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溶解して凝固せよ #12
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芸術家は不幸でなければならない。とは思わないが、その身体が根源的な虚しさを忘れ去ることで説得力が無くなる言葉や表現は確かにあるような気がしている。
なぜこんなに苦悩や虚無感に惹かれるのだろう。
作家のストーリー性について考えることがある。
アイドルが苦難を乗り越え団結するストーリーで人々を魅了するように、わたしも、苦悩や虚無感にストーリーを感じているのだろうか。
自分と同じ虚しさを宿した女の子がいた。というよりも、身勝手にもわたしがそういった幻想を抱いていただけだ。恋のようだった。ある時、その子に恋人ができ、彼女は突然作品を作ることから 退いてしまった。そもそも作品を作ることそのものが目的ではなく、作品を作ることで「幸せになりたかった」のかもしれない。誰かの特別になりたかったのかもしれない。
わたし自身がそうではないとは言い切れない。もしかすると昔だって今だって、いつだって、そうなのかもしれない。苦悩に憑かれることで何者かになった気分でいるのかもしれない、という恐ろしさ。
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