノサイドを想起させる描写もあり、大変意義のある作品のように感じました。
本作に関しては映画文筆家の児玉美月さんのレビューが素晴らしかったのでリンクを載せておきます。

筆者が特に好きな一文を以下に引用しておきます。興味を持った方は是非読んでみてください。

世界を動かしてきたのは、我こそ世の真理を見抜く思慮深い人間であると高みに身を置きたがる冷笑主義者ではなく、身の丈を知らされながら志を何度挫かれようと泥臭く這いつくばる理想主義者のほうではないか。


第1位

第1位は、𠮷田恵輔監督の「ミッシング」。
これは筆者にとっても意外な結果でした。𠮷田監督の作品は過去に5作品を観ていて、もちろんどれも素晴らしい出来なのですが、こうしたランキングに入る機会は珍しく、ましてや1位という結果は全くの想定外でした。
本作のどこに感銘を受けたのかを詳しく解説した記事を以前書いていますので、気になる方はそちらを読んでみてください。

記事に書かれていることを端的に纏めると、意図的に生み出された観客と主人公との温度差によって自らの加害性が顕在化し、また、その温度差が埋まっていく過程で善良であること、誠実であることの重要性が示されるという映画体験の素晴らしさ、というような話をしています。
本作に限ったことではないですが、やはり映画というフォーマットで重要視されるのは自らの価値観や信念が土台から揺るがされるという体験なんですよね。そうした点において、観客と主人公の温度差を利用した映画体験を提示した本作は賞賛に値します。
そして、TVドラマを主戦場としてきた石原さとみだからこそ到達出来た新境地に関しても特筆しておきます。


後書き


さて、前編後編の2回にわたって紹介してきた2024年上半期映画ベスト10の発表ですが、いかがでしたでしょうか。
10作品を改めて振り返ってみると、「アイアンクロー」を紹介した時にも少し触れましたが、やはり女性が主人公の映画の面白さが際立ってますね。特に上位5作品のうち4作品の主人公が女性という結果にも驚いています。
視点を少し変えると、この狂った世界でどう生きていくかというテーマの作品もとても多かったですね。より混沌を深めていく現代社会でいかにマッドに染まらずに生きていくか、そのヒントが映画の中に秘められているのかもしれません。
すでに下半期が始まっていますが、より多くの傑作に出逢えることを期待して映画鑑賞に臨みたいと思います。
ここまでお付き合いいただき大変ありがとうございました。それでは。


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