障害児の親が障害者施設で働いてみて知ったこと 1
私は2017年10月から、渋谷区のNPO法人の運営する知的障害者グループホームに料理ボランティアで関わり、すぐにアルバイト職員として働き始めました。
そのNPOはグループホームのほかに、B型就労支援施設の事業所経営と、休日にレクリエーションを楽しむ施策を行なっており、正職員、アルバイト、ボランティア、渋谷区福祉課職員、相談支援員、成年後見人、移動支援事業者など、多くの人がさまざまな立場で関わっていました。
私はそこで、障害者福祉に関わる人間は3種類いることを知りました。
彼らの人生からストレスを軽減し「安心と安らぎ」を与えたい人
彼らの人生と心に「刺激と成長」を与え自己実現をサポートしたい人
彼らと関わることで自分の自己実現や利益を追求する人
グループホームの職員になるような人は「安心と安らぎ」を与えたい父性・母性の強い人が多く、ただ彼らを守りたいと願います。
就労施設やイベントで関わりたい人は「刺激と成長」を与えたい人なことが多く、明るく元気な若者が多かったり、ときに厳しく彼らに接する教育者のような方も多くいる印象です。この「安心」と「刺激」は真逆のベクトルですから、本質的に相容れません。そのため、職員同士の意見の相違が起こり、離職の原因の一つにもなっているようでした。
そして3番目の「自分の自己実現や利益を追求する人」がいるのがとても厄介だと思い知りました。そういう人たちは、外面と見栄と虚栄のパフォーマンスに心血を注ぎ、表に見えないところで、彼らの人権も、彼らを大切に思う職員の気持ちも軽々と踏みにじります。
支援のベクトルの違い
この視点が欠けていると、働く者の心をまとめることは出来ない。
それが理解できていることが、障害者福祉事業所を経営する人間の素養として重要だと強く感じています。
前述の3番目の「自分の自己実現や利益を追求する人」などは、障害児の親としては論外な存在ですが、そういう人は声が大きく、目立つ活動をしてみせるのも事実で、この人不足の業界において、排除は難しいのだろうと感じます。よほど悪辣な私物化や不正をしていない限りは。
私は障害児の親なので、当然「安心と安らぎ」が最重要と考える人間です。美味しいものを食べて、安心して眠りについてくれること。それを同じように最重要と感じてくれている経営者の元に、息子を預けられることが理想ですが、まだその道は見えていません。
今日、お子さんの障害の告知を受けたばかりのような若い親御さんたちのためにも、障害児の親として21年目の少しなり先輩の自分が、この7年で学んだことを書いていくつもりです。
いつかは、どこかに自分の子供を任せられるのかもしれない
残していくことが出来るのかもしれない
巣立っていかない子供を授かったすべての親の抱く、途方に暮れる絶望の中で、そのか細い希望のようなものを、私自身も探し続けています。