見出し画像

たのきんトリオの思い出

あれは僕が中学生の時だったと思います。

友達と服を買うために大阪のミナミに繰り出した時のことでした。大阪球場の近くを友達と歩いているときに、突然、4,5人くらいの女の人達に呼び止められたのでした。

頭の中はエロだらけの中坊にとって、女の人、それも年上の女の人から声をかけられたのですから、その時は、心臓が爆発しそうなほどドッキン・ドッキンしましたね。

僕と友達は立ち止まって、声をうわずらせながら「なんですか」と答えたと思います。

目の前にいる高校生か大学生ぐらいのお姉様方は、僕と友達の方に近づいてきて、「今日、これからヒマある?」と言ったのでした。

その言葉を聞いた僕たちはお互いに顔を見合わせてニヤリ、すぐさま「ヒマです」と答えたのでした。

これが所謂「逆ナンか」。これからどこへいくのやろう、どんな遊びをするのやろう、二人きりになれるやろうかと訳の分からぬ期待に股間を大きく膨らませた中坊二人。

言うまでも無くそんなドラマチックな展開は起こるはずはないのです。だけども、僕たち二人には、ある意味もっとスゴイ展開が待っていたのでした。

お姉様方は、僕たちの「ヒマです」という言葉を聞いて、僕たちの前に2枚の紙を差し出してきたのでした。そして、「これは、たのきんコンサートのチケット。今日、すぐそばの野球場でコンサートあるからいかへん。チケット、余ったからタダであげるわ」とのお誘いがあったのでした。

僕も友達もこの思いもよらないお誘いに一瞬「マジで」と思いましたが、二人ともアイドル好きで、ミーハー(死語!?)でしたから、こんなラッキーな申し出を断るはずがありません。即座に「ありがとう」と言って、たのきんコンサートのチケットをもらいました。それも、ホンマにタダで。

僕たちのもらったチケットの座席番号を見ると、レフト側の外野席でした。開場時間がきて、僕たちはチケットの座席番号の位置へと向かいました。

野球小僧の僕たちには見慣れた野球場の風景でしたが、一点だけ大きく違っていたことは、球場のスタンドがほぼほぼ女性で埋め尽くされていることでした。僕たちの周りも当然女性だけでした。頭の中はエロだらけの中坊にとっては夢のような状態と言いたいところですが、逆に僕たちは、場違いなところに来てしまったと、少し後悔していました。

「うっへぇー、女の人ばっかりやん」
「ホンマやのー、俺らの他に、男いてるんか」
「場違いなところにきてもうたのー」
「どうする。帰ろうか」

たぶん数万人の女性がいたと思いますが、後にも先にも見渡す限りほぼほぼ女性だけという状態は、僕にとってはこのたのきんコンサートだけだと思います。

昭和アイドルのファンにはお馴染みのはっぴに身を包んだ集団があっちこっちにいて、手にもまた、いろいろな応援グッツを持つお姉様方を見ているだけで、ホント、楽しかったですね。

最初は、女性の数の多さに圧倒されていましたが、その場の雰囲気に少しずつ慣れてきた僕たちは、開演の時間を今か今かと待ちわびていました。

コンサートが始まると、お姉様方の「マッチ~、トシ~、よっちゃ~ん」と絶叫のような声援が球場に響きわたりました。数万の黄色い声援は、ど迫力満点でした。また、スタンドで揺れるペンライトとカメラのフラッシュもものすごくて、ビックリしました。

以前に、ホールコンサートへは1,2度行ったことはあったのですが、野球場のように大きな所でのコンサートは今回が初めてでした。

ステージセットも照明も、ホールコンサートとは比べものにならないくらいに大きくて、しかも豪華。さらにいろいろな仕掛けもすごくて、初めて見る僕たちにとっては夢のようなコンサートでした。

たのきんトリオのパフォーマンスも最高でした。広い球場を所狭しと駆け回り、ファンサービスする姿は、とても感動的でした。

そして、普段はテレビでしか聴くことができなかったヒット曲の数々を生で聴くことができたことが、やはり一番うれしかったですね。僕はマッチの曲が好きだったので、マッチの曲が演奏されると、僕も一緒に熱唱してしまいました。

こんな感動のステージを観ることができたのも、ひとえに僕たちにチケットをくれたお姉様方のおかげです。お姉様方には感謝、感激、あめ、あられでございます。

たのきトリオのコンサートチケット(それも球場)をタダでもらえたということが、どれだけスゴいことか今の若い人達には伝わりにくいかも知れませんね。

そうですね、人気絶頂期の嵐の国立競技場でのコンサートチケットをタダでもらったとなったら、どうですか。スゴイことでしょ。その当時は、たのきんトリオもそれくらい人気があったんですよ。






 











いいなと思ったら応援しよう!