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3日間 「誰でもない人」 になってしまった私。(パスポートとグリーンカードを海外旅行中に紛失)
2023年の12月の一週間(12月17日 - 12月23日)、義兄、夫と私の3人でオーストリア(欧州)に旅行しました。老人3人(それぞれ71歳、62歳、65歳)の旅です。3人とも米国テキサス州在住で、私は日本国籍を持ちながら、アメリカの永住権(グリーンカード)を取得し、アメリカに居住しています。
旅行中に私のパスポート、グリーンカード、そしてテキサスIDを含む全ての身分証が盗まれてしまいました。これから、パスポートとグリーンカードの再発行までの経緯を記したいと思います。
12月19日火曜日
オーストリアに到着して2日目の19日火曜日、ドイツとの国境に近い都市ザルツブルグでクリスマスマーケットを見物中、背負っていたナップサックから財布(現金30ユーロのみ。カードは別にしておいたので大丈夫でした。)、日本国パスポート、グリーンカード、テキサスIDを全て盗まれてしまい、身分を証明できるものが何もない、「誰でもない人」になってしまいました。
12月23日にフランクフルト経由でアメリカ行きの飛行機に乗る予定でしたが、わずか4日間でパスポートとグリーンカードの両方を再発行してもらえる可能性はほぼゼロでした。それにもかかわらず、クリスマスの奇跡が起こったのです。
丘の上の城砦ホーエンザルツブルク城の頂上から、ザルツブルク市街を一望する美しい景色の写真を撮っていた時、私の背後にいた観光客から「ナップサックのファスナーが全開になっているよ」と声をかけられ、全ての貴重品が盗難にあった事がわかりました。 クリスマスマーケットの人混みの中で、私が夢中になってクリスマス小物をあれこれ見ていた時に盗まれたようです。
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心臓が飛び出るかと思うほどの衝撃に襲われ、目の前が真っ暗になりました。
まさに「ここはどこ 私は誰」状態でした。森の動物なら動物として生きることが出来ますが、動物にさえなれない私。
証明書類の貴重品はナップサックの内側のファスナー付きポケットに入れていたのですが、そのファスナーまで開けられて盗まれました。
盗難がわかったのは午後4時半頃でした。ネットで在オーストリア日本大使館のサイトを探し、緊急時は電話で連絡するようにと書いてあったので、現場からすぐに電話をして担当官に指示を仰ぎました。
大使館閉館の20分前でした。
アメリカ在住であり、日本国パスポートとグリーンカードを盗まれたと報告したところ、パスポートの再発行には6ヶ月以内発行の”戸籍謄本の原本”とポリスレポートが必要だと言われ、さらに、戸籍謄本の取得請求についても教えてくれました。
戸籍謄本を請求できるのは本人、配偶者、および直系血族(祖父母、父母、子、孫など)に限られており、代理人が請求する場合は、本人である私が署名した委任状が必要になるとのことでした。
両親はすでに他界しており、弟が日本にいるものの、私自身の署名が入った委任状が必要だと知り、戸籍謄本を手元に入手するまでに少なくとも2週間はかかると考えると、途方に暮れるような絶望感に襲われました。
担当官から電話で簡単な説明を受けた後、翌日の朝一番に再度電話するように言われました。
**戸籍謄本の取得について(私の場合):2022年に運よく日本の行政書士とやりとりをしており、その際に作成した委任状があったため、盗難に遭った日の夜、ウィーン時間午前2時(日本時間20日午前9時)を待って、宿泊先のAirbnbから国際電話で行政書士に連絡しました。
事情を説明し、戸籍謄本の取得を依頼したところ、20日は予定があって難しいが、21日の午前中には市役所に出向いて取得できるとのことでした。取得したらまずはコピーをpdfファイルにしてe-mailで送ってもらい、原本はEMSでオーストリア滞在場所に郵送してもらうようお願いしました。その時点では、1月中旬ごろまでオーストリアに滞在する必要があると覚悟しており、ホテルの予約をしようと考えていました。**
さて、話を大使館担当官との電話通話に戻しますが、戸籍謄本の他には、ポリスレポートも必要なので、最寄りの警察署で発行してもらうように言われました。
ポリスレポートというのは、警察によって作成される報告書のことで、事件や事故、犯罪などの発生状況や詳細を記録した公式文書です。
ちょうどクリスマス前で、マーケットがあちこちで開かれており、観光客で賑わう時期だったため、幸いなことに多くの警官が警備にあたっていました。
夫がそのうちの一人に話しかけ、事情を説明し、ウィーン行きの列車まで数時間しかないことを告げると、その警官はすぐに警察署まで案内してくれました。
警察署での被害レポート作成は個室で行われ、ルールによりその空間に入れるのは被害者である私、報告書を作成する警察官、そして監視官の3人だけでした。やり取りは警官と一対一で進められ、最初に使用言語を選ぶ必要がありました。
ドイツ語か英語かと尋ねられたため、英語を選択しました。その他の言語を選ぶと通訳が必要となるため、その場でのレポート作成はできないとのことでした。
私が警官からの英語での質問に英語で答えると、警官はドイツ語でレポートを作成していました。
警察官の優秀さには感心させられました。テキパキとした動きながらも、温かく優しい対応をしてくれ、帰りの電車に間に合うように、驚くほど迅速にレポートを作成してくれました。 (余談ですが、その警察官は若いイケメンでした。絶望的な状況にもかかわらず、「イケメンだな」と感じる心の余裕を持っている自分に、思わず笑いがこみ上げてしまいました。)
ポリスレポートを特急で作成してもらったお陰でその日のうちに無事にウイーンの宿に到着しました。ザルツブルグからウイーンまでは列車で約3時間。午後11頃ウイーンに到着しました。
オーストリア時間の夜中過ぎに日本の行政書士と連絡をとり、コピーをpdfファイルにしてe-mailで送ってほしい、原本はEMSで私の滞在先に送ってくれるように頼みました。日本とオーストリアには時差が7時間あり日本が進んでいます。
次に、グリーンカード紛失の届出をするため在オーストリア米国大使館のサイトをオンラインでチェックしました。それによると電話は受け付けてくれず、まずe-mailで連絡をするように書いてありました。 すぐに読んでくれるのだろうか不安になりましたが、夫が「何事も指示に従うのがベスト」と言い、20日の早朝に夫が私の代わりに事情を説明するe-mailを送ってくれました。 なんと2時間後には返信があり、午後に面接をしてくれることになりました。
(緊急事態の内容にもよるとは思いますが、手順を踏まずに直接行くと入館させてくれないケースが多いようです。)
ここ大切👉 グリーンカードは、アメリカ永住者にとって永住権を証明する重要な許可証であると同時に、アメリカ国外に出た後の再入国を許可するための必須の入国証でもあります。旅行やビジネスなどでアメリカ国外に出る際、グリーンカードは単なる身分証明ではなく、"アメリカへの帰還を保証する鍵"となる存在です。
12月20日水曜日
前日日本領事館の担当官に言われた通り、20日水曜日の朝一番に電話し指示を仰ぐとともに、「21日の日本時間午前中に行政書士に戸籍謄本を取得してもらい、そのコピーをpdfファイルで送ってもらう予定です」と伝えました。メールが届き次第領事館にメールを転送し、そのファイルをプリントして持参する旨を説明すると、21日の朝一番で面接を行ってもらえることになりました。
戸籍謄本ファイルはメールが転送されたら領事館で印刷するので、持参しなくても大丈夫ですよ、と言って下さいました。
その日(20日)は午後2時にアメリカ大使館での面接があったため、向かいました。必要事項を記入する用紙(約3ページだったと記憶しています)を受け取り、指紋登録を行い、証明写真を撮り、(写真用ブースが領事館内にありました)、グリーンカード再発行の手続きを進めてもらうことになりました。
ここ大切👉ただし、実際には領事館でグリーンカードの再発行は行っておらず、
「Boarding Foil」という一時的な許可証を発行してくれます。このBoarding Foilは、アメリカ永住者が一時的にグリーンカードを紛失した際に、アメリカへの再入国を許可するもので、通常30日以内の有効期間があります。形状はカードではなく、ステッカーのようなもので、パスポートに貼り付けて使用します。
米国領事館の担当官に、日本国パスポートが発行され次第連絡をくれるように言われました。が、この時点では戸籍謄本の原本が届かない限りパスポートの新規発行はできないと日本領事館に言われていたので、かなり時間がかかりそうだと伝えました。
12月21日木曜日
午前9時に在オーストリア日本領事館にて面接があり、ポリスレポートと共に、パスポート紛失届(領事館で用意してくれた用紙に書き込みました)を提出し、戸籍謄本のコピーを提出しました。謄本コピーは、私が領事館に転送したpdfファイルを印刷してくれてあった物です。
紛失届には、紛失した時の状況を説明する欄がありました。記録と同時に、多分ポリスレポートの内容と私が書いた内容が一致しているかどうかを領事館がチェックするためでもあるようです。
必要書類をすべて提出した後、戸籍謄本のコピーで何とかパスポートを発行してもらえないか頼もうと一瞬考えましたが、指示に従うことに決め、謄本の原本がEMSで一週間ほどで届く予定であると伝えました。すると、担当官から
「今回は特別に、謄本のコピーでパスポートを発行します。明日(22日)お渡ししますので、写真を持参してください」と言われました。
あまりの驚きに、思わずひっくり返りそうになりました。
何度もお礼を言い、その足でアメリカ領事館に向かいました。前日受け取って宿で記入した3ページの書類を提出し、翌日パスポートを発行してもらえることを伝えると、担当官も一緒に喜んでくれました。そして、Boarding Foilも準備できると思うので、翌日22日の午後3時頃に来るように言われました。
12月22日金曜日
5年物の新規日本国パスポートを無事発行してもらい、アメリカ領事館でBording Foilをパスポートに貼り付けてもらい、無事にアメリカの自宅に帰ることができることになりました。
日本国パスポートを受領した時に泣いてしまったのですが、領事館の担当の方が「この紙ちょっと硬いのですが使ってください」と窓口から笑顔でティシューを差し出してくれました。
アメリカ領事館の方は、あなたが悪いんじゃなくて誰にでも起こりうることで、自分自身も経験があるので、どんなに絶望的になるかわかりますよと笑顔で言ってくれました。
さて、入国スタンプのないまっさらなパスポートでオーストリアから無事に出国できるか不安だったため、領事館で聞いてみました。すると
『何か質問されたら、ポリスレポートを提示し、パスポートが再発行されたことを説明してください』とアドバイスを受けました。
領事館はポリスレポートの原本を返却してくれましたが、この書類も米国への再入国の際には重要な公式文書で、大切に保管すべきものだと改めて認識しました。
ここ大切👉新規にパスポートを発行してもらった理由ですが、帰国のための渡航書という一度だけ使える臨時パスポートは日本へ帰国する人のみに発行されるので、在米邦人(グリーンカード保持者)の私は新規パスポートを発行してもらう必要があったのです。
まとめ
今回の海外旅行で学んだ事:海外旅行先で緊急事態が起こったら自分では判断せずに、外務省や在外公館のホームページの指示に従う事が解決への一番の近道だと学びました。(命に関わる事でなければ)
在外公館は、日本もアメリカも最良の解決をしようと頑張ってくれます。 今回ですが、最初は戸籍謄本の原本がないので、帰りのフライトに間に合わないかもしれないですよ、と領事館担当者に告げられました。
盗難現場から電話した時に、なんとかなりますでしょうか?と一度だけ聞いてみたのですが「(上司と)相談しますが、なんとも言えません」と言われました。
その後は、こちらからは何もお願いせず、必要書類に関しての質問のみをして、ひたすら領事館の指示通りに動きました。
大使館や領事館には厳格なルールがあるため、自分の都合に合わせた対応を期待しない方が良いと思います。今回はクリスマスや年末年始が近かったこともあり、特別に柔軟な対応をしていただけました。
外国での緊急事態に慌てるなと言っても難しいですが、とにかく在外公館や外務省のホームページに従ってください。
SNSなどで意見を聞いても、余計に混乱するだけだと思います。 帰路の飛行機の中で身分証明書類を盗まれた話をXに投稿したのですが、中には無責任な事を言う人もいました。一例ですが、「パスポートを発行してもらったら、グリーンカードがなくても観光で入国すればいいのでは?」とアドバイスをくれた人がいました。
追記:
**盗難にあった日本パスポート番号は夫が控えておいてくれたました(ありがたい)。グリーンカードの番号は全く覚えてなかったので(情けない私)留守中鍵を預けてある友人に連絡し、家に入ってもらい期限切れのカード(捨てずに保管してある)の写真を撮ってショートメールで送ってもらいました。(グリーンカード番号は変わらないので)
後で分かったのですが、米国領事館が私の名前をデータベースを検索してくれており、すでにグリーンカードの番号をわかっていました。
**後に在オーストリア日本領事館の職員の方から伺ったのですが、最近オーストリアではスリが急増しており、特にCovid後に劇的に増加しているとのことでした。
オーストリア在住の知人とともにHotel Imperial Viennaで深夜に軽食を楽しんでいた際、コートラックにかけていた彼のコートが丸ごと盗まれるという事件が起きました。 高級ホテルで、しかも地元の人でさえ盗難に遭うとは驚きでした。彼のポケットには家の鍵やクレジットカードが入っていたそうです。
**日本国パスポート5年物は79ユーロ、臨時アメリカ入国許可証(Bording Foil)は$475でした。
**考えれば考えるほど、奇跡としか思えません。関わってくださった人たちが皆、何とかクリスマスまでにアメリカに私が戻れるように動いてくださりそして励ましてくれました。おかげで、無事アメリカに入国し、感謝に満ちたクリスマスになりました。
**この旅は全てが崖っぷちギリギリでしたが、帰路のフライトの乗り換え時間がたったの45分。乗り換えゲート付近まで走り続けて来たのに、「入念に身体チェックされる人」(ランダムに選ばれるやつ)に選ばれてしまいました。急いでいるのに。でも搭乗開始5分前にゲートに到着することができました!
**今回の奇跡の一つは、宿(エアビー)がアメリカ領事館と日本領事館までドアツードアで20分ほどで行ける場所だったこと。また、ウイーンの地下鉄のオペレーションが優れており、どの線も2分間隔で24時間。また、線の名前が全て数字なので、わかりやすい。
また、改札ゲートがなく、基本的に人間の「善」を信用したサービス。オンラインでチケットをあらかじめ数日分購入すればQRコードを送ってくれるので移動がスムーズでした。たまに、チケットをちゃんと購入しているかどうかを確認する人が立っていて、購入していない人は罰金を払うシステムでした。
後日談:
年が明けて2024年の1月になって間もなくの事です。在ウイーン日本領事館から、e-mailが届きました。
新年明けましておめでとうございます。本日、ザルツブルク市役所より、⚪︎⚪︎様のものとおもわれる以下の書類が届きましたのでご報告いたします。
日本旅券
アメリカグリーンカード
テキサス州身分証明書
搭乗券
レシート
ご希望であれば上記をアメリカのご自宅宛てに郵送(残念ながら、普通郵便のみとなります。旅券は穴をあけて失効処理いたします。)いたしますので、ご希望される場合はあて先をお知らせくださいますよう、よろしくお願いいたします。
在オーストリア日本大使館領事部
一瞬にして『誰でもない人』となってしまった私が、奇跡的に3日でパスポートとBording Foilを発行してもらえただけでなく、紛失したものまでもが見つかり、手元に戻ってきたのです。これは、きっと天使が関わっているに違いありません。まさにクリスマスの奇跡だと思わずにはいられません。
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