『島さん』にほっこりする理由
こんにちは。
LGBTQライターなつめれいなです。
全体での新刊書籍発行点数は約7万点、そのうちコミックは約1.5万点もあります。ちなみに、売上ベースでは推計で約4,980億円です(いずれも2019年)。
30年ほど前であれば、私たちが数多くある作品に触れる機会といえば紙媒体しかありませんでした。その多くは商業出版される書籍・雑誌で、コミケで出会う同人誌が少し入るといった感じだと思います。
時代は進化して、2000年からは各出版社のWebサイトでマンガを読めるようになり、2010年代中盤からはスマホの発展によって、スマホアプリで読むというスタイルが定着してきました。
これからは、こうしたWeb発祥の人気作というのも出てくるのではないでしょうか。
今回ご紹介する作品もそのひとつ。一見頼りなさそうに見えるおじさんコンビニ店員を主人公にした、川野ようぶんどう先生の『島さん』を紹介します。
夜のコンビニを舞台とした人情劇
主人公は一見頼りなく見えるけれど、実は頼りがいのある不思議なおじさんの島さん。
架空のコンビニ「ベターデイズ」を舞台として、彼が主に勤務する店舗やヘルプに入った店舗の店長や同僚、お客さんとの人情話を描いた物語です。
本作は題14回カミカゼ賞で佳作を受賞、その後は漫画アクションとwebアクションで連載。最新では19話目が掲載されています。
現代社会に疲れた人を癒やす島さんの人徳
主人公の島さんはちょっとワケアリ。背中には大きな入れ墨が入っています。そんな彼は、昼間には交通警備、夜は「ベターデイズ」で深夜のアルバイト店員のダブルワーカーです。主に働いているのは、女性店長の沢みなみさんがいる店舗で、時折さまざまなお店にヘルプに行っています。
そんな彼は機械の操作に疎く、なかなか覚えられなくて一緒に入っている若い人に何度も質問しては陰口を叩かれますが、そんなことは意に介さず温厚な態度を貫き、周りの人に好かれる人物です。
元極道であれば、トラブル発生時などにそうした雰囲気を感じさせてもおかしくはなさそうです。しかし、そんな素振りはまったく見せず、むしろ温厚な態度で解決をはかろうとしています。
優しいだけでなく、トラブルを起こそうとする人には優しい口調で厳しく接し、お客さんを改心させる話術を持っています。一緒に働く人がトラブルに巻き込まれそうになったら、そっと近づいて解決を促すので、自然とファンも増えるというわけです。
そんな島さんと周囲の人物が、優しい気持ちを醸し出しています。
1話~数話完結で読みやすい
『島さん』は彼の周辺で発生するさまざまなできごとを描いた作品で、基本的には1話完結。多くても2~3話で終わる形式なので、比較的サクサクと読むことができます。
ニュースなどでもときどき報じられるように、日々いろいろなことが起こるコンビニ。お客様として利用するだけの私たちにわからないところで、コンビニ店員の方々は毎日いろいろなトラブルに対処しながら働いているのでしょう。
作者の川野ようぶんどう先生も深夜のコンビニでアルバイトをしているので、実際に本人が経験したことを元に描いているのかもしれません。
誰でも思わず共感してしまう作品
コンビニに限らず、どのような会社でもトラブルは発生します。明らかに自分(自社)のミスによるものもあれば、相手側(お客様側)の勘違いや不手際によるもの、従業員同士のトラブルもあるでしょう。
明らかに自分のミスであればともかく、相手側に非があることで一方的に怒られたらたまったものではありません。
そんなとき、へりくだりすぎることなく、かつ感情的になることもなく、平然とかつ誠実に対応。そんな姿は、普段のちょっと頼りなさそうに見えるおじさんの島さんからは想像できないかっこいい姿です。
特にコンビニで働いている人、もしくは元コンビニ店員さんであれば共感の嵐でしょう。コンビニでなくても接客業の経験者であれば、本作を読んで気持ちが楽になるかもしれません。
ドラマ化・アニメ化を希望します
「島さん」は、第1話から更新されるたびに読んでいる作品です。
何度も書いていますが、一見頼りなさそうに見えるおじさんが見せる優しさ、毅然とした態度は読むものを惹きつけます。
登場人物を演じている場面が思い浮かぶ作品は、決して多くありません。これほど面白い作品をドラマ化・アニメ化しないのはもったいない。
執筆時点ではまだ19話目で、コミックスもまだ2巻が出たところなので収録話数がたまったらという形になるでしょう。
アニメの制作会社、ドラマのプロデューサーの方に本作を読んでもらい、できれぼ地上波で、それが叶わずともどのような媒体でもいいのでぜひ検討してもらいたいと思っています。
最後に
過去に起こったできごとやトラウマ、しがらみからなかなか次の行動ができない人もたくさんいると思います。
実は、数年前の私もそうでした。
1巻で少しだけ語られていましたが、島さんは若いときにヘマをしてしまいました。そのことで、現在は昼間に交通警備の仕事をして、夜は深夜のコンビニアルバイトをし、休みの日は他店舗のヘルプに入るなど働き詰めの毎日です。
それでも、人生をやり直そうとしている島さん。彼の姿に何かを感じてみたい人に、本作を強くおすすめします。