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みうらじゅん「マイ遺品展」@アサヒビール大山崎山荘美術館に行って圧倒された日記(2022年2月11日)

世界のMJといえば……マイケル・ジャクソン? 
いや、日本にはみうらじゅんがいる!

というわけで、大阪と京都の境界にある天王山、その昔、豊臣秀吉と明智光秀が天下分け目の戦いを行ったことでも知られる由緒ある山へ行き、みうらじゅんの「マイ遺品展」を見てきました。

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遺品って? みうらじゅんって死んだっけ? 

とお思いのみなさま、安心してください(古い響きのフレーズですが)、もちろん生きています。

これまで集めに集めたコレクションが途方もなく膨れあがり、これから先(グレイト余生)もどんどんと溜まっていくのはまちがいないので、「遺品」として展示することに決め、このたび本人の故郷でもある京都で展覧会が開かれることになったとのこと。

会場となったアサヒビール大山崎山荘美術館は、その名のとおり、大正時代に建てられた英国風山荘に安藤忠雄が設計した棟を加えて美術館とした建物であり、モネ「睡蓮」のコレクションで知られています。

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そんな気品と趣きに満ちた美術館に、みうらじゅんの集めた“いやげもの”が並ぶ姿は……これが案外似合っていて、本人も語っているように、“いやげもの”は「民藝」の域に達したのかもしれません。

大量のへんぬき(へんな栓抜き)を見て、
「呪いの人形みたいなのがついた栓抜き、どっかでもらったな~」
と思い出したり、大量の貝の置物を見て、
「白浜だったかで買ったものが実家にもあったな……」とか、
大量のヌードトランプを見て、
「サイパンに行ったとき、あちこちで売られていたな」など、
封印していた昭和の記憶が走馬灯のように脳内を駆けめぐりました。

ほかにも、顔が描かれたひょうたん、「これいったい何の景色?」と思わず首をひねるカスハガ(観光地で売っている絵はがきの中に強引に挿入された、何ひとつ見所のない一枚)、京都タワーや大文字山が編みこまれた掛け軸など、すっかり忘れていた、そしてこのまま忘れていたかった思い出が呼びおこされます。

こちらのサイトでも語られていますが、そう、こういったものは意外に高かったり、かさばったりするので、みやげもの屋で目にすると
「誰が買うねん?」と、かならず疑問を抱いてしまうのですが、

買うのももらうのも困るし、
高いし重いし、まぁ、言ってみれば
「嫌なことばっかり」のものを、
勇気を出して買うんです。

とのこと。編集者の都築響一さんによる『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』という本がありますが、その精神(スピリット)がなにより大事なんだなと、あらためて思いました。

そう、「マイ遺品展」でなにより心に残ったのは、“いやげもの”のキッチュなおもしろさよりも(もちろんそれだけでも見ごたえあるのですが)、そのスピリット。それがいちばんよく表れていたのが、小学生の頃からずっと自分で作っていた雑誌やスクラップブックでした。

誰に頼まれてもいないのに、自分で自分に締切を設定してマンガを描いて文章を綴り、せっせと雑誌を発行する……
「忙しくて、勉強なんてしてる暇がない!」と本人もキャプションをつけていましたが、たしかにそりゃ忙しいだろうと心底納得させられました。

もちろん、昔なら同人誌、いまはブログなど、誰に頼まれてもいないのに自分で発信するのはそれほどめずらしいことではないのですが、これだけの量をずっと発信し続けているのは圧巻でした。

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       (写真OKの展示もいくつかありました)

現在も「コロナ画」として、「コロナが収束するまで」を締め切りとして、キャンバスに絵を描き続けているらしく、それも展示されていました。
収束する気配がないので、ピカソの「ゲルニカ」くらいの大きさになるかも、と本人も語っていますが、大きさのみならず祈りという面からも、「ゲルニカ」や曼荼羅に匹敵するかもしれません。

その絵のまわりには、甘える坊主、冷マ(冷蔵庫マグネット)、菊人形などが並べられているのですが……
冷蔵庫マグネット、そう「水のトラブル110番」といった、知らん間に郵便ポストに入れられている例のやつですが、ほんと、日常生活において視界の端に入ってくるものにうまく目をつけるな~と思いますね。“SINCE”然り。

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       (甘える坊主、ほんま甘えとるな~)

そして菊人形、地元の名物なのですが、子どもの目にはトラウマになりそうな怖さがありました。自らが菊人形になることで、その怖さを克服したというのも興味深い。

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       (おなじみのカエルも菊人形に)

……と、あれこれ感服しながら、地中館へ行くと、常設展のモネ「睡蓮」やルノワールの名画が展示されていて、ここまで散々目にしてきたゆるキャラやムカ絵馬(ムカつく絵馬)などのギャップに、思わずはっと我に返ったのでした。

(京都つながりということで、25周年記念のくるりを……アルバムとは別バージョンだとはじめて知った)




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Reiko Nobuto
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