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持たざる者の“引き算”

「零細町工場の社長」です。モノづくりのまち東大阪にある小さな町工場が、社運をかけたオリジナル製品『切られ役』を作った話「その3」です。


前回からかなり日があいてしまいました。「その1」は当製品の“欠点”について「その2」は当製品がこだわった“切り心地”について語りました。

3回目の今回は“デザイン”について語ります。まず最初にことわっておくと、弊社は吹けば飛ぶような零細丸出しの町工場です。社運を賭けた商品の開発といえ、「出来そうなことは全部自分たちでやってしまおう」精神で取り組みました。お金がないからです。

製品開発にあたって競合製品の研究は相当しました。しかしデザインの教育も当然受けていない自分に何が出来るでしょうか。悩みました。答えが出ました。「引き算」です。

他のマット見てたら、いろんな「ガイド」や「斜線」、「図柄」などごちゃごちゃした印刷がマット面にされています。ホンマにいる?

カッターマットを使い込んでいる人たちに話を聞いてみました。結論、あんま使ってねえなと。仕事でカッターマットを使っているような人たちは正確な寸法を出すためにマット地に印刷された線を使いません。正確な「金差し」を使います。

カメラをタイマーにして自分で撮りました。しらこいですね


じゃあごちゃごちゃしたデザインいらなくね?と思ったのです。うそです。いやちょっとほんとです。上手いデザインなんか出来ないんだし、やらなくてよくね?となったのです。

「デザインも機能のうち」とかよく言いますよね。余計な要素でプロの仕事を邪魔したくないなって。無地はさすがにやりすぎかなとも思ったので(やりすぎてもええやんとは思いましたが)1cmの方眼だけ印刷することにしました。5cmごとに太い線にしました。それぐらいは私にも出来ます。

“無駄を削ぎ落としたデザイン”。よく言うたものです。下手に手を入れて大怪我するより、勇気と覚悟でとことん“引き算”すること。「カッターで物を切る」という根本的な機能にしっかりフォーカスすると、こうなりました。ということです。

社運を賭けたかわいい製品です。もちろん、「ロゴ」を入れたい!という強い誘惑に駆られました。たとえば、買って愛用してくれた方がSNSに写真付きで投稿する-。ロゴがあったら分かりやすいですよね。見ている方も認知しやすいですよね。でも諦めました。

グッと歯を食いしばり…。「大切なのは引き算。大切なのは引き算。自分は何も出来ないグズなんだから」と心の中で連呼して。現在のようなデザインになりました。自信のあるシンプルデザインです。

「無駄を削ぎ落とす」とは「我を削ぎ落とす」ことでもあるのですね。弘法大師もそんなことを言っていたような気がします。気だけだが

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