海外留学には英語力はいくらあっても足りない
英国大学院の授業が始まり2週間が経ったが、授業に食らいつくのに必死であり、海外の友達を作るのにも苦労している。
「留学中自分の英語力のなさに落ち込む」という話はその人のスコアにかかわらず何度も見聞きしたことがあったので、自分にも当然起きるとは思っていたけど、実際起きるとなかなか苦しいものである。また、授業や友達作りの苦労も英語力不足と関連する点も多いので、これまで感じた辛さについて備忘も兼ねて書いてみた。
自分のスペック
・社会人経験者、学習するコースは仕事と直結する
・隠れ帰国子女(3歳で帰国、のち日本語環境)
・英会話はずっと続けており、短期留学を通算3ヶ月した
・職場で英語を使うが、読み書き中心
・ほとんどのことは英語で説明できるが、言葉につまったり、精確さに欠けたりする
・ネイティブに囲まれると無力
・IELTS O.A 8.0 (R 8.5, L 8.5, S 7.5, W 7.0)
これまでの英語力の歩みは下記の記事を参照のこと。
以上を踏まえ、大学院留学2週目を終えた時点での発見と苦労について書いてみます。
留学中の苦労①ー英語力について
外国人を含め、英語ネイティブ・バイリンガルが多い
自分のコースは外国人が多いとは聞いていたが、外国人の中にはアメリカ人・アイルランド人・オーストラリア人などの正真正銘英語ネイティブもいる。
また、インド・シンガポール・マレーシアなどの多言語国家でも、英語を第一言語にしていたり、小さいときから英語で教育を受けている人もいる。恥ずかしながら、(海外留学するような)インド人が小学校からずっと英語で教育を受けていることや、地元が同じインド人同士でも英語で話をする(たまに地元の言語が混ざる)ことを知らなかったので、インド人も含めると英語ネイティブ・バイリンガルが思った以上に多い(全体の4割程度?)ことに衝撃を受けた。
その他の国の出身者でも、インターナショナルスクールに通っていた人や、英語圏に移住していた人もいるので、そこも含めると英語を自由自在に操れる人がかなり多い。
英語を第二言語とする人でも、ネイティブ級に英語ができる
英語を第二言語とする人の英語のレベルも、ネイティブに相当近い(CEFRでいうC2?)ことに衝撃を受けた。
オランダ人、スイス人、ドイツ人、北欧出身者あたりの英語がネイティブ級であることは知られているが、それ以外のヨーロッパ・南米出身者も、(少なくとも私から見れば)ネイティブ級の英語を話すように思われる。
その結果、日常会話・授業中の発言ともに、間が空くことがなく母国語とほぼ同じスピードでやり取りができる人が多い。
もちろんヨーロッパ・南米出身者でも会話に多少のラグが生じる人はいるが、そうでない人も多いし、自信をもって話しているように見える人が多い。
プリセッショナル(英語準備コース)受講者とアジア人は、会話に少しラグができることが多い
プリセッショナルコースは、入学に必要な英語要件をわずかに下回った人や、要件は満たすがアカデミック英語に自信のない人に向けた、大学院留学のためのアカデミック英語を身につけるためのコースである。私もこれを受講し、友達もできたし英語論文の書き方も分かったので大変実りのあるコースだった。
自分は英語要件(IELTS O.A. 7.5)を満たしていたので多くのプリセッショナル受講者より点では上回っているはずだけど、受けてみると周りの英語のレベル(特にスピーキング)は自分とあまり変わらないと思った。プリセッショナル中は、雑談から真面目な話まで色んな会話を楽しめたし、ディスカッションの授業でも、各自きちんと準備をしたうえで、活発に意見を交わすことができ自信がついた。
ただ、いざ本コースが始まると、周りのレベルがそれどころでないくらい高い。プリセッショナル出身者がどんな話も大体できるくらいの英語力だとすると、それ以外の人は、どんな話もネイティブ級のスピードと密度でできているように見える。そのため、プリセッショナル出身者の英語力(IELTS 7.0前後)が絶対的に低いわけではないものの、周りと比べると相対的には低いし、スピードもゆっくりであるように感じた。
また、プリセッショナルを受けなかった人でも、英語非ネイティブのアジア人(日本、中国、韓国、台湾、タイあたり)の英語力はプリセッショナルを受けた人の上位層くらいという印象であり、自由自在に英語を操れる人は少ないように思える。
試験で測れる英語力の限界
IELTSやTOEFLなどの留学向けの英語試験はよくできていると思うが、やはり限界がある。資格試験の点が比較的良くても留学中は苦労するし、逆に点がそこまで良くなくても、授業を(少なくとも表面的には)理解して発言できている人もいる。
例えばテストのリスニングで満点をとるのは難しいけど、ネイティブが綺麗な発音で録音しているので、音としては聞き取りやすい。一方で、学校にいけばネイティブか否かにかかわらずモゴモゴ話す人や、教科書的な発音とは外れる人、議論が進むにつれ早口かつ尻すぼみになり語尾が聞きにくい人もいるけど、そういう人はリスニングのテストには出てこない。
また、スピーキングもIELTSの場合、一問一答形式だし、学術的な内容もないので、自分が話しやすいことを選んで答えることもできるが、実際の授業では予習をした知識を元に答えることが要求されるし、何か答えれば追及されるので適当に答えることができない。
留学中の苦労②ー授業について
とにかく予習量が多い
1回の授業で大体100ページくらいの分量を読むことになる(コースによっても違うけど)。これはネイティブでも辛いらしいが、ノンネイティブにはさらに辛い。知らない単語もめちゃくちゃ多い。また、特に論文は、DeepL翻訳にかけても結局一読して意味が分からないことが多く、現代文の試験で見る文章の英語版みたいなイメージ。そりゃ英語圏の人も高等教育の過程でこういう文章を読むのは当然かとは思うけど、これを大学院入学まで常に英語で読み続けてきた人たちに果たして追いつける日は来るのだろうか……と思う。
一方、教科書は一読して分かりやすいすっきりした文で書かれていることが多いと思う。
発言が活発
海外の人は授業でも活発に発言するとは聞いていたけど、実際に体験すると圧倒される。特にインド系、ヨーロッパ系、南米系の人は発言が多く、先ほど挙げた非英語圏の東アジア・東南アジア人は発言をためらう人が多い。
おそらく発言をする人たちは、発言を特別なことだと思っていなく、クイズ番組的な感覚でいるように見える。答えを知っているから、議論に貢献したいから、気になることを確かめたいから、という純粋な気持ちで話しているように思う。
せっかく留学に来たからには私も発言しなきゃとは思うものの、恥ずかしながら一度もできずにいる。もちろん発言の文化があまりない環境から来たことも大きいし、話している途中で英語がうまく出てこなくなったらどうしようという不安もある。また、そもそも前後の質問や議論を正確に理解できていないときにはためらいが強くなる。英語だとやはり理解力やリスニング力が落ちるので、直前の議論と無関係の発言をしたり、前に誰かが言ったことと重複する発言をしてしまうリスクがある。また、文献で読んだことをうまく思い出せなかったり、そもそも答えが思いつかないときもある。
なんだかんだ学生の発言がしっかりしている
「海外の人は発言が多いけど特に考えず場当たり的な発言をすることも多いから、優れているとは限らない」という話を聞くことはある。実際確かにそういう人もいるが、割合としては少ないと思う。
皆真面目で勤勉なので、予習やこれまでの勉強に基づいた知識を踏まえて発言し、正しい答えを出せている人が多い。とはいえ、少しうろ覚えで答える人も多いのでしっかり予習すれば追いつけるのかもしれないが、やはり私が普通に文献を読んだだけだと議論できるほど理解するに至らないので、質問を意識しながらきちんと準備をする必要がある。
発言しても追及される
授業中発言する文化圏にない人間にとっては、発言をしたらそれだけで褒めてもらいたいなーなんて甘えたことを思ってしまう。実際、語学の先生は、どんな発言でも拾ってくれ、褒めることで発言のハードルを下げてくれる人が多いように感じる。
一方、大学院の授業では先生にもよるが、発言してもどういう意味か、こうとも言えるのではないか、と批判的に返してくる人も多く、発言して褒められて終わり、とはいかないことも多い。もちろん議論を通じてより本質的な理解を深めてほしいという狙いはあるのだろうが、発言できずにいる人間としては非常にハードルが上がってしまう。
発言をしないで帰宅することも可能
コースによってはグループワークやディスカッションが必須のところもあるが、私の授業は先生から当てられたり周りの人とディスカッションさせられたりすることはなく、発言で成績がつくこともないため、一言も発さず授業を終えることもできる(現にそうなってしまっている)。それでも発言を積極的にする人も多いのですごいな〜と圧倒されている。
発言や議論を苦手としているからこそやらねば、という思いはあるけど、やはりうまく答えられない不安や、人前で話す勇気のなさ、また実際インドやヨーロッパの人でも発言しない人もいる事実に甘えてしまい、まだ話せないでいる。
留学中の苦労③ー友達付き合いについて
友達を作る機会が少ない
授業が始まる前の週こそウェルカムイベントが色々あったが、そもそも人数が多いコースなので話せなかった人も多い。
また、授業が始まってからはイベントが激減し、必修の授業もないので授業が被らないため会わなくなる人もいる。そもそも皆予習に忙しいので、授業前後に少し話してもその後図書館に直行することもある。また、大教室で席を確保した後、両隣の人が反対側の隣の人と話し始めると目も合わないので会話に加わることもできず、ぽつんと座るしかなく悲しい(これはお互い様なのであるが…)
なんだかんだ同人種で固まりやすい
白人は白人と、黒人は黒人と、アジア人はアジア人と、ムスリムはムスリムと固まっていることが多いように見える。一方、インドなどの南アジア系も固まることがあるが、比較的どの人種とも話しているように見える。
インターナショナルな大学に来ているくらいなので差別的な人はいないと思うし色んな人種で話すこともあるけど、やはり言語や文化の壁があると、たとえ英語で話すとしても、近い国の人と話す方がお互い楽ではあるように思う。
ただ、他人種と仲良くなることは可能なので、気にせず話してみるのが吉だとは感じる。
英語や文化の壁でチキってしまう
上述のとおりネイティブ級に英語ができる人も多く、その人たちはコミュニケーションもスムーズなので、仲良くなるスピードも速いように感じる。一方、自分が会話に入っていっても、とくに元気のないときはうまく会話ができず、さらにしょんぼりしてしまうことがある。
とはいえ、日常会話は気持ちに左右されることが大きいと感じる。プリセッショナルコースを通じてすでに仲良くなった人が何人かいる場だと新しい人とのコミュニケーションもとりやすいとか、何度か会ったりチャットでやりとりした人だと話しやすいとか。一度話してそこまで盛り上がらなかった人でも、何回か別の場面で会うと少し近づけることもあるので、(難しいけど)気負わず平常心で話せるようにしたい。
現状の打開策
このように大学院留学大変だよ~~~と思って涙が出る日もあったけど、いずれは自分も授業についていって議論に貢献できるようになったり、世界中から来た学生と友達になったりしたいと思っているので、めげずに勉強も交流も頑張りたいと思っている。ざっくりと以下の点に努めているが、これがどこまで役に立ったかも今後検証したいと思う。
興味のあるイベントにはすべて出る
特別講義、懇親会、就活イベントなど、普段の授業以外のイベントでも興味のあるものは出るようにしている。交流の面では、特に特別講義は普段の授業同様、周りの人と簡単に話して終わることも多いけど、それでも会う回数を重ねると話しやすくなると思うし、また授業に参加する回数を増やすことで、少しずつ授業慣れしたいと思っている。
懇親会でも全く接点のない人と仲良くなるのは難しい(しあまり興味もない)けど、プリセッショナル時代の友達の友達とか、同じコースの人に会うと仲良くなるきっかけができる。
なお、イベントは学校のメールや学校サイトの至るところに掲載されており分かりにくいので、時間があるときにしらみつぶしに探し、興味のあるものは参加するようにしている。
Society(日本でいうサークル)に参加する
学術分野・就活関係・スポーツ・文科系・地域や国別のSocietyが色々あるので、これのいくつかに参加している。継続的に出られているSocietyは一つだけだけど、これを通じて同じコースの外国人とも接点ができたのでよかった。また、おそらくどの大学でもJapan Societyがあり、日本に興味のある外国人がいるので、そういう人とは会話がしやすい。
英語学習用のコースを履修する
本コースが始まってからも、プリセッショナルコースのようなアカデミック英語向上のためのプログラムを履修している。プリセッショナルと比べるとコマ数が少なく成長の幅は狭いようにも思うけど、自分の場合そもそも本コースの授業数が少ないので、少しでも英語に触れられればと思い、履修をしている。
予習した事項をもとに、A41枚程度のメモ(手控え)を作成する
とくにこれまで勉強したことのない分野については、専門用語が出てきてもその名前や役割を忘れてしまうこともざらだったので、メモを作成することにした。まだ予習が不十分なので、メモがあっても質問に回答できるレベルには達していないが、その用語が授業中出てきたときにメモを見返して意味を把握できるようになったので、理解に遅れが生じにくくなった。
授業を録音し、書き起こしを見る
文字の書き起こしができる録音アプリを使い、授業をすべて録音している。授業中書き起こしを見ることはしないが、帰宅後復習をする際は、音声を聞いて書き起こしを見ながら勉強している。やはり一回授業を聞くだけではメモを取り切れない部分や理解できない部分もあるが、何度か音声や文字起こしを見ることで、少しずつ頭に知識を定着させている。
なお、書き起こしの精度は概ね良いと思うが、もごもご話す部分・早口になる部分は正確に書き起こせていない場合が多いので、結局何度聞き返しても文字を見ても分からないことが多い。ただ、重要な点は先生が強調して話すことが多いので、そこは大体正確に書き起こせているし、聞き漏らしも少ないと感じる。
予習した事項・授業で学んだ事項を口頭でつぶやく
本当は授業中の議論に参加できるのがベストだが、なかなか勇気が持てず、かつうまい回答が思いつかない場面も多いので、まずは家にいるときに、少しずつ発言の練習をしている。
たとえば、予習した文献を口頭で要約する、説明が求められそうなところは具体例も含めて説明してみる、授業の音源を再生し、質問が出たところで停止して回答案を言ってみるなど。最初は、授業中人前で話すプレッシャーが全くない場面でも、自分はここまで回答ができないのか…と英語力・知識力不足に凹んでいたけど、練習を重ねるにつれ少しずつ口も回るようになったと思う。ただ、実際の授業での質問を完全に予見することはできないので、授業中の質問に(少なくとも頭の中で)答えられるかといわれると、残念ながらまだ厳しいのが現状である。
(今後やりたいこと)オフィスアワーに参加する
どの先生も15分程度のオフィスアワーを設けており、その中で質問をすることができる。授業中人前で発言をする勇気はなくても、オフィスアワーなら1対1で先生とやりとりできるし、先生も親身に答えてくれるのではないかと思うので、これから活用したい。ただ、行くからには事前に復習をしたうえで、適切な質問をしたほうがいいと思うので、その準備はしたいと思っている。オフィスアワーをスケジュールに入れることで、強制的に復習をし、英語で議論をする場にしたいと思っている。
また、履修している授業の一つに、自分に全く学習歴がないのに、他のほぼ全ての学生に学習歴があってついていくのに大変な授業があるので、オフィスアワーで質問をするついでに「そもそもついていくのが大変なんですけど…」という悩みもこぼし、あわよくば配慮してもらえないかなーなんてことも考えている。
こんな感じで留学にも大分試行錯誤しているが、学業も英語力向上も友達作りも旅行も全部やりきって、1年を堪能したいと思っている。