夜のお出かけ防止作戦
1年ほど前から、父が夜中に外出するようになった。ほとんどの場合、近所の24時間営業のスーパーにタバコを買いに行き、15分ほどで戻ってきていた。
しかし、たまに家の前に立ったまま、デイサービスや透析病院の迎えの車を待っていることがあった。朝と夜がよくわからなくなっているようだった。
最初に聞いた時は、なぜ分からないのか不思議だった。外に出てみて暗ければ、夜だって分かりそうなもんじゃない? いつも出かける前に、朝ごはんを食べるのだから、まだ食べてないなあ、とか思わないのかな?
父の不思議行動について調べてみると、「見当識障害」という認知症の症状だということがわかった。「時間→場所→人」の順に分からなくなるらしい。
たしかに父は、曜日や時間を覚えていなかったり、勘違いしていることが多かったが、こんなことが起こるのかと驚いた。
そこで実家の玄関のドアが開くと、キッチンで音が鳴るようにした。また私の家のアレクサにも通知が届くようにした。
私は通知が届いたら、父が家に戻ってくるのを実家の玄関に設置している見守りカメラで確認した。見当識障害の次の段階、「場所」が急に分からなくなるのでは?と思ったからだ。
父が夜中に出かけて戻って来ず、家の前で迎えの車を待っていたら、母が声を掛けて家の中に連れ戻した。
父の夜のお出かけの頻度は、そこまで多くはなかったが、母も私も夜中に起こされるのはしんどい。できれば、父が自分で気付いてほしい。
そこで、電子日めくりカレンダーを買ってみた。大きな曜日と24時間表示の大きな時計だ。
しかし父には効果がなかった。よく考えたら、暗くても夜だと気付かないのだから、カレンダーを見て気付け、という方が無理な話。電子カレンダーは父の部屋の置物になった。
父の部屋にアレクサを置いて、朝、出発の時間を知らせてみたりもしたがダメだった。父は耳が遠いので、なんか音がしてるなあ、くらいにしか思ってなかったのかもしれない。
夜のお出かけ防止作戦は、ことごとく失敗してきたが、ついに私は有効な方法を見つけた。玄関ドアの内側に、予定を書いたカードを貼るという方法だ。
「本日の予定終了」「デイサービス9時半」「今日はお休み」など、父の次の予定を貼ってみた。父は夜に出かけようとして、玄関の「本日の予定終了」のカードを見て、部屋に戻るようになった。
カードの貼り替えは母がやるのだが、夜中に起こされるよりはまし、と几帳面に貼り替えている。結局、単純な方法が父には効果があった。
今年の冬は、この「カードで予定をお知らせ」作戦で、なんとか乗り切りたい。