見出し画像

染色体異常のない受精卵移植から現在まで。

 新型肺炎コロナウィルスの感染状況も少し落ち着いてきたので、あまり先延ばしにもできないし、そろそろ治療を再開しようと2020年6月に通院を再開しました。

染色体異常のないの胚移植

 前回の不妊治療日記に着床前胚染色体の検査をした結果、染色体異常のない卵が残り2つというところまで書きました。そのうち1つを移植することになりました。流産の原因だったかもしれない免疫を抑える薬も飲んで、卵にも問題はない。これだけの条件を整えれば、きっと妊娠できるはず。祈るような気持ちで移植に挑みました。

7月末、妊娠判定日。先生に差し出された紙には「妊娠おめでとうございます。妊娠5週0日。出産予定日は2021/3/29です」と書かれていました。やっと、やっと、4年の歳月をかけて妊娠できた。染色体異常もない卵だから、流産の確率も高くないはず。

ところが・・・その妊娠は子宮外妊娠だったのです。

このnoteに不妊治療について書くきっかけとなった出来事でした。私の不妊治療日記を全て読んでくださった方には、これまでの道のりを思うと、この子宮外妊娠がどれだけ辛いものだったか、察していただけると思います。

妊娠・出産は当たり前のもじゃない。

きっと子宮外妊娠の見出しだけ読んで勘違いされたのだと思いますがSNSで「妊娠おめでとうございます」といった内容のメールをいただきました。子宮外妊娠は、妊娠の継続はできません。手術で卵管ごと赤ちゃんも切除しなくてはなりません。勘違いされている方がいたら、上記にもリンクを貼っている子宮外妊娠についての記事を読んでいただけると幸いです。


最後の1個の受精卵の移植と最新の医療技術

とうとう染色体異常もなかった私の卵は残り1個になってしまいました。この卵をいつ移植するのか?少し休みたい気持ちもありましたが、受精卵を冷凍保存しておくのにもお金がかかるのです。年間数万円。その更新日も迫っていました。子宮外妊娠の術後の検診でも問題がなかったので、1か月だけ休んで、すぐに移植をすることに決めました。

そして今回から、また新たな不妊治療ができるようになったそう。なんでも受精卵が着床しやすくなるよう、子宮内に培養液を注入するものなんだとか。胚移植の2日ほど前に、移植と同じ要領で管を挿入し、培養液を注ぎます。費用は2万円程度。どれだけ効果が期待できるかわかりませんが、着床の確率が上がるなら、どうせこれが最後の卵だから、とその治療も取り入れることにしました。

ところが、これがめちゃくちゃ痛かった・・・。目をつぶって、ゆっくり深呼吸。悲鳴はあげないけれど、腰の方までズン!とした痛みが広がります。痛いなんて聞いてないよ~。

医師に「痛いよね?これね、陣痛と同じ傷みです。」って言われてひっくり返りそうになりました。まさか、こんなタイミングで陣痛を味わうとは・・・。この治療で、良い結果が出ますように。

もう採卵から頑張れないと思う、もう不妊治療を続けたくないと、夫には以前から話していました。これが最後。どうか上手くいきますように。空に帰ってしまった赤ちゃん、どうか上手に滑り台を降りてきて、お腹の中にやってきて。

移植から10日後の妊娠検査の結果は・・・HCG3.35。HCG5で着床とみなされるので、投薬は打ち切り。妊娠不成立です。私の妊活は終わった、と目の前が真っ暗になりました。


医師の説得

妊娠不成立を告げられた後、医師に「今後どうしますか?ご主人は何て言ってますか?」と聞かれました。

「主人はもう辞めてもいいいいと言ってはいますが、まだ子供は欲しいはずです。でも、私はもうこれ以上頑張れません」と、涙を堪えきれずに素直な気持ちを告げました。これで私の妊活も終わるとばかり思っていました。

「山口さんは、まだ良い卵も採れるから、正直勿体ない。あなたと同じように何度頑張っても上手くいかない人もたくさんいるし、そもそも採卵しても卵が採れない、受精卵の染色体検査をしたら、一つも卵が残らない人だっている。そう考えると、山口さんにはまだ可能性があるのよ。これだけ頑張っている人に、私が頑張れって言っちゃいけないんだけど。移植は心が元気な時にいつでもできるけど、採卵だけは1か月でも若いうちの方がいい。歳を取るほど卵の質が悪くなることだけは確実にわかっていることだから、もし少しでもここで止めて、後悔する可能性があるのなら、採卵だけでももう一回頑張っておいたら?」

と、もうひと頑張りすることを勧められたのです。思ってもみないことでした。医師の言う事はごもっともだし、自分でもわかっていることでした。ここで辞めるつもりだったのに、気持ちが揺れてしまいました。いや、もしかしたら、私のゆらぎを感じて、背中を押そうとしてくれたのかもしれません。それでもその場では決心が出来ず、一度帰宅して考えることにしました。

決断

家に帰って、とことん悩みました。

治療を辞めたい理由
・精神的・身体的に辛い日々から、そろそろ解放されたい。
・経済的にも大変すぎる。
・健やかな日々を送りたい。
・もう止めても後悔しないと思えるくらい私は頑張った(と思う。)
・年齢を考えると、もし出産できたとしても、その先育てていくことに不安がある。
・甥っ子を育ててみて思った以上に体力を使うので、また同じことを繰り返すと思うとゾッとする。

治療を続ける理由
・夫を父親にしてあげたい
・親を喜ばせたい
・医師の勧め
・子宮外妊娠した時に、空の上で何度も私たちの子供になりたくてトライしているのに失敗している赤ちゃんがいるなら、もうひと頑張りしなくては、と思ったから。

これらを天秤にかけても、治療を止めたい方が比重が重かった。

夫に「やっぱりまだ子供欲しいよね?」と聞いてみました。すると「欲しいけど、玲香が決めて良いよ。心が壊れるくらいならやめてくれ」と言われました。私のメンタルが限界にきていることは夫もわかってくれている。けれど、やっぱりまだ欲しいんだよね。そうだよね。決定権を委ねられると正直辛かった。だって私の選択肢はもう「止める」しかないのです。だからこそ、私が決めて良いと言われると、矛盾しているようですが、そこで益々悩みました。いや、悩まなくてはならなくなったと言った方がしっくりきます。

さらに一晩、悩みました。そこで出した決断です。

「これが本当に最後。あと一回だけ採卵から頑張る。だけど、それでもしダメだったら、私に決断を委ねないで『もう、やめよう』ってあなたから言って欲しい。」

涙ながらに夫にこう話ました。この約束を交わしてからじゃないと、終わりのない不妊治療に終わりを迎えられないから。不妊治療は、ダメだった場合、いつまで続けるのか終わりを決めて取り組んだ方がいい、とよく言います。子供が欲しい気持ちも、治療が辛いのも平行線ですから、通帳の残高が許す限りエンドレスで続けてしまうものなのかもしれません。不妊治療は止め時を決めることがまた難しい。ゴールは出産なのか、二人で生きていく道なのかも、やはり夫婦で決めてなくてはならないのです。

どれだけ子供が欲しくても、治療を続ける気力があっても、治療を続けられない理由が経済的な理由というのも、本当に悔しいものです。ですから菅総理の不妊治療の保険適用は、どれだけの夫婦のサポートになるか計り知れません。どうか速やかに進めて欲しい。それと同時に男女とも加齢によって妊娠が難しくなるという現実を、もっと世の中に知ってもらうべきなのです。妊娠・避妊だけでなく、不妊のリスクについても子供のころから当たり前の事ととして性教育をする社会になって欲しい。仕事と不妊治療が両立できる企業の体制を整えて欲しい。そのためには管理職をはじめ、もっと社会に不妊治療が理解されなければなりません。

その想いで、この不妊治療日記を赤裸々に書いています。不妊治療について知りたい、知るべきだと感じてくださった行政、企業、学校、団体などの方がいたら、いつでもお声かけください。講演に伺います。私の経験を無駄にはしたくないのです。少しでも社会に貢献できれば、流した涙の意味があります。

ハイヒール・リンゴさんも教育について同じようなことをおっしゃっていました。


子宮外妊娠をきっかけに、過去の不妊治療を振り返りながら書き続けてきて、ようやく2020年10月まで追いつきました。この不妊治療日記もここまで、と思っていましたが「もう一回だけ採卵から頑張る」と決めて、実は先日、久々の採卵にトライしました。また新たな治療や気付きもありました。なので、もう少しだけリアルタイムの不妊治療日記を続けていこうと思います。


よろしければサポートお願いします。甥っ子と美味しいデザートでも食べてコミュニケーションをとる費用に使わせていただきます。