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AIイラストと手描きイラストの見分け方

はじめに

最近 X でAI イラストと手描きイラストを見分けるクイズが立て続けに2つ行われました。引用リポストを見ていたら、AIと手描きの見分け方が人それぞれでおもしろかったのと、意外と見分けるのが難しい人も多いのだなと感じました。私なりの見分け方を共有することで他の方にも参考になるのではないかと思い、この記事を書いてみることにしました。

私が見分けられた枚数

前述したクイズとは、画像2枚のクイズと画像4枚のクイズでしたが、私は合計6枚の画像についてAIか手描きかを1枚ずつ考えて結論を出しました。そして6枚すべて正解でした。1枚当たり2分の1の確率で正解するとして、偶然6枚連続で正解する確率は64分の1で約1.56%だそうです。

お礼

この記事ではクイズに使われたイラストを、許可を得て使用させていただいております。快く使用許可を出してくださったユニバーサル大回転ポテポテの舞さん(https://x.com/tdrlj)、KALINさん(https://x.com/kozukiren)ありがとうございます。

AI と 手描きを見分ける2つの方法

私がAI のイラストと手描きイラストを見分けようとする時は、2つの方法でチェックしています。

1つ目は、1枚の絵の中に画力の差が存在するかどうかです。2つ目は手描きでは再現が困難な表現があるかどうかです。1つずつ順番に解説します。

1枚の絵の中に画力の差が存在するか?

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650

これはユニバーサル大回転ポテポテの舞さんのクイズで使用された AI イラストです。ものすごくDALL-E3の絵柄です。おそらく普段DALL-E3を使われる方の多くは、パッと見で 「AI っぽい」と感じたと思います。

この絵はすごく上手いです。色のトーンが統一されているし、キャラクターはデフォルメが強いにも関わらず立体的に描かれています。特にキャラクターのアウトラインはすごく綺麗で、まるでベクターで描いたような滑らかさです。

一方で髪の毛を表す細い線は歪んでいたり、細かい房を表すための線のはずなのに房として描くことができていない。服のシワもぐにゃぐにゃに歪んでいます。こんな綺麗なアウトライン(顔のパーツも)を描ける人が、同じ絵の中でこんなにぐにゃぐにゃな線を描くわけがないというのが私の考えです。

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650 を加工

また、赤い丸部分のような線。ラクガキ風だとしても人間が描いたらこれは残さないんじゃないかという気がします。キャラクターに対してあまりにもラフすぎるからです。逆に言えばキャラクターの完成度が高すぎるということかもしれません。

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650 を加工

それと、青で示した分ですがこれは一体何を描いているのでしょうか。画像右側のこの部分は、木より背が低いので植え込みの植物のようなものに見えますが、青で囲った分は木より後ろにあるにも関わらずこんなに背が高い。もし林などの遠景であれば、そうとわかるように色を変えるはずです。これって何なんだろうと思いました。「こんなうまい絵を描く人がこんなん描くか?」と疑問に感じます。

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650 を加工

オレンジ色で囲った部分も同様で、おそらく草を表している線だと思いますが、何の脈絡もなく突然ここにだけ描いていて意味が分かりません。

前髪も長さがまちまちだし、右側の目の下(下まぶた?)の線(点)も普通は左右で統一するし、襟元の下のシワも違和感があります。変なところを挙げたらキリがないですが、もし元になる AI イラストがあり、手描きで真似するとそうなります。ですので「AIである」とは言い切れないかもしれません。(通常こんなところまで AI の真似をする必要はないので、こういったクイズでもない限りはこんなことにはならないと思いますが)

手描きでは再現が困難な表現があるか?

ユニバーサル大回転ポテポテの舞さんのクイズでは、2種類の画像がアップされ「どちらが手描きでしょう」というクイズでした。もう一方がどう見ても AI だったのですが、このイラストもここまでの観察を経てAIのような気がして「両方ともAIなんじゃないか」と思い、さらに詳しく見ることにしました。

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650  を加工

ほんの一部ですが、わかりやすそうなところを拡大しました。

こういうのって手描きで描けますか?私は描けないので「ということはAI」と判断しています。ボケ具合や荒れ具合が、再現するにしても手間と時間がかかりすぎて現実的ではないという考えです。

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拡大する前から一番気になっていたのが、向かって右側の「袖の影」部分です。色が抜けたように明るくなっています。ベタ塗りのような部分に、コントラストの高い色で密度高めに線が引かれている場合、AIではこれがちょくちょく起こります。よく見るのは髪の毛の先とかですかね。

拡大するとめちゃくちゃ荒れています。この絵は全体的に色鉛筆風なのですが、肌は綺麗なグラデーションで塗られていて、でも袖の影だけこんな風に荒れています。

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650  の一部を拡大

反対側(向かって左の袖の影)も同様です。こっちは影を表す縦線もかなり荒れていて、こんな線になるブラシってあるんだろうか…という感じです。

ノイズ感にしても、通常デジタルのお絵かきソフトに搭載されているノイズ機能では、こういうノイズにはならないです。

アウトラインの一番太い線も映り込んでいますが、この線もエッジがおかしいと感じます。この太さの線がすべて同じブラシツールで描かれていると仮定した場合、他の場所と見比べると統一感がないです。ざらざら系のブラシなので、他と統一感があればこのエッジでもおかしくはないと思うのですが。

ユニバーサル大回転ポテポテの舞さんのクイズで確認した箇所


どちらかがボクのフォロワーさんに頼んで描いた絵でもう一方はAIに書いてもらった絵です あなたにはどちらが手描きだと思いますか

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650

1枚目:左

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650

これについてはすでに書いた通りです。AIです。

2枚目:右

引用元:https://x.com/tdrlj/status/1850503470396436650

おそらくですが、多くの AI ユーザーはこちら(右)のイラストが AI すぎて、左を手描きと答えた方が多かったのではないでしょうか。

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AI 画像を見慣れていない方のために説明すると、AIは線と線が交わる部分がぐちゃぐちゃになりがちです。この画像で言うと、木の葉っぱ部分、背景のちょっと濃くなってる部分、人形の影、キャラクターの脇の部分です。というわけでAIです。

KALINさんのクイズで確認した箇所

この4枚のうち、1枚だけAI絵の特徴を再現した手描き絵が混ざってます。 私が手で描いた絵はどれでしょう

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653

1枚目:ニット帽をかぶってる横顔の女の子

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653

KALINさんの4枚のイラストの中ではこれが一番迷いました。AI だろうとは思ったのですが、服の部分が加筆かもしれないと思いました。線画の青とベタ塗りの青の色味が違いが微妙だったからです。AI の絵の上に青でベタ塗りして白い線を書き入れたんじゃないかと思いましたが、加筆はされていないそうです。

今回の4枚は多分niji・journeyで生成したと思うんですが、帽子のトーンもかなり綺麗に生成されているし、恐ろしい性能だなと思いました。今回のクイズで使われた画像は細い線が多かったのでAI の特徴を探すことができましたが、X のタイムラインで見かけている限りではniji・journeyのイラストはAI の特徴を探すのがかなり難しそうだと感じます。

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653 の一部を拡大・加工

これは額の前髪部分ですが、線が混み合っている部分がエアブラシのようにグレーがかっています。ユニバーサル大回転ポテポテの舞さんの左のイラストでは色が明るく抜けていましたが、こちらは暗い方向に色が変化しています。AIはとにかくこういう風になりがちです。

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これはもみあげ部分です。前髪と同様に線が混み合っている部分がグレーがかっています。グラデーションの向きが様々なので、まあまず手ではやらないでしょう。今回は手描きでAIを再現している試みではありますが…やらないでしょう。(多分)

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帽子のシワです。トーンが若干溶けています。でもこの程度で済んでいるのはすごい……。手でやろうとしても、こんな弱いボカし方は難しいと思います。というわけでこれはAIです。

2枚目:オレンジ背景の女の子

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653

このクイズでは4枚中1枚が手描きという前提でしたが、これがその手描きのイラストです。

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653 の一部を拡大

めちゃくちゃ指先ツール。AI の絵を見続けていたので、すごく目立つように思いました。ボケ足のピクセルが綺麗すぎる。

指先ツールというのは、指で伸ばしたような効果が得られるツールです。フォトショップやクリスタなどの基本的な機能の一つです。

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653 の一部を拡大

指先ツールが随所に見られます。実家のような安心感とはこのことかという感じです。手描きです。

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AIだとこういうところに謎のグラデーションが発生しそう。

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653 の一部を拡大

こういうところとかも、AIならこんなに綺麗ではないと思います。ノイズがあるように見えますが、これはjpgのノイズかなと思います。

3枚目:両手を合わせている白黒の女の子

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653

これも個性的な絵柄で可愛いですね。

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これは手のひらのシワですが、線に囲われるようになっている部分がグレーがかっています。

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653 の一部を拡大

これは向かって右側の袖です。線もトーンも溶けてます。溶けてるのはここだけじゃないですし、手でやるにはコストが高いかと思います。AIです。

4枚目:赤背景の女の子

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653

この画像は拡大しても低解像度感というか、ぼやけたような感じです。原寸 じゃないのか、生成した時からこの状態なのかわからないですけど、AIの特徴はすごく見つけづらいと思いました。ただ 絵柄にめっちゃAI感がありますが。

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653 の一部を拡大

こういう系統の絵を描かれる方の場合、顔周りはかなり気をつけると思うので、白目の中に汚れが残っていたり、黒目がこれだけ雑(形が整えられてなさすぎ)なことはあまりないんじゃないでしょうか。同様に前髪も違和感があるなと思います。

今回は「AIを真似た手描きが混ざってます。どれでしょう」というクイズなので、これはAIだと判断する理由にはなりませんが。

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653 の一部を拡大

向かって右側のもみあげの部分ですが、下に垂れている髪の毛がどこからやってきてるのかわからない状態です。でもまあこれも判断理由にはならないか。

髪の毛1本1本の間の色がにじんでいるので、これはAIの特徴かと思います。ここだけでなく他の髪の毛でも起こっています。

引用元:https://x.com/kozukiren/status/1851215910713151653 の一部を拡大

おみ足の影ですが、線が溶けていたり グレーがかっています。AIです。

おわりに

ここで紹介した見分け方はあくまで一例であり、AIの特徴として挙げている「手描きでの再現が困難な表現」であっても、あくまで「私には困難」であるだけです。手描き作品にも同じ特徴が現れることがあるかもしれません。実際、あるプロの漫画家さんは『「自分でもこのレベルならAI絵に見えるように加工して描けるな」と思った』と仰ってました。この内容が必ずしもAIの特徴を断定するものではないことをご理解いただければ幸いです。

また、これらのクイズの前段には、某企業が「AIイラストを使用している」として指摘を受け「AIではない」と表明したものの「いや、AIやんけ」という意見がくすぶり続けていたことがあると思います。

今回は一個人が行うクイズだったこともあり、出題者は正直に正解を出してくれました。しかし通常であれば公開されたイラストが AIであるか手描きであるかを公表する必要はありませんし、もし嘘や誤りが公表されたとしても確かめる術はありません。

ですので、見分けるといっても今回のようなクイズの場合のみにされるのがいいと思います。特にAIに加筆して仕上げる人や、手描きとAIを組み合わせている人もいる中で、手描きかAIかなんてことは気にしてもしょうがないと思います。ぜひ自分の「好き」を信じてイラスト鑑賞を楽しんでください。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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手描き勢がAIをツールとして使うための情報をまとめています。良かったら遊びに来てね。


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