喪服が着られなくなった日
実家の母から
『喪服の用意をしておきなさいね』
とLINEで連絡がありました。
その時、とあることで不安がよぎりました。
喪服について早急に確認しなくてはならない事項がある!
クローゼットを開き、ハンガーにかけてある喪服(ワンピースとジャケット)を徐に手を取り確認する。
やはり、か。
じゃあだめだ。
これはもう、着られない。
着てみるまでもない。
そう、太って喪服が着られなくなったパターン。
サイズ表示には9という数字。
女性にとっては標準サイズですかね?9って。
じゃあ、今は?今は何サイズ?何サイズなら
着られるの?
ダメモトで着てみたけど背中のど真ん中辺りでファスナーが止まってる。
着てみたけどって言うか、着られてない。
その上にジャケットを羽織ってみる。
着れたけどギッチギチ。ご焼香の時にバヅンッて音と共に背中の縫い目が弾けほつれる事が容易く予測できる。それどころか今にも背筋を伸ばして気をつけをしただけでも腕の縫い目が弾けほつれそうなのに、これじゃあ葬儀場にたどりつく、否、もっと前、家を出る前にきっと全ての縫い目が弾けほつれるだろう。
まぁそんなくだらない予想など必要ない。大きいサイズの喪服を買えばいいだけ。しょうがない。本当にしょうがないけど。
私が痩せて既存の喪服が着れるようになるよりも、本当に悲しいけど葬儀に参列する方がどうやら早まりそうなのだ。
現実に向き合わなければならない。
私は翌日、喪服を買いに行った。
お店に入り(しまむら)11号と表示されたワンピースとジャケットのスタンダードなアンサンブルを手に取り、試着室に入った。ワンピースに袖を通し、背中のファスナーをしめる。なんとか入った。お前の体は11号でギリギリだぞ、これが現実なんだぞ、と自分に言い聞かせながら鏡に映る自分を眺めた。(5秒程)
買い物に付き合ってくれた母に
『これ以上、太らないようにしないとね!また買い直すようになるよ!喪服なんてそうそう、買わないもんなんだからね、本来は!』と釘を刺された。だよねー。
喪服だし気に入ってた服ではないのだけれど、それでもまだ2回くらいしか着ていない喪服がもう着れなくなるのは惜しい。というのも購入当時、母に何十年も着れるものなんだからちゃんとしたの買いなさいと促され、まぁまぁいいお値段の喪服を買ったのだ。たしか4万円くらい。当時の自分としては高い買い物だった。いや、今でさえ頻繁に着ることのない喪服に4万円は正直、なかなか出せない。故人やご遺族にはほんっとに申し訳ないのだが。
本当に申し訳ない気持ちが私にあるのなら、痩せてまた9号の喪服を着られる様にするまでだ。痩せるきっかけが不謹慎な気はするけど。10キロ痩せたい!というよりも9号の喪服がまた着られる様になりたい!のほうが目標が明確な様な気がする。狙う対象が漠然としているよりも明確なほうが照準をあわせやすい。
とりあえず今日から頑張る。