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彼とランチを食べて添い寝をした土曜日のこと

 土曜日の午前中に彼の家から近い駅で用事があったので、私は彼をランチに誘った。
 彼はその日は土曜出勤だけど午後休にしているとのことだったので、私は昼すぎまで時間をつぶし、仕事終わりの彼と会ったのは13時半ごろ、お店の前で。

 彼が行きたいと言った、スープカレーのお店。彼からお店の希望があるのは珍しい。友達からおすすめって聞いて、行きたかったんだって。人気のお店らしくて、遅い時間なのに行列で20分くらい待った。

 野菜がめちゃくちゃ美味しかった。普段スーパーで買う野菜の何倍も味が濃い。


 ご飯を食べた後、私はいつも眠くなる。彼も一週間の仕事の疲れが残っているみたいで、眠いと言った。

 本当はこの日はランチだけの予定で、そのあと解散することになっていたけど、彼が「どうする?」と聞いてくれる。彼がほんとは疲れてて帰って寝たいと思ってるのは私には分かるんだけど、それでもいつも私の意見を聞いて優先してくれるのが彼らしいと思う。

「眠いから、彼くんの家で寝たい。」と私は言った。

 彼は驚いた様子で、「俺の家散らかってるし、今日は泊まりは無理だけど、いいの?」と聞く。

「夕方になったら帰るから!」
 …と言うことで、私たちは彼の家に向かうことになった。


 電車で彼の家まで数駅。私たちは並んで座る。
 彼がさっきのスープカレーのお店のレシートをいじって、輪っかを作っていた。彼は何も言わずに、それを私の指にはめた。私の左手の薬指。
 なんでもないことなんだけど、なんだかそれが、とても嬉しかった。


 彼の家に着いたのが15時半。エアコンをかけて、手を洗い、私たちはベッドに倒れ込んだ。

 すぐに寝てしまいそうだったけど、私は寝過ごさないようにと、彼の家のアレクサに声をかける。「アレクサ、17時に起こして。」

 そして私たちは寝た。本当にただ、睡眠した。私よりも先に彼がいびきをかき始めて、それより後は私も記憶がない。


 17時にアラームが鳴った。私はすぐに起きれずにしばらくごろごろした後、寝ている彼を残してベッドから出た。そして歯磨きをしたあと、彼に声をかけた。「そろそろ帰るね。」

 彼はまだベッドで半分寝ていた。まだ眠そうな顔をしている彼のことを、可愛いと思った。私は「可愛いね。」と言って彼の頭をなでる。こうやってお互いに甘えたり甘やかしたりできる関係っていいな、と改めて思う。

「寝てていいよ。おやすみ。」
 そう言って私は彼の家を後にして、まだ明るい夏の夕暮れの中、駅に向かった。


 本当になんでもない一日だけど、いつか忘れてしまうのがもったいなくて、こうやってここに留めておく。


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