もっと気軽に政治の話をしたい!(まちの不思議 おもしろ探究日記 #2
「政治と宗教と野球の話はするな。」
誰が言い出したかもわからないこの言葉だが、地域で活動していると、しばしば出会うことがある。
自分たちの日々の暮らしと政治がつながっていることは多くの人が知っているはずなのに、突然政治の話をすると煙たがられる。
これもまちの不思議の1つである。
7月10日には参議院議員選挙があった。
この文章を書いているのはちょうどその選挙期間中で、私は「国分寺の投票率を1位にプロジェクト」で、まちなかを奔走している最中である。
投票率が1位になったら、まちはどう変わるのだろう?ということをテーマに、社会実験的に取り組んでいるこのプロジェクトだが、その根底には「もっとまちなかで気軽に政治の話をできるようにしていきたい」という思いがある。
様々なメディアが行っている選挙に関する意識調査でも、「もっと気軽に政治の話をできる場が欲しい」という回答がいつも出てくる。
タブーだと言われながらも、本当はみんな政治の話をしたいと思っている。そして、選挙期間というのは、その政治の話をするのに、一番適したタイミングなのである。
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このプロジェクトを始めるようになる前、私は仲間たちと「気軽に政治の話をできる場」というのをオンラインで開催していた。
フリーテーマで開催する回、テーマを決めて開催する回など様々なやり方を模索し、「まさにこういった場が欲しいと思っていた」という方が次々に参加してくれ、一定の盛り上がりをみせた。
しかし、回を重ねる中で、「こういった場に参加する人とは話ができるけど、その外側にいる人とはなかなか話せない。」という壁にぶつかった。
さらには、政治については、家族や友人といった身近な人ほど話をしにくい、という声も多く寄せられた。
この壁をどうにか打ち破れないかと、「まず自分たちが楽しんで政治に関わっている姿を見せていこう」とやってきた。
その結果、なんだかよくわからないけれど楽しそうだから、と活動に興味を持ってくれる方も増えていった。
そういった中で楽しんでやるという事に加えて、「自分が欲しい情報を、自分で取りに行って、自分の言葉で発信する」「政治につながる刺激を日常の中にしれっと入れ込む」というあたりが、外側にいる人を巻き込んでいく力があるということがわかってきた。
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そういった思いで取り組んでいる1つが、自分たちで企画し行う候補者インタビューだ。
自分だったら候補者に何を聞いてみたいのか、ワークショップを開いて考えていく中で、政策よりも候補者の人となりを知りたいという声が多くあがった。
そこで、「守りたい日常は何ですか?」「自分のことをどんな性格だと思っていますか?」といった自分たちの言葉で表現した質問をしている様子をYouTubeで発信したところ、「初めて政治家を身近に感じて、普段政治の話をしない友だちにも紹介できた」「この動画をもとに、初めて家族と政治家について話をした」といった声が寄せられるようになった。
政治の話をするというのは、何も難しい話をしないといけないわけではない。
それなのに、つい私たちは、政治のことを詳しく知っていないと発言してはいけない、政治家に話しかけてはいけないと思ってしまう。
インタビュー動画の中で、候補者の人に焦点をあてて、自分なりの視点で話をする姿を見せていくことで、自分も気軽に政治の話をしてもいいのだと思ってもらえるきっかけとなっているのではないだろうか。
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もう1つの取り組みは、漫画選挙やお菓子選挙といった、子どもから大人まで誰でも楽しく参加できる選挙だ。
「毎月10日は選挙の日」ということで、まちなかでやっている企画で、オンラインとリアルの両方で投票を受け付けている。
今回は、参議院議員選挙が近いこともあって、選挙区方式と比例方式の二通りの投票方法を実施することにした。
その結果、たくさんの候補から1つを選ぶことの難しさや、死票といった課題にも気づくきっかけとなっていて、また、線引きがあいまいなジャンル(=党)を導入したことで、個人を応援するのか、党として応援するのか、といった政党政治との付き合い方などの気付きも得られるようになっている。
実際に参加した方からも、「一人ひとりの投票への視点の違いを、家族全員で話すことができた」「楽しみながらも、お菓子の党の話を実際の状況に当てはめてみることで、政治の話を友人と楽しくできた」という声も寄せられた。
「政治について気軽に話せる場がほしい」といった時に、実際にそういった場をつくることも大事である。
その一方で、一人一人が周りにいる人たちと気軽に政治について話せるきっかけを、日々の暮らしの中にどうつくっていくのか、といった視点もとても大切である。
こうやって楽しみながら様々に取り組んでいった先に、まちの投票率が上がり、政治の話がタブーではなくなる日が来たらいいなと思いながら、私は今日もまちを探究している。
▼ 雑誌『社会教育』