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SAJ2020「データで紐解く音楽消費行動の未来 〜音楽業界のゲームチェンジャーに学ぶスポーツ業界の次なる10年〜」

こんにちは。前回はSAJ2020「ラグビーW杯で増えた“にわかファン”はどうすれば定着するのか」のセッションについてレポートしました。今回は「データで紐解く音楽消費行動の未来 〜音楽業界のゲームチェンジャーに学ぶスポーツ業界の次なる10年〜」のセッションについてレポートします。

 データで紐解く音楽消費行動の未来 〜音楽業界のゲームチェンジャーに学ぶスポーツ業界の次なる10年〜

このセッションは「ヒットの崩壊」の著者である音楽ジャーナリストの柴 那典さんがモデレーターで、株式会社阪神コンテンツリンク ビルボード事業部 部長 礒崎誠二さん、一般社団法人日本スポーツアナリスト協会 代表理事 渡辺 啓太さんがスピーカーとして登壇されていました。

ヒットの崩壊は、ヒット曲が今後生まれない、という意味での”崩壊”ではなく、今までのヒット曲の方程式は現状にフィットせず、新しいヒットの基準が必要である、という意味で”崩壊”という言葉を使っているそうです。今回のSAJ2020のセッションを聞いて興味を持ったので、ぜひ勉強してみます。

CDの販売枚数は古いものさし。新しいヒットの基準はストリーミング

このセッションで一番印象に残ったのは、ビルボードの「CHART insight」というサービス。2008年まではCDの売上枚数とラジオの放送回数の2つの指標でランキングを構成していたそうでなのですが、テクノロジーが発達し、動画サービスやストリーミングサービスが普及した結果、ヒットランキングの顔ぶれと、世の中で実際に流行っている楽曲に乖離が生じていたそう。ビルボードでは世の中のトレンドや消費者行動に合わせて、CDの販売枚数だけでなく、DL数や動画再生回数といった様々な項目から複合的にランキングを導いているそうです。

ビルボード「CHART insight」の指標にはストリーミング数や動画再生回数も含まれる

2008年のランキング
①CDセールス
②ラジオ放送回数

2018年のランキング

①CDセールス
②ラジオと放送回数
③ダウンロード数
④PCによるCD読み取り数
⑤Tweet数
⑥ストリーミング数
⑦動画再生数
⑧カラオケで歌われた回数

10~15年くらい前までは「テレビで放映されるランキング=世間の流行」だったので、私も学生の頃はトレンドをキャッチアップしようと必死にランキングをチェックしていたのを記憶しています。最近は個人の趣味嗜好が多様化し、1強トレンドは無くなり、最近のランキングの算出方法には興味を持つことはなかったのですが、上述のように複合的に算出されているんですね。

消費者の趣味嗜好・消費行動が多様化する時代、アーティスト・楽曲のヒットの法則も多様化

新しいヒットの法則の話で面白かったのは、アーティストによってストリーミング数や動画再生数・動画再生数の持続期間、DL数に違いがあること。

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例えば、
・一人n枚CD購入プロモーションを打っているアーティスト
CD販売時に動画再生数やCD販売数は伸びるが、持続的に視聴されない

・MVが強いアーティスト
YouTubeでの動画がシェアされ、リリース時期以外も動画再生数が高く、動画のヒット期間が平均して長い

・動画参加型(踊ってみた系)
踊ってみた系の楽曲は消費者が振り付けを学習し、SNSでアップロード、のサイクルが一定期間続くので半年~1年ほど一定の再生回数を稼ぐことができる

・ストリーミングが強いアーティスト
紅白出場→ツアー実施→アルバム販売、と連続して話題になる山があったので、ストリーミング数がピークに達する
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このようにYoutubeやストリーミングサービスでヒットするゲームチェンジャーが登場したことによって、短期集中型ではなく、息の長い一曲が長期間収益を上げられるような構造に変化したそう。

平成初期のヒット曲を知っているストリーミング世代の登場

これは私のプライベートで思ったことなんですが、最近の10~20代って「え、そんな曲知ってるの?」「その曲が発売されたときって、君は物心ついてた?」と思うような昭和や平成初期の曲を知っている方が多いなぁと。最近20代の方々と接する機会が多く、音楽をかけるタイミングがあったりすると、私が小学生のときに流行っていた曲(なので彼らは生まれていないはず)を掛けたりするんですよね。これは本当に驚きました。最近のアーティストがトリビュート・アルバムでカバーしていたりすることも一因とは思うのですが、ストリーミングで気軽に聞けるようになったのも大きな要因だと思います。たまに、カバーしているアーティストを本家だと思っている人もいて、ジェネレーションギャップを感じますが、「古いもの=ダサい」ではなくて「古くてもカッコいい」となっているのは良い風潮ですね。

音楽も可処分時間の奪い合いを意識し、所有欲・帰属意識を高められるかが大事

CDセールス至上主義時代は、「歌姫対決」と掲げて、同日にCDをリリースしたりしていたが、今は可処分時間の奪い合いなので、同日リリースという手法はメジャーではないそう。確かに、昔はレコードショップに赴いて、1枚ないしは2枚購入してもらうといった購入完了までが主な指標でしたが、今は購入ではなく、いかに多くの人に視聴してもらえるかが重要になる時代。点ではなく線で消費者と繋がることが大事なのだなと今回のセッションを聞いて思いました。

また先日グラミー賞で5冠を達成したビリー・アイリッシュはCDボックスに帽子や靴紐、タトゥーステッカーなどを一緒にして販売。CDという手元に残るものがない時代、こういった帰属意識を高められるグッズ展開などが重要になるのでは、とのことでした。

テイラー・スウィフトも独自のECサイトを立ち上げているのですが、最近のアーティストのグッズは、ライブ以外でも持てるようなデザインのものが多いなと感じています。この傾向はスポーツでも感じますよね。

私も去年こんな記事を書いたので、良かったら読んでみてください。


お読みいただきありがとうございます。もっとライブやスポーツ観戦に行って仕事の糧にしたいです。