「たま」に落ちた(ハマった)瞬間について
数多い私の推しの中には、「最初ピンとこなかったけど、だんだんいいかもと思い始め、気づけばどっぷり」「つかず離れずで聴いたり聴かなかったり、でもやっぱり大事なバンド」みたいなハマり方をしたアーティストも多いのですが、はっきりと明らかに、この瞬間!ハマったと今でも鮮明に覚えているアーティストもいます。
小学3年から4年生になる頃の春、ベストテンだかトップテンだか忘れたのですが、チェッカーズを初めて見た時、生まれて初めて得体のしれないときめきなのか何なのか、「この人たちはこれからの私を変える!」「この人たちが気になって仕方ない!」という思いに襲われたのが、私にとって最古の「推しに落ちた瞬間」でした。
以来、数年後のバンドブームによって他にもいろいろ推しバンドが出てくるまで(すみません)チェッカーズ熱は続いたのですが。
★★★
次に、本当にはっきりと「落ちた」瞬間を体験したのは、高校1年の9月でした。
それは大型の台風が直撃した夜。
その日私は、当時の推し(あえてグループ名を隠します)が「夜のヒットスタジオ」に出演するということで、朝からワクワクして、ビデオもセットして番組の最初から録画していたのです。
やがてその推しグループが演奏を始めました。
あれ?
若干の違和感をイントロから感じ……
まさか!?
この人たち、口パク…………???
素人の女子高校生が見ても、いわゆる「エア」であることがわかってしまったのです。
愕然………………愕然………………幻滅………………
今でこそ、特にギターの方が「歌番組ではエアだった」ことをネタにされているほど、エアであることが浸透(?)している人たちだったのですが(プロとしてそういうのってどうなんだと今でも個人的には思います。ただ大人の諸事情があったのだとも理解しています)、当時、ちゃんと演奏・歌唱していると思い込んでいた私は打ちのめされたのでした。
茫然自失していた、次に出てきたのが、たまでした。
1990年当時の日本人なら誰でも知っていたたまです。
私も呆然としつつも「あーたまか……。ま、せっかく見てるんだし、ついでに見るか」くらいのかるーい気持ちで、ぼんやりブラウン管に映る4人の不思議な風体のお兄さんたちの演奏を見ることにしました。
曲は「オゾンのダンス」。
当時「なるほど!ザ・ワールド」という人気クイズ番組のエンディングテーマになってた曲です。
なんでしょう、この気持ち。
たった2分ちょっとの間に、電撃的に、私の気持ちはさっきまでの推しグループから、完全にこの4人組へとジャンプしてしまったのでした。
口パクなんて絶対に入る余地のない、超生演奏。
だって、風呂桶ですよ? 風呂桶とか鍋の裏とかを器用に叩きながら、「わははは!」とか「らったったった!」とか絶妙な合いの手を入れる、ランニングに坊主頭のお兄さん(石川浩司さん)。
ひょろりとしたマッシュルームヘアのギターのお兄さん(柳原幼一郎さん)は実に楽しそうに歌う。 ときに胡散臭い笑みを浮かべつつ、「台風~~、暴風雨~~」とかアドリブも決めつつ(しつこいようだが口パクじゃ絶対に出来ないアドリブ。実際に台風が直撃してたんだから)。
すっとんきょうな声の持ち主であるという情報だけは知っていた、おかっぱヘアにエフォートレスなファッションの(ま、今でいうところのね)お兄さん(知久寿焼さん)はマンドリンで、リードヴォーカルの邪魔をせずににこやかにハモる。
……………なんかものすごいものを見た。
なんか言葉にできない衝撃。
この人たちって何?
翌日、私は高校が終わるとレンタルCD店にすっ飛んで行って、とにかくとりあえず、ファーストアルバム「さんだる」を電撃的にレンタルしたのでした。
もちろんのちにちゃんと買い直し、聴いて聴いて聴き倒すことになるのです。
ダビングしたカセットテープが重ーくなって動作が不安定になるくらい。
※ちなみに、上記の放送の際には滝本晃司さんはたった一度しか映らなかったので(当時のカメラの人は分かってなかったなあ)、印象に残らなかったものの、のちに一番私がずっぱまるメンバーは滝本さんなのでした。 そのお話はまた後日。
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