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【名著要約】ビジョナリーカンパニー

今日は私が社会人になって読み、特に感銘を受けたこの本についての記事を作成したいと思います。この本は「永続」している会社がどんな特徴を持っているのかを分析しており、1994年に出版され、五年連続全米でベストセラーとなり、当時100万人以上のアメリカのビジネスマンを夢中にさせた本です。 マッキンゼー出身のジェームズ・C・コリンズと、GE出身のスタンフォード大学教授ジェリー・I・ポラスによって書かれたまさに名著中の名著です。この本はビジネスに携わる全ての人が読むべき本であり、必ずや自身に新しい価値観を芽生えさせてくれる本です。まだ読んでいない方はぜひこの要約を元にじっくり読んでいただきたく思います。

『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』の要約

【ビジョナリー・カンパニーの定義】
・業界で卓越した企業である
・見識のある経営者や企業幹部の間で、広く尊敬されている
・私たちが暮らす社会に、消えることのない足跡を残している
・最高経営責任者(CEO)が世代交代している
・当初の主力商品のライフサイクルを超えて繁栄している
・1950年以前に設立されている

①ビジョナリーカンパニーは必ずしも最初から素晴らしいビジネスアイデアを持っているわけではない。


中長期的には成功する企業もスタート地点や短期で見ると失敗もしています。例えばヒューレットパッカードは PC の会社として有名ですが、最初から PC を作っていたわけではありません。創業者のヒューレットとパッカードは会社立ち上げ当初、売上を上げるために様々なものに挑戦しました。ヒューレットは会社を始めた時に何の計画もなく臨機応変になんでもやっており、ボウリングの表示機や望遠鏡、便座に水を流す装置などできそうだと思ったものは何でもやったらしく、初めからパソコン作るアイデアはありませんでした。試行錯誤の末、アイデアは偶然見つかるものであるということです。

②ビジョナリーカンパニーは必ずしもカリスマ的リーダーが率いているわけではなく、様々なリーダーシップの形がある。

ビジョナリーカンパニーのリーダーは必ずしもカリスマ性があるとは限りません。コロンビアピクチャーズという会社は映画事業などを手掛けていました。この会社、実は昔あのディズニーの強豪でした。コロンビアピクチャーズにはハリーコーンというカリスマ的経営者がいて、常に自分の意見をトップダウンでリーダーシップを発揮し、いい映画を作ることで業績を上げてきました。ただ彼の興味関心はハリウッドで権力を握ること。そのためならどんな手でも使うという人でした。一方ディズニーは対照的に優秀なアニメーターに対しては自分以上の報酬を払っていました。又、1960年代にはディズニー大学を作り理念の浸透などを測りました。どちらの会社が成功したかは一目瞭然です。やはりカンパニーは必ずしもカリスマ性のあるリーダーが率いているわけではないということです。

③ビジョナリーカンパニーは利益の追求を第一にしているわけではなく理念や信念などを大切にしている。

ビジョナリーカンパニーは利益以上に理念や目的を大切にしている傾向があります。ソニーが良い例になります。ソニーは設立当初ヒューレットパッカードと同じように様々な事業に挑戦しています。炊飯器や電気座布団など収益を見そうな様々なプロダクト作りに専念しています。その一方利益が出なければ即座に倒産の恐れもある中で、創業者の井深さんは会社の理念を作り出しており、倒産の恐れがあるさなかにおいても会社の理念目的を決めることに時間を惜しまない、その姿勢がまさしくビジョナリーカンパニーと言えるでしょう。そしてこの時に打ち立てた会社の目的で方針は後のソニースピリットの原型となりソニーの文化を脈々と受け継いでいくことになります。

④ビジョナリーカンパニーの基本理念は時代に合わせて変わるわけではなく、信仰のように変わることのない基本理念を持っている。

ビジョナリーカンパニーの基本理念は信仰のようなもので100年を超えても変わらないものなのです。事業や経営戦略などは時代に合わせて変わりますが、根本となる企業の基本理念は変わりません。またビジョナリーカンパニーは理念の浸透にも力を入れており、例えばウォルトディズニーは基本理念を浸透させるためにディズニー大学を作り、すべての従業員にセミナーの受講を義務付けています。ヒューレットパッカードでは理念を知らせるだけではなく、理念は社員の評価と昇進の際の基準としており、そこにあわない社員はそれだけいい結果を出しても上級幹部にはなれない仕組みとなっています。理念を大事にするのはもちろんのこと理念を維持するための仕組みにも意識を向けることが大切だということです。

⑤ビジョナリーカンパニーは常に挑戦的な目標を掲げ邁進している。

ビジョナリーカンパニーは常にチャレンジングな目標を立てて挑戦しています。チャレンジングな目標はBIG HAIRY AUDACIOUS GOALSの頭文字を取ってBHAG。と呼ばれていますアポロ11号の例を考えてみましょう。1960年代にケネディ大統領は宇宙開発計画を強化しようではなく、我が国は60年代が終わるまでに月に人間を着陸させ安全に地球に帰還させるという目標を達成すると明言したんです。チャレンジングで明確な目標は人々に大きな推進力を与えます。今この場で会社や事業チーム、人生の目標は何ですかと聞かれてあなたは明確に答えることができますか?答えられないのであれば今一度目標を見直し目標を書き出してみることが大事です。

⑥ビジョナリーカンパニーは誰にとっても素晴らしい職場であるわけではなく、一部の人にとって最高の職場でありそうでない人にとっては悪い職場である。

ビジョナリーカンパニーは中長期的に成果を上げているイメージから誰にとっても素晴らしく働きやすいと勘違いされていますが実は真逆なんです。独自の基本理念や信念を持ってそれを体験することが要求されるのでこれが皆にとって素晴らしい職場ということではないんです。例えばビジョナリーカンパニーの一つであるデパートのノードストロームは他のデパートより2倍も給料が高いが新入社員の50%が1年以内に辞めていきます。ノードストロームでは売上目標を極めて高く設定することが求められ1時間あたりの売り上げが計算され月末に張り出される文化があります。店長会議では各店舗の売上目標を発表し目標が低かった社員はブーイングを浴び高い目標を達成した店長は喝采を受ける文化があります。これを聞くと厳しすぎる売上に固執しすぎだという感想を持つと思います。働く人にとっては息が詰まる思いをする人も出てくるはずですが、しかしノードストロームはビジョナリーカンパニーで長期的に勤める社員の満足度もとても高いといわれており、基本理念や文化が尖っている分、合うと合わないと明確に区別するのがヴィジョナリーカンパニーということです。

⑦ビジョナリーカンパニーは緻密で複雑な計画を立て着実に実行しているわけではなく、偶然や実験、試行錯誤を通じて思いもよらない方向へ舵を切ることもある。

ビジョナリーカンパニーは緻密な計画を立ててそれを着実に実行していると思われがちですが、実際は計画を立てるものの実行段階で実験試行錯誤などを繰り返す傾向にあることが分かっています。偶然を生かすことで事業の飛躍的な成長を実現しています。では偶然を生かすことが企業経営や事業戦略においてなぜ重要なのでしょうか。それは変化に適応することができるからです。 ダーウィンの進化論では生き残る者は強いものではなく変化に適応したものと論じられています。企業経営や事業戦略においても特にテクノロジーの進化により時代の流れが速い現代は緻密な計画を守るよりも時代の変化に適応しながら通信することが大事ということです。偶然起きたことを計画外で無駄だと切り捨てるか意味のあることだと捉え次の事業に活かすのか。もちろん偶然の質にもよりますが私たちの偶然に対する姿勢が問われています。特に1日のスケジュールが計画通りのことでポツポツになっている場合や計画外のことを切り捨てるような意思決定を積み重ねている場合は要注意です。偶発性や実験試行錯誤の時間を取ることは経営や事業人生においても非常に重要です Google は20%ルールを課していて1日の20%は業務以外のことに時間を割り振ることを決めています。このように仕組みとして導入している企業もあるということです。

⑧ビジョナリーカンパニーは社外からCEOを迎えるのではなく、基本理念を体現している生え抜き社員を経営者としている。

ヴィジョナリーカンパニーも業績が悪化した際に、外部から優秀な仕様を招き入れると勘違いされがちですが、逆に生え抜きの経営陣の体制を敷くことが多いという事実があります。なぜでしょうか。理由は基本理念にあります。ビジョナリーカンパニーはこれまで説明したとおり、基本理念や信念を大切にしています。そして基本理念や信念は外部から来た人がすぐ体現できるようなものでありません。長年その企業に勤め基本理念、信念と共に仕事をしてきた人でないと体現できません。それから優秀なCEOが抜擢されれば短期間では戦略が良くなり売上も上がるかもしれませんが、中長期的な求心力になることはあまりないとも言われています。リーダー育成で有名なGEでは幹部候補の育成に取り分け力を入れていて、有名な経営者であるジャックウェルチも生み出しています。人材育成においても中長期的な種まきをしていくことが重要です。

⑨ビジョナリーカンパニーは競争に勝つことを大事にしているわけではなく、まず自社がどうありたいかについて考えている。

ビジョナリーカンパニーは中長期的に成果を上げ続けているからこそ競争に勝つことが大事だと勘違いされることがあります。結果的には競争に勝っていることは事実なんですが、競争を第一の目的にはしておりません。ビジョナリーカンパニーのタイトルは他社ではなく常に自社だからです。まず基本理念などから自分たちのありたい姿を考え、その上で戦略マイルストーンを設定します。そして今日より上手くやるには明日どうすればいいのかというレベルで自分との戦いを続けています。もちろん戦略はマイルストーンを考える際に他者を参考にすることはありますが、他者を見てから自社のありたい姿を考えることはありません。自分自身がどうありたいかそれは他の人や会社などは関係なく自分たち自身にある内発的な思いになります。この想いこそが基本理念信念と繋がっていてそれを大切にするからこそ結果的に他社との差別化になり中長期的な成果へと繋がるということです。

まとめ

いかがだったでしょうか。改めて読み返すと全く色褪せず、時代を超えて受け継いでいくべき名著だと感じます。特に昨年発生したコロナによって世界中の企業が大きなダメージを受けました。そしてそれはまだ進行中です。こういった不測の事態は防ぎようがありませんが、おそらくここに出てくるビジョナリーカンパニーはこういった事態が起きたとしてもそれを乗り越える力を持っているでしょう。なぜならばビジョナリーカンパニーだからである。


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