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深呼吸する旅〜信州上田へvol.2

深呼吸する旅vol.1は▶︎こちら

自分たちだけでは訪れない地域へ行くということ

本当は、どこかでランチをしてから吉池宅に伺う予定だったが、御一行はてんでんバラバラなので、すでにお昼の時間はだいぶ過ぎていた。そこで予定変更し、弁当を買って直接向かうことになった。

弁当を買ったスーパーツルヤは12年ぶり。品揃えも品質も良く、当時他ではなかった石鹸シャンプーとかを置いていたのでいつもお世話になっていた。信州では奇跡的に歩いて行けるところだったし。

今回のツルヤは以前行っていた店舗とは違うけど、くっきりと当時をあぶり出す。そして、時の経過は、ぶっちゃけ辛かったことも、実に淡々と再定義してくれるとわかった。

吉池さんの実家の屋根。鬼瓦には吉池の文字(写真は橘川さんより拝借)

吉池さんのご実家は、丸子という地区にあり、観光化もされておらずのんびりとした田園風景が広がっていた。おそらく江戸時代に建てられたであろう母屋は大きく立派で、その昔はお蚕さんを飼っていたという。庭にある蔵も素晴らしく、地元でもご尽力されてきたことが伺える。

常会所で(写真は久恒さんから拝借)

近くにある常会所で昼食。改めてみんなの自己紹介。常連さんたちが口々に「吉池さんの屋台があって本当にありがたい。こうして、ご近所の人たちとも仲良くなれたし、他にも店はあるけど、やっぱり屋台に行っちゃうのよね。」と話していたのが印象的だ。

屋台では、ツマミは出していないのでお客がそれぞれ持ち寄り、魚を炙ったり漬物を交換したりするそうだ。賑やかなのが想像できる。桜新町にも行かねば。

吉池さんのお母さんが、自前のお米でこれまた自家製の梅干しのおにぎりと野沢菜を振舞ってくれた。涙が出そうなほど美味しかった。屋台組はお母さんにお土産をどっさり持参し次々渡す。お母さんは持ちきれないほどもらって、まるでわらしべ長者。かわいい。

橘川組は、親分が持ってきただけ。笑

しかも、屋台組最高齢79歳のくにこさんは、さっさと立ち上がってお茶のおかわりを入れてくれたりするのに、橘川組はお腹いっぱいで、ただボ〜〜。zoomの中ではそれぞれだから、こんなところにも違いが出るのかな、と面白かった。いや、単に気がつかないだけか(ただ一人、りえさんの細やかな気遣いには感動)。

吉池さんに丸子地域の話を色々聞いた。特に観光地でもないため、よそ者を受け入れる土壌がないので、例えば屋台のようなコミュニティを作りたいと思っても、すぐにはできないということだった。

少しずつ少しずつ。でも、あの人柄なら誰もが助けてくれるだろう。なんだか助けたくなっちゃうのだ。

昼食の後は、付近を散策。普段、よその人間が入ることのないところに、不審な連中がぞろぞろ。たった一人いた地元の男の子が、自分の家から出たり入ったりしながら、チラチラと覗いているのが妙に可笑しかった。怪しいよね。

歩きながら、ぽっくるちゃんと、「夜中までZoomで会ってた人たちが、今はこんな知らないところで一緒にいるのが不思議だね〜、しかも吉池さんいなければ絶対に来ないところ!」と、お互い深く頷き合った。

そして、大きく息を吸い込んだ。上田の地よ、吉池さんよ、お母さん、弟さん、学部の皆さん、屋台組の面々、みんなみんな、ありがとうございます!

一面のブドウ畑で深呼吸

吉池邸を後にして、次はシャトーメルシャンが2019年にオープンした、「椀子(まりこ)ワイナリー」へ。お天気はあまり良くなかったが、湯の丸や遠く浅間山まで見渡せる丘に、ブドウ畑が広がりご機嫌だ。

「椀子(まりこ)ワイナリー」のヴィンヤード
ワインの貯蔵樽がズラリ
くにこさん。ブルーの爪でワイン。かっこいい!着物リメイクのお仕事でマスクも自作。
薄靄の夕焼けに包まれて

またまた空気を思い切り吸い込む。やっぱり、たまには都会から離れて、自然の中に浸ることも大事だとつくづく思う。

上田は文化の香りにあふれてる

ワイナリーで橘川さんたちとはお別れ。残り組は、町に戻り、水を汲んだり日本酒の豊富な店で最後の買い物をした。

屋台組にはもちろんだけど、上田の町でも酒屋さんでも、吉池さんは人気者だ。本当にお人柄だと思う。旅の直前、手違いで数の子1キロ入りを100箱さばかなくてはならない状態になったとFacebookに投稿していたが、あっという間に救いの手が差し伸べられ、完売していた。上田の酒屋さんも気にしていたが、大丈夫と聞いて安心した様子だった。

柳町で見つけた、よく呑むお酒の酒蔵。上田の銘酒だった。

古い銀行を改装した劇場は天井が高かった

残り組の皆さんとも別れ、わたしは翌日軽井沢に寄るため、上田の犀の角ゲストハウスに宿泊。メインストリートにある、古い銀行を改装し劇場にしたという面白いところだった。天井が高くて雰囲気満点。古さと新しさが融合して、また違う文化が生まれるのだろうな、と感じさせる。

犀の角の劇場

ゲストハウスは別棟にあり、ドミトリーに泊まった。ドミトリーなんて、バックパックで東南アジアを回っていたとき以来だから、30年ぶりくらいだろうか。秘密基地みたいでなんだか楽しい。

夕飯は、近所の居酒屋るり屋へ。これまた久しぶりの一人呑み。自宅近所の行きつけの店で以前よく飲んでいたのが亀齢というお酒なのだが、実は上田のものだと知らなかった。しかも女性杜氏。そりゃ呑まないわけにはいかん。料理もどれも丁寧で美味しかった。野沢菜の天ぷらは初めてだったけど、いやイケた。焼き鳥のタレも絶品。

シュールキューピーが一緒

深呼吸する旅は続くよ

それにしても、今回の旅でつくづく思った。縁とは本当に不思議で豊かだ。それまでに実際会ったのは二人だけなのに、あっという間にみんな仲良しになって、密度の濃い一日を過ごせた。ほんの数時間でこれほどいろんなことを感じられるのは、やはり共に過ごした人たちのあり方が大きいのだな。

この時間をしっかり吸い込んで、そっと世界に還してゆこう。それでこそ、深呼吸する旅なのだから。

深呼吸する言葉は、時代の空気(ブラフマン)を大きく吸って、自分(アートマン)の体内を巡らし、自分という言葉のフィルターを通して世界に還していく表現運動です。100文字以内という限定だけで、あとは自由です。あなたも日常の中で深呼吸する言葉を書き続ければ深呼吸歌人です。
深呼吸学部出版局まえがきより




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