ズバリ!冷やし中華がおいしくない理由
「ソーメン」は心から食べたい!美味しい!と思うのに、冷やし中華はなぜそう思わないのか?
前回その理由を冷やし中華は「商業的」だからだという話をしました。
(その事についてはこちらの投稿をみて下さい。)
今回は「料理」の視点からキチンとそれを説明したいと思います。
僕の目的は
心から食べたい!と思えるような冷やし中華をつくること。
決して冷やし中華をディスりたいからではありません。
その為には冷やし中華の欠点をまずは知ること。
そしてその弱点を見つけ出し、他の料理とも比較することで、目指すべき方向性を見つける事です。
では次から本題に入ります。
冷やしラーメンは無理ゲー
先日冷やし中華を研鑽するにあたって、冷やしラーメンを食べました。
ぶっちゃけ...おいしくありませんでした。
同時に、言われてみれば当たり前だけどとても大切な事に気がつきました。
ラーメンの美味しさの要である「動物系油脂、タンパク質」についてです。
①スープ・・・鶏や豚から長時間かけて抽出されたコラーゲンたっぷりのスープは、冷えるとゼリーのようにぶりぶりに固まってしまいます。
②調味料・・・ラーメンに必要不可欠な香油も鶏油などをベースに作っているものが多く冷えると油の塊となって浮かび上がってきます。
③具材・・・長時間煮込み柔らかくなったチャーシューは、冷えるとガチガチになってしまします。
結論
ラーメンの美味しさの源になっている「動物系油脂、タンパク質」は、冷やすことができない!
冷やしラーメンと冷やし中華は違います。
そもそも「中華」(町中華)はチャーハン、肉野菜炒め、麻婆豆腐など「強火で熱く、肉を使った料理が魅力」だと言えます。
「中華」を「冷やす」という行為は圧倒的不利な状態での戦いだという事をまずは受け入れなければなりません。
ソーメンに勝てない理由
ではソーメンはどうでしょうか?
①麺つゆ...昆布と鰹の和風だしがベースになっています。これは冷やしても固まらない上、風味を残しています。
②調味料...醤油や酒など油脂を基本使用していません。
③具材...無くても成立します。薬味やトマトなど相性が良く、天ぷらで油ものだとしても、動物系の油脂が固まることは容易に避ける事が出来きます。
結論
ソーメンや冷やしうどんなど「和食」は冷やしに適している。
そして僕たち日本人は昆布と鰹節、醤油の香りがふるさとの味としてインプットされています。
だから冷やし中華はソーメンに勝てないのです。
しかし!今回の目的は勝ち負けではありません。
冷やし中華の目指すべき方向はどこか?という事が目的です。
なのでソーメンはソーメンで楽しみましょう!僕もソーメン大好きです。
そんなこんなで、ソーメンと比較する事で明らかになった事。
それは「和風になってはいけない!」という事です。
和の食材を使ってはいけないという事ではありません。
ですが、全体的な印象が和風になってしまったら、絶対にソーメンの方が良い!
その時は完全な敗北といえるでしょう...
中華の最大の武器である「動物系の旨み」は封じられ、和風にも寄れない。
絶対絶命の冷やし中華...
果たして活路は見出せるのでしょうか...?
冷製カッペリーニに感じる余裕
次に比べる事にしたのはイタリア料理のトマトの冷製カッペリーニです。
この料理は家庭的ではないものの、日本に定着した夏の麺料理です。
調べてみると、なんとこの料理もイタリアには存在せず、日本人が考え出したジャパニーズ料理だそうです。
(本場にはない料理を日本人が日本人向けに改良した外国料理をジャパニーズ料理と勝手に書きます。)
どれだけ冷たい麺が好きなんだ!
カッペリーニはいわば冷やし中華と兄弟分。冷やし中華より少し後に生まれたジャパニーズ料理です。
しかしカッペリーニには品格があります。全く焦りがない。余裕な立ち振る舞いに感じてしまうのは僕だけでしょうか?
そして冷やし中華はバタバタしている。
なぜだか危機感を感じてしまいます。
そう感じるのは僕だけじゃないはずです!
味の完成度から来るものなのか・・・?
いや!それならそこまで冷やし中華だって引け目を感じることはないだろう・・・
ほとんど同じ時期に日本に入ってきたのに、この違いはなんだろうか?
そもそも日本人はなぜ冷たい麺料理がこんな好きなのか?
それは、当たり前すぎて見落としてしまっていた事に気づかせてくれる事になりました。
浴衣姿に魅了されるのはなぜか?
話は少し外れます。
昨日、仕事帰りの山手線。浴衣の人でごった返していました。
理由は隅田川の花火大会です。
コロナが終わり4年ぶりの開催だということで、大いに盛り上がったようですね。
花火大会の女性の浴衣姿というものは、とてもステキですね。
男性は花火よりも女性の浴衣姿の方が見たい!
これは僕だけではないと思います。
浴衣姿に感じる「涼」と「静」
「涼しげで静かな事」を美しいと日本人は感じます。
京都の竹林や浮世絵などもそうですね。
暑い時はそりゃそうでしょ!と思うかもしれませんが他の国を見ると必ずしもそうとは言い切れません。
日本より暑い赤道直下のブラジルはお祭りの時サンバを踊りますね。姿こそ裸みたいなもので涼しげといえば涼しげかもしれませんが、動きが激しい上、正直暑苦しい・・・
日本のお祭りはというと浴衣で動きがしなやかな盆踊りですね。
これはどっちが良いか?ということではなくて感覚が違うということ。
だから日本人は「涼」を感じる冷たい麺が好きなのです。
ではなぜ日本人は「涼」と「静」を美しいと感じるのか?
さらに深掘ります。
日本人が「涼」と「静」を美しいと感じる理由
結論
日本は水大国だからです。
3つの理由
①雨が適度に降り、山が多い地形の日本はその雨を溜めるダムが作りやすく、コントロールしやすかった。
②海に囲まれる島国で魚の文化であった。
さらに肉食は野蛮なものとして、明治時代以降までは一般的ではなかった。
③現代も水道水が飲める国は9カ国しかないようです。高い技術の水道インフラを持つ日本は頂点とも言える。
ちなみに同じ水道水を飲むことのできる他の国をちょっと調べてみました。
オーストラリア・・・水は綺麗だが国土に砂漠が多く、水不足に悩まされている。
ドイツ、スウェーデン・・・硬水な為、料理には適切ではない。
このような歴史や地形を考えれば、日本人が「涼」や「静」を美しいと感じ、そのことから冷たい麺料理が好きということはむしろ必然であると僕は思います。
カッペリーニの余裕の正体
では話を冷たい麺料理に戻します。
冷静カッペリーニに感じる気品・・・余裕・・・
それは「涼」と「静」があるからだと思います。
オリーブオイル、ガーリック、バジルなど食材自体は外国のものを使いつつも、シンプルで涼しげな見た目や、生のトマトのフレッシュ感は日本人が好きな本質の部分を押さえていると思うのです。
決して贅沢な食材ではありません。
しかし美しい・・・なんとも日本的な料理といえるのではないでしょうか。
それに比べて・・・冷やし中華よ・・・
と絶望しつつも、参考になる箇所はありました。
参考になった2つのポイント
①オリーブオイル(植物油脂)は使っても清涼感は出せること。
②トマト(具材)がソースと一体になり、麺にタレを「つける」というよりは、麺にタレが「絡む」という感覚。
この2点はソーメンにはありませんでした。
これは非常に良い発見だったと思います。
一歩前進!
そのことを踏まえ、次回冷やし中華の在り方を考えていきたいと思います。