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価値観のアップデート 2021

先日のNHKスペシャル「どう考える?東京オリンピック・パラリンピック」があまりに酷かったと友人たちから聞いたので録画を見た。開催の有無についてどうということの議論も相当荒唐無稽なやりとりだったのだが…。やはり一番のハイライトは、増田明美さんが、件のオリンピックの演出アイディアブレスト問題を「告げ口きらーい」と発言していたシーンだった。渡辺直美さんのコメントや配信の後で、まだこんなことを言ってる人がいるのか…と驚愕した。番組では、慌てて司会者が話を変えていたが時、既に遅し。世間の反応は大荒れしている。(ちなみに有森さんの発言はどれも素晴らしかった)
 
実は私の周囲にも、この方のような会話を繰り広げている人たちがいる。

「あれはブレスト段階で漏洩が一番の問題、過去の彼女の芸風にも豚はあったし彼女本人は気にしていない、こんな風にアイディア段階の話でなんでもNGだというのは表現の幅を狭める」といったような論調は、なんと渡辺さん本人が動画を出した後でも続いている。

この繰り広げられている議論、そのものが大前提として圧倒的に世界とずれていることにお気づきだろうか。渡辺さんがご本人が配信でもはっきりとおっしゃっていた通り、もう「体型をいじる(今回の場合、動物に例えることによって)」ということ自体が、異常な時代遅れなのである。まさしく渡辺さんは「(時代を)戻された気がした」と、表現していた。彼女の配信の中で「私のことを見て欲しい」という言葉が、なぜ何度も何度も、彼女から発されているのかは、渡辺さんがこの数年で活躍の場を広げ、輝いていることを追いかけていれば、その理由は明らかだ。

発言された方だけではなく、番組内の増田さんがそうであったように、この価値観のアップデートのなさについては、性別または年齢も関係ない。高齢男性に限らず若い女性にも問題を認識していない人を、たくさん見つけた。完全に国際社会から置いてきぼりな人で日本は溢れている。

以前、世界一のエンタメ企業の方に企画会議のNG事項を伺ったことがある。正直発言のNG事項に当たるものは、私の想定より遥かに多かった。国籍、宗教、肌や目の色、体型、ジェンダー、その項目は多岐に渡る。日本企業でしか働いたことがない私は当時相当驚いたが、それほどに大きなダイバーシティーの中で仕事をすることに、気を遣わなければならないのだと知った。気を遣い表現が狭まって困るようなアイディアならたいしたことないから出さないで結構だ。

本件、インナーのブレストだったから良いのではなく、公的社会的な仕事(しかもオリンピックの)のブレストだからこそ、国際社会に向けて恥じる問題になっている。ブレストが何を言ってもいい自由な表現の場所ではないことは、先程の企業の規定を知れば明らか。案として不採用だからオッケーで済むと思ってるのは、もうこの国だけなのではないだろうか、とすら思わされた。

いみじくも、日本はオリンピックをコロナという世界の異常事態の中で開催することとなったことにより、国際社会の目に晒され、自浄と価値観のアップデートを迫られている。この2021で日本人は国際社会に向けその変化を示せるのだろうか。


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