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米国の子育て:産休育休制度は薄弱だが、母親ペナルティは弱い…?

渡米後、米国での出産経験者から話を聞く機会も増え、日米の出産育児を取り巻く制度や文化の違いについて色々考えるようになりました。個人的には、

  • 米国:制度は薄弱⇔母親ペナルティは弱め?

  • 日本:制度は手厚い⇔母親ペナルティが強め?

なのでは、と感じています。

制度は圧倒的に日本が手厚い!

日本では、原則6週間の産前休業と8週間の産後休業、子が1歳になるまでの育児休業を取得することができ、出産手当金・育児休業給付金・社会保険料免除により一定程度の経済的サポートを伴う≒”有給”での休業制度が国の制度として定められています(雇用形態や雇用期間などの条件はあり)。
米国には、”有給”の産前産後休業、育児休業制度は存在しません。連邦政府レベルでは、The Family and Medical Leave Act(FMLA)という制度が存在し、事故や病気、出産、家族の病気などで一時的に働けなくなり休暇を取得した場合、12週間までの雇用を保証するとされています。ただ、FMLAが定めているのは解雇しないことの保証のみで、経済的保障はなく(つまり12週間は無給休暇)、企業規模要件なども存在するため(民間企業の場合従業員50名以上)、実質FMLAの保護すら受けられない労働者が存在するという衝撃。州や企業レベルでは、より手厚い有給休暇や休業日数を設けている州や企業もあるとのことですが、母体への負担を考えると恐れ戦くような制度の手薄さです。
実際に、米国に来て初めての妊婦検診で医師に「日本で働いているけど、産前休業(childbirth leave)を取得して渡米した、1年の育児休業(parental leave)の間は夫がいる米国にいたい」と説明すると、「日本の制度って素晴らしいのね」と驚かれました。米国で働いているソーシャルワーカーの友人は、面接をテレワークに切り替えたり、引き継げる案件は引き継いで業務量を減らしたりしつつ、出産直前ギリギリまで働き、出産から約3か月後にはオンラインとはいえ仕事に復帰していました…(しかも帝王切開…)。

米国の方が、職場・近所・コミュニティでの「大変だけどお互い支え合おう」感は強め?

一方で、妊婦や子育てする親に対する世間の目は、日本よりも、こちらの方があたたかいように感じます。この点は、日本の中でも東京、米国の中でもインディアナ州ブルーミントンと、都会と田舎による差も大いにあるかもしれませんが…、現在妊婦の私が買い物する際などにドアを開けてくれたり、荷物を運んでくれたり、あたたかい声をかけてくれたりしてくれたりする人はとても沢山います。夫は正式な育休は取得しないものの、「子供が生まれてから1~2か月はプロジェクトを大幅に減らし、ミーティングなし、スローペースで働きます」とボスと周囲に宣言し、自身も子育て中のボスから快諾を頂くことができました。もちろん職場や人間関係によるとは思うのですが、そもそも夫の職場、普段から非常に柔軟な働き方が許容されており、家族の時間は日本にいた時とは比べものにならないくらい取れています。職場で誰かをWelcomeしたりFarewellする機会には、同じフロアのメンバーが配偶者や子供も連れてみんなで集まったり、子連れでミーティングに出たり出勤するなんていうこともあったり、家族ぐるみで顔の見える関係を築くのが当たり前という雰囲気があります。ただ、米国での職場での子育てへの理解は、街を子供が1人で歩くのが危険+圧倒的車社会であるがゆえに、学校が終わる時間には子供を車で迎えに行かざるを得ないという事情もあると思いますが…。
こちらで会った人々には、出産後は大変に違いないからヘルプするよと言って頂いたり、ベビー用品を頂いたり、産後ドゥーラやミールサービスなどのリソースを沢山教えて頂いたり、とてもよくして頂いています。日本人的には「会ったばかりの他人にこんなによくして頂くなんて…」とか「ちゃんとお返ししなければ…」など恐縮しきりなのですが、子育て中の親同士でご飯を作りあったり子供を一時的に預かり合ったりということも普通にあるし、遠慮しないでね、そういうものなのよ、とあっけらかんと言われたり。
また、これは日本でも徐々にそうなって来ているとは思いますが、こちらでの妊婦検診や出産準備のクラスは、母親だけでなく父親・パートナーも一緒に参加することが推奨されており、出産子育ては両親ともに初めてのことだから、母親だけで抱えず両親一緒に学んで取り組んで、というメッセージを受け取っているなと感じます。


日本って「母親が頑張らなければならない」という足かせが強いのでは…?

日本での子育てするお母さんの大変さ(赤裸々に言うと、孤独で殺伐とした感じや肩身の狭さ…)を友人やSNS上で縷々聞いていたため、初めて迎える出産子育てに戦々恐々としていたのですが、米国にきて相対的な視点で考えられるようになりました。
日本での、隣近所に赤ちゃんの泣き声が迷惑になることを気にして、すぐに泣き止ませなければというプレッシャー。公共の場での子供に対する「ベビーカーが迷惑」とか「しつけがなってないのでは?」とかいう、社会の目。職場での子育て中のお母さんの肩身の狭さ。出産子育ては母親の責務・責任という足かせが強すぎるのでは?と感じます。
米国では、仕事も大事だけど家族のプライオリティが高いという価値観もあいまって、父親が積極的に子育てにコミットしているケースが多い。親戚だけに限らず、周りに頼ればよいという雰囲気が強い。制度が薄弱だからこそこのような社会的な雰囲気に繋がったのかもしれず、にわとりが先か卵が先かはわかりませんが、日本での出産子育て環境をよりよくするにはどのようにしたらよいかという、良いヒントになるなと考えています。

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