《26通目》おじいちゃんの話
先生へ
前話からの連想ゲームで、おじいちゃんのことを少し。
私のおじいちゃんはいつも「新品に傷をつけて」いたそう。
お母さんからこの話を聞いたとき、なんか分かるような…。そしてなにか少し考えさせられるような、そんな気がしたんです。
おじいちゃんは、新しい財布を買ったとき、気恥ずかしくて、必ず傷をつけてから持ち歩いたそう(その現場を見てないから、どういう傷をつけるのか、想像できませんが…)。靴はまじないもかねて、踏んで少しつぶしてから履く。
新しいものが恥ずかしいから、自分になじむように使う前に少し古くする。それがおじいちゃんのルーティーンだったみたいです。そうやって自分になじんだものを、おじいちゃんは大切に、大切に使っていったんだと思います。
最近、れいんは新しいギターを買いました。おさがりギターしか持ってなかったので、購入は初めて。新品のエレキのアコースティックギター(以下エレアコ)という条件で、私が見た中で、一番安いギターです。まさかの1万円台。
でも私ギター下手すぎるので、買うのクソ恥ずかったです。そして絶望的なほどの勉強不足。まず、エレアコには電池が必要ってことすら知らなかった。ネック調整しときましたんでって言われて、とりあえず感謝しないといけないことなのは分かるけど、何をやってくれたのかはさっぱり…。さすがにチューニングって言葉は知ってて、とりあえずの命拾い。
こんなんでギター買うとかちょっと恥ずいな…そう思っていたんですが…。
ギターを見ると、小さな傷が。また、このギターは在庫もなく現品限りらしい。
私は自然とおじいちゃんのことを思い出していました。
この傷はきっと。おじいちゃんが、ギターと私がなじむように付けたのかもしれない…。
科学的に、客観的に、論理的に、そうじゃないって思われるのは分かる。
だけど。そう思うと、なんだか張っていた心の弦が緩んだ気がしました。
新品に傷をつけて使う。それはものと人をつなげるあいさつになることもある。私はギターにあった傷のおかげで、ひとつ物見知りを乗り越えたような気がしました。
今回はただ、そんな気がしてうれしかった、というだけの手紙です。
2024.11.18 ちな、おじいちゃんギター弾けたらしいんだよな。
れいん。