選挙のたびにまちがバージョンアップする
少し前のことになってしまいましたが、7月4日に国分寺市では3つの選挙がありました。
これまで、市政はおもしろいとか、選挙はお祭りだなんだと騒いで記事を書いてきた私ですが、この1年でそんな私の思いも広がり、今回の選挙ははちまるカレッジの仲間を中心に、プロジェクトを立ち上げてみんなで盛り上げていくことになりました。
市民の意識が高いから投票率が上がるのか、投票率が高いから市民の意識が上がるのか。この後者に注目し、あえて投票率1位を目指してみることを中心においてみようということで始まったプロジェクト。
当初は、屋台を出してまちなかで対話の場をつくろうとか、毎晩対話の場を開いていこうとか、いろんな人の意見を集めたレビューサイトをつくろうとか、市内のあちこちにポスターを集めて目立とうとか、そんな予定で動き始めましたが、プロジェクトが始まってから発生した、(個人的に)大きな出来事がいくつもあり、最終的にはずいぶん違う形になりました。
(出来事1)直前になって候補者がわいてきた!!
プロジェクトの立ち上げが決まった時点では、市長選挙には現市長しか立候補を表明しておらず、市議会議員補欠選挙も2枠に対して立候補を予定しているのが3名という状況でした。
それもあって、立ち上げの段階で、今回の選挙は正直おもしろがりポイントが少ないね…なんて言っていたのですが、選挙直前になって状況が変わりました。
まずは、市長候補。
現職市長に加えて、市の職員として子育て分野を中心に活躍された女性の方が候補者として立つことになりました。現職市長とは政策の進め方や得意分野が明らかに正反対の候補者に、対立軸のわかりやすい選挙になる!と興奮。ほぼほぼ現職市長で決まりだと言われていた市長選挙が、おもしろいことになりました!
そして、市議会議員選挙補欠選挙。
こちらも、現職(都議選に立候補するために辞職された方々)の組織基盤を引き継いで出る方々に加え、直前になって共産党の方と無所属の方が立候補を表明されました。
これまた有権者にとって選択肢が増える楽しい状況になりました!
盛り上がらないと思っていても、やっぱり盛り上がるのが選挙なんだなぁと改めて実感しました。
少し話は聞いてたけれど、普段から市の政治に関わってるような人たちが、対立候補をどう立てるのかということに一生懸命に取り組んでいて、その結果直前になると対立候補がわいてきて、ちゃんと選挙になるという。
一方で、お隣の小平市の東京都議会議員選挙は立候補者が定員と同数で無投票当選となったという事実もありました。
それは、まだまだ立候補者を立てるということ自体が身近なものではなくて、実際に政治に関わっている議員さんやその支援者さんたち、ある意味プロの方々による仕掛けでしかないという現状も背景にあるのかなとも思います。
このあたりのあり方が変わってこないと、なかなか本当に面白い状況にはならない。そういう意味で、もっと普通の市民発で立候補者を立てるみたいなことをたくさん起こしていけたら面白いのかな~とも思いました。
(出来事2)市長選の討論会ポスターにざわついて、公開討論会を企画!
市長候補が立ち、どのように市長候補を比較していこうか、市政レビューを書いたり集めたりってのがいいのかな、なんて思っていたところ、「青年会議所が討論会やるみたいですよ。ちょっとポスターはアレなんですけど」と、ネットで大炎上するよりもずっと前の段階で情報をいただきました。
見た瞬間、固まりまして。
これは炎上案件マーケティング?
というわけでもなさそう?マジ?え?これは何だ?
ポスターがこれだということにはモヤモヤしかないし、このポスター1枚で今の社会課題を延々と挙げ続けられると思うけど、、、
でも、討論会自体はぜひやってほしいし、個人的には炎上をさせたいわけではない。
モヤモヤはするけど、討論会は盛り上げたい。ただ、これは私が扱ったらどうやっても炎上する…どうしようか…でも知った以上、触れないでいるのも無理だしな…
と、いろいろ思ったのですが、どうやら討論会用の質問を募集していて、そうやって一緒に質問をつくっていけることは素晴らしいことだなというのもあり、Facebookで質問回答用のURLを紹介しつつ、シェアしました。
最後に「ざわついてます。」とだけ載せて。
でもまぁ、結果的にプチ炎上してしまいまして。
コメント70件。シェアもグングンと拡がりました。
いや、ごめんやで…
そんなに気になるなら直接話してみたら?とも言われましたが、確かに気にはなるけど、私としては炎上させたかったというよりは、むしろ質問集めて討論会をやるというスタンスを応援したい部分も大きく、炎上してること(ポスターの内容云々)について話したいとはあまり思えずにいました。
そしたら、コメントをしてくれてた方が、画像の意図について代わりに質問してくださり、これは若い方と一緒に企画していきたいと大真面目に取り組んだ結果であるということも分かりました。
(というあたりでいったんプチ炎上もおさまったんですけどね。最終的には選挙期間中に東京新聞に取り上げられて大炎上となり。……それは私のせいか?……いや、どうだろうか………)
という中で、私はどうしたいんだろう?と。
このポスターについて責めたいわけではない。違和感はあるけど。ただ、公開討論会をみんなでつくっていけるのはよさそう。でも、私はどうにも、このポスターを採用する人の視点に共感が持てない。
じゃあどうする?私には何ができる?
一晩じっくりと考えた結果、「独自に私たちの視点で公開討論会を企画しよう。」そう思いました。
だって、よくよく考えてみたら、そもそも公開討論会を企画しちゃいけないなんてことはなくて。青年会議所しかできないなんてこともなくて。やりたかったらみんなやればいいわけで。
なんとなく、誰かがやってくれるものだと思っていて、それを見てやいのやいのするものだと思ってたけど、そんなことはない。作っちゃえばいいだけのことじゃないかと。
都知事選だって、いろんなネット討論会があって、それをいろいろ見るのが楽しかった。だから、市長選挙だっていろいろあっていいはず!
ただ、同じような視点のものが何個もあっても仕方ないし、私たちは私たちでそれまでやってきた政治に関する学びの場や対話の場の積み重ねがあるので、それをもとに質問をつくってぶつけていくという形でまとめていくことにしました。
この「新しい選択肢をつくる」という動きには、ものすごくたくさんの方が同調して下さり、応援の声がたくさん届きました。何人もの人が手伝うよと言ってくれて、企画書も何度もチェックしてもらい、一緒に考えてもらいました。
やるべきことは、非難することではなく、自分たちで新しい選択肢をつくっていくということ。
私なりに、納得がいかないことへの新しい戦い方を見つけた瞬間でもありました。
(出来事3)討論会ができないので、私たちの声を届けるラジオをスタート!
というわけで私たちなりの公開討論会の実現に向けて動き出したのですが、結論としては現職市長に、公務の忙しさを理由に断られてしまい。
これは、青年会議所主催の方の公開討論会も同様で、結局国分寺の市長選挙は公開討論会や質問状への回答が一切行われないということになってしまいました。
これには私たちも意気消沈。
市民によるレビューを集めるのを本格的に動き出そうかとかいろいろ考えていたのですが、なかなか簡単には進まない。
何ができるんだろう~とウンウン唸っていたら、お世話になってる方から「本人たちの話がきけないなら、むしろ、すわさんたちが勝手に、候補者のことを分析して語るような番組があってもいいんじゃない?」と。
それですよね。
もうね。この1年の学びを通して、いやなんなら市政ウォッチャーとして3年の日々を通して、言いたいことが山ほどあるわけです。でも、いろんな企画が頓挫していく中で、なんとなく私たちの言論が封じられている感じもあり、それが地味にしんどくなってきてもいました。
一方で、選挙期間が近づくにつれて、「すわさんの話を聞かせてほしい」という依頼があちこちから飛んでくる。それは、一緒にプロジェクトをやってたひろっきーも同じ状況で、それならもううちらが発信していっちゃおうよ!!ということで、二人でラジオを始めることになりました!
基本的には私たちの雑談。私たちが話したいことを話すだけ。
なので、政治的中立は存在しない。ただできるだけ、人としてフェアであろうとはがんばる。というか、そもそもこうやって意見を言う人がまちの中にたくさんいれば、私たちが話してることの偏りなんて、大して問題にもならないはず。
だから、みんな思うことがあれば、ぜひそれぞれで意見を言ってほしい!
というスタンスで、選挙の楽しみ方って?そもそも国分寺のまちってどんなまち?市長ってどんな仕事?もし市長になったら?候補者とはどうやって出会う?候補者の見方・選び方は?なんて話を選挙期間中毎晩しゃべり通しました!たくさんゲストも来てくれて、最終日は開票所近くから中継も!
日を追うごとに、見てくれる人が増えて、「ラジオ見てるよ!!」という声もたくさん届くようになりました。そして、ラジオを元に家族や友人と選挙の話をできた!という声も。嬉しい限りです!!
もちろん、公の場で意見を出してくれる人が増えたらいいなとは思うけど、その前にまずは身近な人としっかり話すということ。それもとっても大切なことです。
そして、次の選挙の時には、ぐる国ラジオのようなメディアが増えて、まちのあちこちでいろんな人の意見が聞けるようになってたらいいなと思います。やってみたい方はぜひ!
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ということで、選挙を盛り上げていくために、様々なことにチャレンジした日々を過ごしていました。めっちゃ楽しかったー!
そして、終わってから(途中にも)たくさんの質問をいただき、それがふりかえりとなり、また学びを深めてくれました。
Q.なんでそんなに楽しそうなの?
特に、ぐる国ラジオを始めてからは、めっちゃ楽しそうだね~と言われ続けました。実際めっちゃ楽しかったんですよね。
なんでだろう。自分たちのまちのことを、自分たちで関わってるという感覚。しかも、機会がないならつくればいいじゃんという感覚。そして、実際につくってみたら、一緒に楽しんでくれる人がたくさんいるという状況。
既存の仕組みの中でそれを消費して、少ない選択肢の中で選ばされるみたいな感覚だと確かに楽しくないかもしれない。
でも、そこに自分なりに新しい関わり方をつくっていけるなら。
こんなに楽しいことって、なかなかない。公職選挙法に縛られる部分はあるけれど、今はネット選挙が解禁になった分、ネット上ではまだまだ楽しめる領域がたくさんあるんじゃないかなと実感しています。
Q.親しい候補者もいる中で活動をやる難しさはどうだった?
実は、今回の選挙の中で推薦人になりませんか?というお声がけを何回かいただきました。
市議会議員選挙の候補者は普段から一緒に活動してる仲間だったし、市長選挙の対立候補として立った方も、普段から仲良くしてる方の知り合いでもあり、そういう意味で近しい関係の候補者が複数いる選挙でもありました。
推薦人として名前を出すかどうかはとても悩んだポイントで、選挙管理委員会にも問い合わせたりもしました。
推薦人として私の名前を出すことで、誰かの心は動くかもしれない。けれど、投票率を上げるプロジェクト自体の見られ方が変わってしまう可能性があるということ。そして、何かを言われるとしたら選挙後で、それは基本的に"見え方"が争点になる、ということも教えてもらいました。
プロジェクトをやる上でそもそも中立はないと明示しているけれど、それでも、見え方という基準があいまいなものを相手にすると、やっぱり動きを気にする部分が出てきそうだということもあり、今回の選挙においては推薦人として名前を出すことはすべてお断りしました。
ただその過程で、私は何のためにこういった活動をしているのか、ということも改めてじっくり考えました。
それは、現在の社会のあり方にどうしても納得がいかない部分があるということ。その仕組みづくりの部分に、どうにか関わりたい。そして、そのための意思表示をしていきたいということ。
もちろん選挙はこのまちの政治家の話だけど、目の前の候補者がどうということだけではなくて、もっともっと大きな目的のために活動をしているということも思い出しました。
応援したい候補者を応援することは直接できなくても、私は私で同じ意思を持って活動をしていくこと。それは推薦人として名前を出すことよりも、もっと強く同じベクトルに向かうことであり、それが「市民」として舞台に立つという事なんじゃないかとも思うようになりました。
実際、ラジオというメディアを毎日やり続けたことで、候補者と同じような"意思表示"の舞台に、毎日立っているような感覚があり、最終日には選挙期間を走り切ったーというような感じでもありました。
結局は、親しい候補者がいるかどうかが問題ではなくて、どこの位置から何を言うのか、ということでしかなくて、自分が心地いい立ち位置に立って、自分の意見をしっかりと表明しているということが、何よりも一番大切なのかなと思っています。
そして、それができる場所を、自分でつくっていく。
それだけのことかなとも思うようになりました。
Q.いつ立候補するの?
選挙期間中、本当に2日に1回は言われ続けました。今でもしょっちゅう言われます。本当に言われ続けるので、なんなんだろうと時々じっくり考えたりもしますが、今のところは立候補の意思はあまりありません。
というか、次男が持つ特性と育つ環境を考えた時に、今はフルタイム的な動きが求められる仕事を引き受ける状況にないという感じでもあります。
ただ、市民としてできることはやっていきたい。それはこれからも変わりません。
今の社会の仕組みの中では、どうしても生きていくのが苦しい人がいる。たくさんいる。
そこに光をあて風を送り続けることで、少しでも生きやすくなるように、そして、できることなら仕組みも変えていきたい。
それができるなら、そこに関われる私なりのアプローチが取れるなら、引き受ける役割は何でもいいのかなとも思っています。
その時に政治家と言う選択肢がいいなと思う時が来るかもしれないけれど、とりあえず現状の政治家の方々の働き方を見ていると、なかなか現実的には難しいなというのが感じている部分でもあります。政治家という仕事にも職業文化があり、協働の世界も展開されてますし。
もしその政治の世界の仕事のあり方が変わって、私のような生き方でもその役割を引き受けることができる社会になったならば、その時は私もと思わなくもないですが、きっとその時には私よりももっと優秀で向いている方が出てくるんじゃないかなと、それも結構本気で思っています。
私は、今の私だからこそできることを大切に、そこで戦い抜いていきたいし、その中で新しい選択肢をつくっていくというチャレンジをやっていきたい。そして、そこを面白がってくれる人たちと一緒に、風を送り込み続けていきたいというのが、とりあえずの今の答えです。
Q.この期間で一番学んだことは?
本当に、日々日々政治に関わるいろんな利害団体のアレコレや、選挙にかける人々の思い、そしてそのために普段から動いている人たちの思いなど、そんなアレコレにがっつりと触れさせてもらう機会で、それ自体もとっても大きな学びでもありました。
ただ、それ以上に、この選挙期間という期間が社会の中にあるということの意味を考えたのが一番の学びだったように思います。
以前選挙をお手伝いをした政治家の方が、「選挙期間は、政治についておおっぴらに話せる期間で、政治家にとっては市民の方と触れ合える幸せな時間だ」とおっしゃっていました。たしかに、政治について話す場を作っていく中で、選挙期間が持つ力はとても大きいなと実感しています。
普通のママ友に「実は今、ちょっと選挙のことで動いてて」と言えたりする。そこから話が広がる。普通に政治の話をできたりする。他にも、政治の話をする場を、選挙を言い訳に堂々と作れたりもします。
そして、プロジェクトをやっている中で、「投票だけが選挙じゃない」というキーワードが何度も出てきました。
選挙期間を通して、「候補者と話す」「関係性をつくる」「候補者を育てる」「市民が育つ」「まちのことを考える」「自分の考えを表明する」「対話をする」「意見の違いを乗り越える」そんなことが、どんどんとできたりする。
選挙のたびにまちがバージョンアップしていける。
そんなまちにしていくことができたら、きっと投票率がどうかなんてことはどうでもよくて、みんなでまちをつくってまちを楽しんでいく事が出来るようになるんじゃないのかなと思っています。
その可能性に気が付くことができたのが、今回一番大きく学んだことでした。
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選挙が終わって1ヶ月半がたち、コロナの状況も悪化していく中で、オリンピックが開催され、社会では驚くようなスピードで分断が進んでいるように感じます。
そんな中、私にできることは何があるんだろうと悲しくなったりもしますが、それでも私が今回の選挙で挑戦してきたことは、その分断を乗り越えるような対話を生み出すものでもあったと思っています。
嘆いてばかりいても仕方ないので。
これからも、私なりに新しい選択肢をつくるという挑戦を、楽しみながらしていきたいと思っています。