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テレビ番組『Øgendahlと偉大な作家たち』カーレン・ブリクセン編①

カーレン・ブリクセンなんて読んだことないよ
女性が参政権を得ていない時代にアフリカで農園を営む
若い人への助言――”人を愛し、ユーモアと勇気を持とう”
父の自殺
ケニアでコーヒーのプランテーションを営む
夫の浮気で梅毒に

カーレン・ブリクセンなんて読んだことないよ
 
『Øgendahlと偉大な作家たち』というデンマークの番組が好きだ。ナビゲーターのØgendahl氏はコメディアン。

 カーレン・ブリクセンについてこう彼は言う。
「彼女はたくさんの本を著した。僕は読んでいないけど。そしてその多くは映画化された。僕は観たことはないけど。人々は彼女の作品に熱狂している。きっと素晴らしいに違いない」

女性が参政権を得ていない時代にアフリカで農園を営む

 カーレン・ブリクセン博物館に訪れると、博物館員がライオンの剥製を見せてくれた。ブリクセンが初めて狩りでしとめたライオンだ。ブリクセンは生涯で10頭程のライオンをしとめた。デンマークでも女性が参政権を得ていないような時代に、アフリカで農園を営むことも、ライオンを狩ることも非常に勇気のいることだった。

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 ブリクセンは博物館のあるコペンハーゲン北部のオアスン海峡沿いのRungstedという地に1985年に生まれ、アフリカで17年間暮らした後、この地に再び戻り1962年に亡くなるまでここに暮らした。

若い人への助言――”人を愛し、ユーモアと勇気を持とう”

 ブリクセンの本を全く読んだことはない(おそらく読書が苦手な視聴者をこの番組に招き入れるためにこう言っているのだろう)と言うナビゲーターに館員はこうかみくだいて説明します。

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「ハリー・ポッターは読んだことありますよね。ブリクセンの作品はリアリスティックでもあり、同時にハリーポッターのようにマジカルでもありました。女性が猿になったり。いつだか分からない不思議な時代を舞台にマジカルな出来事と同時に、現実的な出来事も起き、”私って何者なんだろう?”、”私の運命は?”など現代的な問いが投げかけられるのです。そして彼女の作品にはユーモアが一貫して見られます。そして特に晩年の20年間には若い人達への助言も多くしました。”人を愛し、ユーモアと勇気を持とう”と。

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 その後博物館を巡るØgendahl。すると何と、Karen Blixenが花を生けています(時空ねじれたか)!

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父の自殺

 ブリクセンは花を生けながら、「私は世界で一番優しい家族のもとに生まれてきたけれど、それでも孤独を感じていた。父といる時以外は。父は戦場に赴き、また三年間ネイティブアメリカンとともに暮らした。父は作家だった。父は私を分かってくれた。ありのままの私を愛してくれた」と語り出します(突然、どうした!? な展開 笑)。父が亡くなったのは私の人生最大の悲しみだった。首を吊ったの。私はまだ10歳だった。私は馬に乗り、父がしたように旅をし、様々な人と話がしたかった。そこで私はアフリカに行き、農園を営んだ」

 歴史家で作家のTom Buk-Sweientyがここで登場。
「カーレンはケニアに赴いた時、30近かったのです。ヨーロッパを出たのはそれが初めてでした。突然に広がった新しい、新鮮で、色彩に富んだ世界。彼女はアフリカに恋に落ちました」

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彼はカーレン・ブリクセンのアフリカでの日々についての本を書いているようです。

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ケニアでコーヒーのプランテーションを営む

次に別の博物館員Cathrine Lefebvreが登場。
「ブリクセンは一族の血筋(halvfætter bror)のBlixen-Finecke氏と結婚しました。両家ともに裕福で、2人に出資してくれ、そのおかげで2人はケニアでコーヒーのプランテーションを買うことができました。その収入で夫妻は生計を立てることができました」
 再び先ほどのTom Buk-Sweientyが登場。

「ブリクセンは富裕な家に生まれ自身の役割に落ちつぶされそうになり、自由を、自分らしくいる機会を渇望していました。アフリカではそれが得られると思ったのです。彼女はアフリカで新たな自分に生まれ変わりました。
 しかしアフリカでの暮らしは波乱万丈でした。まずお金がすぐに尽きました」

夫の浮気で梅毒に 
再びCathrine Lefebvre。
「自然災害など人間の力ではどうにもできない問題が彼女に襲いかかりました。また梅毒にかかり、強い薬を服用しなくてはなりませんでした。彼女の臓器は大きなダメージを負いました」

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Tom Buk-Sweienty 
「彼女は恐怖にさいなまれました。それにどこから梅毒をもらってきたのだろうかと疑心暗鬼に陥りました。可能性は1つ。夫でした。農園経営、結婚2つの要因により彼女は窮地に追い込まれました」

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(続く)

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