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猪革のペンケース

猪革を使う意味

この度、猪革のペンケースを御注文頂きました。
ReiLeatherではこれまで猪革を使いバッグや財布、システム手帳等を
作って参りました。
数年前から害獣駆除された鹿や猪の肉や皮を廃棄せずに利用しようという機運が高まり、鞣されて皮から革になったものを利用しています。
その二種間でも柔らかく丈夫で傷の少ない鹿革と比べ、猪革は荒々しく傷だらけのものが多くなっています。
生前にどれだけ暴れたらこんな傷になるのだろう?と思わせるものもあり、
その姿を想像してみたりしています。
そして使用上差し支えない範囲でその傷をデザインとして取り込んでいます。
全ての製品を手作業で作成しているため、元より当方の革製品はハンドメイドの一点ものですが、猪の傷を取り入れた製品はその中でも格別の一点ものと言えるかも知れません。
荒ぶる猪の魂を鎮め、末永く御客様に愛される革製品に生まれ変わらせる。
そんな気持ちで使っている革です。

製造工程

今回のペンケースは一本だけの収納で絞り技法での作成という御注文でした。
そこで御客様の御愛用されているペンの太さと長さを教えて頂き、今後の入れ替えの可能性も考慮して若干大き目に作っています。
先ずは絞りの元型となる木製の丸棒を削りました。

内側に用いる紫の猪革を元厚から漉いて薄く加工し、全体を濡らして水分を行き渡らせたら貼り込みます。
この後、上から黒の猪革を貼り合わせるので画像は床面です。
本来ならば上から木型で抑え込むのですが、一点物なので縫製に影響のない部分を釘で抑え、乾燥を待ちます。

乾燥待ちの間にネックストラップを装着するDカンの根革を作ります。
内部にはのび止めの補強を施しています。

内側の革が乾燥したので次に黒の猪革を絞ります。
紫の革を絞った元型に0.7ミリ程度に漉いた床革を貼り、その上から黒の猪革を貼って絞りました。
紫の猪革は厚さ1.0ミリ程度なのでその上にかぶせる場合の厚さを考慮しなければならないためです。
今回は密着度を高めるため1.0ミリより薄い0.7ミリとしてみましたが、上手く貼り合わせる事が出来ました。


紫と黒の革を貼り合わせたら不要な部分をカットし縫い合わせます。



ネックストラップは御客様に指定して頂いた長さで作りましたが、革の長さが足りず途中で継いでいます。
こちらも内部にのび止め処理を施しています。

ストラップの両端にはバネホックを設けており簡単に脱着する事が出来ます。

完成後の画像

縫製が終わったらコバを丹念に磨いて完成です。

銀面のシボがとてもワイルドですが、黒と紫を組み合わせる事により、その野性味と共に高貴さをも感じさせるコーディネートです。
ステッチも私自身が染色したもので、大変良い色を出せました。

背面にはD環を備えています。

タンニン鞣しの革なのでコバも綺麗に仕上がりました。
テーブルの木目が映り込んでいます。

画像では分かりにくいですが、フラップの先端には革で作った薄い芯を仕込んでいます。
これによりフラップがしっかり固定されるので不意に開く事がありません。

金具は全て真鍮製です。
革と共にエイジングを楽しむ事が出来ますが、磨けば元の輝きを取り戻せるのも魅力です。

手帳と共に

実は今回のペンケースは以前作った猪革のシステム手帳と共にお求め頂いたものでした。


先日のシステム手帳スタイル誌への掲載の効果でしょうか、この手帳に限らずお問合せが徐々に増えており大変有難く思っております。
そしてこの手帳とペンケースを携え、御客様はあるイベントに参加されるとの事で、その様子も是非拝見したいと思っております。
この度は御注文頂き有難う御座いました。

お知らせ

下記ECサイト(Base及びCreema)では革製品を販売中です。
オーダーメイドや革製品の修理の御相談はreileater@gmail.comまでお願い致します。
https://reileather.thebase.in/



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最後までご覧頂き有難う御座いました。
ReiLeather 山田智之

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