戦地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ状態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ「ジュネーヴ」條約(昭和一〇、三、八、条約第一号)
●戦地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ状態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ「ジュネーヴ」條約(昭和一〇、三、八、条約第一号)
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國全權委員カ瑞西國「ジュネーヴ」ニ於テ関係各國全權委員ト共ニ議定シ且留保ノ上署名シタル戰地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ状態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ「ジュネーヴ」條約ヲ右留保ヲ存シテ批准シ茲ニ之ヲ公布セシデ 「總理、海軍、外務、陸軍、商工・拓務大臣副署」
帝財政府批推書寄託(昭和一〇、三、八、外務省告示第一三號)
帝國政府ハ帝國全權委員ガ瑞西國「ジュネーヴ」ニ於テ關係各国全權委員ト共ニ議定シ且留保ノ上署名シタル戰地軍隊ニ於ケル傷者及病替ノ状態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ「ジュネーブ」條約ニ封スル帝國ノ批准書ヲ昭和九年十二月十八日瑞西聯邦政府ニ寄託セリ仍テ右條約ハ帝国ニ對シ昭和十年六月十八日ヨリ實施セラルベシ
(下略)
戦地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ状態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日「ジュネーヴ」條約
獨逸國大統領(以下締約国元首名略)ハ共ニ其ノ力ノ及フ限リ戰争ニ避クヘカラサル惨害ヲ輕減センコトヲ糞望シ比ノ目的ヲ以テ戰地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ状態改善ニ關シ千八百六十四年八月二十二日及千九百六年七月六日「ジュネーヴ」ニ於テ約定シタル規定ヲ完成補修セント欲シ之カ爲新條約ラ概結スルコトニ決定シ各左ノ全權委員ヲ任命セリ(全權委員名略)
右各全權委員ハ亙ニ其ノ全權委任状ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ
第一章 傷者及病者
第一條 軍人及公ニ軍隊ニ附屬スル其ノ他ノ人員ニシテ負傷シ又ハ疾病ニ罹リタルモノハ如何ナル場合ニ於テモ尊重且保護セラルヘシ右ノ軍人及人員ハ國籍ノ如何ヲ問ハス之ヲ自己ノ權内ニ收容シタル交戰者ニ依リ博愛ノ心ヲ以テ待遇セラレ且看護セラルヘシ
尤モ傷者又ハ病者ヲ敵ニ遺棄スルノ巳ムヲ得サルニ至リタル交戰者ハ軍事上ノ要求ノ許ス限リ其ノ看護ニ寄興スル爲其ノ衛生人員及衛生材料ノ一部ヲ傷者病者ト共ニ遺留スヘシ
第二條 一方ノ軍隊ノ傷者及病者ニシテ他方ノ交戰者ノ權内ニ陥リタルモノハ前條ニ依リテ看護ヲ享クルノ外俘虜ト爲リ俘虜ニ關スル国際法ノ一般規則ヲ適用セラルヘシ
尤モ交戰者ハ傷者又ハ病者タル俘虜ノ爲ニ且現存ノ義務以外ニ其ノ有益ト認ムル條項ヲ定ムルユトヲ得ヘシ
第三條 各戰闘後戦場ノ占領者ハ傷者及死者ヲ捜索シ旦掠奪及虐待ニ対シ之ヲ保護スルノ措置ヲ執ルヘシ
戰線間ニ残留スル傷者ヲ收容スルコトヲ得シムル爲事情ノ許ストキハ其ノ都度局地的休戰又ハ射撃中止ヲ協定スヘシ
第四條 交戰着ハ收容又ハ發見セラレタル傷者、病者及死者ノ姓名竝ニ之ヲ認識スルニ足ル一切ノ資料ヲ成ルヘク速ニ相互ニ通知スヘシ
交戰者ハ死亡證明書ヲ作成シ且交換スヘシ
交戰者ハ又戰場ニ於テ又ハ死者ヨリ發見セラレタル一切ノ個人的用品特ニ認識票ノ半分(他ノ半分ハ屍體ニ附ケ置カルヘキモノトス)ヲ蒐集シ且交換スヘシ
交戰者ハ死者ノ土葬又ハ火葬ニ先チ死亡ヲ確認シ死者ヲ認識シ且之カ報告ヲ爲シ得ル爲愼重ナル且出來得レハ醫學的ノ身體検査ノ行ハルル樣注意スヘシ
交戰者ハ尚死者カ敬意ヲ以テ埋葬セラレ、其ノ墳墓カ尊敬セラレ且常ニ見出サレ得ル樣注意スヘシ
交戰者ハ之カ爲戰爭開始ニ際シ墳墓ノ場所ノ移転如何ニ拘ラス後日爲スコトアルヘキ屍體發掘ヲ可能ナラシメ且屍體ヲ認識シ得シムル目的ヲ以テ墳墓係ヲ公ニ組織スヘシ
第五條、軍事官憲ハ其ノ監督ノ下ニ兩軍ノ傷者又ハ病者ヲ收容看護セシムル爲住民ノ慈恵心ニ訴フルコトヲ得ヘク之ニ應シタル者ニハ特別ノ保護及一定ノ便宜ヲ興フルモノトス
第二章 衛生上ノ部隊及營造物
第六條 移動衛生部隊即チ戦地軍隊ニ随伴スヘキモノ及衛生機關ノ固定替造物ハ交戦者ニ於テ之ヲ尊重保護ス
第七條 衛生上ノ部隊及營造物カ害敵行爲ノ爲ニ使用セラルルトキハ其ノ保誕ヲ失フヘシ
第八條 左記ノ事實ハ衛生上ノ部隊叉ハ營造物カ第六條ニ依リ保障セラレタル保護ヲ喪失スヘキ性質ノモノト看徹サレルヘシ
(1) 部隊叉ハ營造物ノ人員カ武装シ其ノ武器ヲ自己叉ハ傷者及病者ノ防衛ノ爲ニ使用スルノ事實
(2) 武装看護人ノ在ラサルニ當リ歩哨又ハ衛兵ヲシテ部隊叉ハ營造物ヲ守術セシムルノ事實
(3)傷者及病者ヨリ取上ケタルモ未ク所轄機關ニ引渡サレサル携帯武器及弾薬力部隊又ハ營造物内ニ發見セラレタルノ事賓
(4)獣醫機關ノ人員及材料カ部隊叉ハ營造物ノ一部分ヲ構成セスシテ其ノ内ニ在ルノ事實
第三章 人 員
第九條 傷者及病者ノ收容,輸迭及治療竝ニ衛生上ノ部隊及營造物ノ事務ニ專ラ従事スル人員竝ニ軍隊附屬ノ教法者ハ如何ナル場合ニ於テモ尊重且保護セラルヘシ此等ノ者ハ敵手ニ陥リタルトキト雖モ俘虜トシテ取扱ハルルコトナカルヘシ
軍人ニシテ場合ニ依リ補助看護人叉ハ補助擔架兵トシテ傷者及病者ノ牧容、輸送及治療ニ使用セラルル爲情別ニ教育セラレ且認識證明書ヲ携帯スルモノハ此等ノ職務ノ遂行中捕ヘラレタルトキハ常置衛生人員ト同一ノ制度ノ利益ヲ享有スヘク
第十條 本國政府カ適法ニ認可シタル篤志救恤協會ノ人員ニシテ第九條第一項二掲ケタル人員ト同一ノ職務テ 便用セラルルモノハ骸項ニ掲ケタル人員ト同一ニ看倣サルヘシ但シ該協會ノ人員ハ軍ノ法令ニ服従スヘキモノトス
各締約國ハ共ノ責任ノ下ニ自國軍隊ノ公ノ衛生勤務ニ援助ヲ與フルコトヲ許可シタル協會ノ名稱ヲ平時ヨリ又ハ戦争開始ノ際若ハ戰爭中何レノ場合ニモ之ヲ實際ニ使用スルニ先チ他ノ締約國ニ通告スヘシ
第十一條 中立國ニ於テ認可セラレタル協會ハ豫メ自國政府ノ承認ヲ得且交戦者ノ許可ヲ受クルニ非サレハ其ノ入員及衛生部隊ヲシテ當該交戦者ニ援助ヲ與ヘシムルコトヲ得サルヘシ
右救護ヲ承諾シタル交戦者ハ共ノ使用ニ先チ之ヲ敵ニ通告スヘシ
第十二條 第九條、第十條及第十一條ニ掲ケタル人員ハ相手方ノ権内ニ陥リタル後抑留セラルルヲ得サルヘシ
反封ノ合意ナキ限リ右人員ハ歸路開通シ且軍事上ノ要求カ之ヲ許スニ至リタルトキハ直チニ其ノ属スル交戦者ニ迭還セラルヘシ
右人員ハ送還セラルル迄相手方ノ指揮ノ下ニ在リテ引續キ各自ノ職務ヲ執行スヘシ右人員ハ成ルヘク共ノ属スル交戰者ノ傷者及病者ノ看護ニ從事セシメラルヘシ
右人員ハ其ノ出發ニ際シ其ノ所存スル被朕、器具、武器及輪邊機關ヲ持去ルヘシ
第十三條 交戦者ハ第九條、第十條及第十一條ニ掲ケタル人員カ其ソ權内ニ在ル間自國軍隊ノ對當人員ニ封スルト同一ノ給養、宿舎、手當及給興ヲ之ニ支給スヘシ
交戰者ハ戦争開始後直ニ共ノ衛生人員ノ階級ノ封當關係ニ付協定スヘシ
第四章 建物及材料
第十四條 移動衛生部隊ハ其ノ何タルヲ問ハス相手方ノ權内ニ陥ルトキト雖モ共ノ材料、楡送機關及輸邊係員ヲ保有ズヘシ 尤モ權限アル軍事官憲ハ傷者及病者看護ノ爲該材料、輸送機關及輸送係員ヲ使用スルノ權能ヲ有スヘク共ノ返還ハ衛生人員ノ爲ニ定メラレタル條件ニ於テ且成ルベク之ト同時ニ爲サルベシ 、 ’
第十五條 軍隊ノ衛生上ノ固定營造物ノ建物及材料ハ戰爭ノ法規ニ從フヘシ然レトモ傷者及病者ノ爲ニ必要ナル間ハ其ノ用途ヲ他ニ轉スルコトヲ得サルヘシ尤モ作戰部隊ノ指揮官ハ緊急ナル軍事上ノ必要アルトキハ豫メ固定營造物内ニ於テ治療セラルル傷者及病者ノ安全ヲ圖リクル後之ヲ處分スルコトヲ得ヘシ
第十六條 本條約ノ利益ヲ享有スル救恤協會ノ建物ハ私有財産ト看倣サルヘツ
右協會ノ材料ハ其ノ所在ノ如何ヲ問ハス同様ニ私有財産ト看做サルヘシ
戰爭ノ法規慣例ニ依リ交戰者ニ認メラレタル徴發權ハ緊急ナル必要アル場合ニ於テ且傷者及病者ノ安全ヲ圖リクル後ニ於テノミ行使セラルヘシ
第五章 衛生上ノ輪送機關
第十七條 衛生上ノ後送ノ爲装備セラレタル車輌ニシテ單獨ニ叉ハ隊ヲ爲シテ移動スルモノハ左ノ特別規定ニ依ルノ外移動衛生部隊トシテ取扱ハルヘシ
單獨ノ又ハ隊ヲ爲セル衛生上ノ輸送車輌ヲ遮斷スル交戰者ハ軍事上ノ必要アルトキハー切ノ場合ニ於テ該車輌ノ收容シタル傷者又ハ病者ヲ引取リタル後之ヲ停止シ隊ヲ解クコトヲ得ヘシ交戰者ハ該車輌カ遮斷セラレタル戦區ニ於テ且衛生上ノ必要ノ爲ニノミ之ヲ利用スルコトヲ得ヘシ該車輌ハ其ノ局地的任務ノ終了シクルトキハ第十四條ニ規定セラレタル條件ニ於テ返還セラルヘシ
輸送ニ任シ且之力爲正規ノ命令書ヲ携帯スル軍人軍屬ハ衛生人員ニ付第十二條ニ規定セラレタル條件ニ於テ且第十八條末項ノ留保ノ下ニ送還セラルヘシ
後送ノ爲ニ特ニ組織セラレタル一切ノ輸送機及右輸送機開ノ装備材料ニシテ衛生機關ニ屬スルモノハ第四章規定ニ從ヒ返還セラルヘシ
衛生機關サ(ママ)屬ニセル(ママ)軍隊ノ輸送機關ハ其ノ繁駕ト共ニ之ヲ捕獲スルコトヲ得へシ
徴發ニ由レル普通人及一切ノ輸送機關ハ國際法ノ一般規則ニ從フヘシ
第十八條 衛生上ノ輸送機關トシテ使用セラルル航空機ハ専ラ傷者及病者ノ後送竝ニ衛生人員及衛生材料ノ輸送ニ充テラルル間本條約ノ保護ヲ享有スヘシ
右航室機ハ白色ニ塗ラルヘク且下面及上面ニ國色章ノ傍ニ第十九條ニ規定セラレタル殊別記章ヲ明瞭ニ附ラルヘシ
特別ノ且明白ナル許可アル場合ヲ除キ戰線及野戦病院ノ前方ニ存スル地帯竝ニ一般ニ敵ノ一切ノ領域又ハ敵ニ依リ占領セラレタル一切ノ領域ノ上ノ飛行ハ禁止セラルヘシ
衛生航空機ハ著(ママ)陸ノ要求アルトキハ必ス之ニ從フコトヲ要ス
敵ノ領域叉ハ敵ニ依リ占領セラレタル領域上ニ於ケル右強制的又ハ偶然ノ著陸ノ場合ニハ傷者及病者竝ニ衛生材料(航空機ヲ含ム)ハ引續キ本條約ノ規定ノ利益ヲ享有スヘシ
捕ヘラレタル操縦者、運航從事者及無線電信技術者ハ戰爭ノ終了スル迄衛生動務ニノミ使用セラルルコトヲ條件トシテ送還セラルヘシ
第六章 殊別記章
第十九條 瑞西國ニ封シ敬意ヲ表スル爲該聯邦國旗ノ著色ヲ顛倒シテ作成シタル白地赤十字ノ紋章ハ軍隊ノ衛生勤務ノ標章及殊別記章トシテ維持セラルヘシ
尤モ赤十字ノ代リニ白地ニ赤新月叉ハ赤ノ獅子及太陽ヲ殊別記章トシテ既ニ使用スル諸國ニ付テハ右標章ハ本條約ノ意議ニ於テ同様ニ許容セラルヘシ
第二十條 標章ハ權限アル軍事官憲ノ認可ヲ得テ衛生勤務ニ關係アル旗、臂章及一切ノ材料ニ表出セラルヘシ
第二十一條 第九條第一項、第十條及第十一條ニ依リ保護セラルル人員ハ軍事官憲ヨリ交付シ且其ノ印章ヲ捺 シタル殊別記章ヲ附セル臂章ヲ左腕ニ装著シ置クヘシ
第九條第一項及第二項ニ掲ケクル人員ハ軍隊手牒ヘノ記入叉ハ特別ノ書類ヨリ成ル認職證明書ヲ付與セラルヘシ
權限アル軍事官憲ハ第十條及第十一條ニ掲ケタル人員ニシテ軍服ヲ有セサルモノヲシテ共ノ衛生人員タルノ資格ヲ證明スル寫眞附認識證明書ヲ所持セシムヘシ
認識證明書ハ各軍ニ於テ畫一的ニシテ且同一型ノモノクルヘシ
如何ナル場合ニ於テモ衛生人員ハ共ノ徽章又ハ固有ノ認識證明書ヲ奪ハルルコトヲ得サルヘシ
紛失ノ場合ニハ右人員ハ其ノ複本ヲ取得スルノ權利ヲ有スヘシ
第二十二條 本條約ノ殊別旗ハ本條約ニ依リテ尊重セラルル衛生上ノ部隊及營造物ニシテ軍事官憲ノ認許ヲ受ケタルモノニ非サレハ之ヲ掲揚スルコトヲ得サルヘシ固定營造物ニ於テハ右殊別旗ト共ニ該營造物ノ屬スル
交戰者ノ國籏ヲ掲揚スルロ÷ヲ要スヘク移動部隊二於テハ骸部隊ノ属スル交戰者ノ國旗ヲ之卜共ヒ掲揚スルコヲ得ヘシ
尤モ敵ノ權内ニ陷リクル衛生部隊ハ右權内ニ在ル限リ本條約ノ殊別旗ノミヲ掲揚スヘシ
交戰者ハ一切ノ攻撃的行動ノ可能性ヲ除去スル目的ヲ以テ衛生上ノ部隊及營造物ヲ表示スル殊別標章ヲ陸上、空中及海上ノ敵軍ニ明瞭ニ認識セシムル爲必要ナル措置ヲ軍事上ノ要求ノ許ス限リ執ルヘシ
第二十三條 第十一條ニ規定シクル條件ニ於テ其ノ役務ヲ提供スルノ許可ヲ得クル中立國ノ衛生部隊ハ木條約ノ殊別旗ト共ニ其ノ属スル交戰者ノ國旗ヲ掲揚スルコトヲ要ス
右部隊ハ交戰者ニ役務ヲ提供スル限リ同様ニ其ノ自國國旗ヲ掲揚スルノ權利ヲ有スヘシ
前條第二項ノ規定ハ右部隊ニ適用セラルヘシ
第二十四條 白地赤十字ノ標章及赤十字又ハ「ジュネーヴ」十字ノ語ハ平時ト戦時トヲ問ハス本條約ニ(ママ)護セラルル衛生上ノ部隊及營造物竝ニ人員及材料ヲ保護シ又ハ表示スル爲ニ非サレハ之ヲ使用スルコトヲ得サルヘシ
第十九條第二項ニ掲クル標章ニ關シ之ヲ使用スル諸回ニ封ジテ亦同様ナルヘシ
尚第十條ニ掲クル篤志救恤協會ハ平時ニ於ケル博愛事業ノ爲殊別標章ヲ國内法令ニ從ヒ使用スルコトヲ得ヘシ
特例トシテ且國ノ赤十字(赤新月又ハ赤ノ獅子及太陽)社ノ明白オル許可ヲ得タルトキハ傷者又ハ病者ノ無料看獲ニ専ラ充テラルル救護所ノ場所ヲ指示スル爲平時ニ於テ本條約ノ標章ヲ使用スルコトヲ得へシ
第七章 條約ノ適用及執行
第二十五條 本條約ノ規定ハ如何ナル場合ニ於テモ締約國ニ依リ尊重セラルヘシ
戦時ニ於テ交戦者ノ一カ條約ノ當事者タラサル場合ト雖モ條約ノ規定ハ條約ニ参加セルー切ノ交戰者ノ間ニ拘束力ヲ有スヘシ
第二十六條 交戰軍ノ總指揮官ハ各其ノ本國政府ノ訓令ニ從ヒ且本條約ノ一般原則ニ準據シ前諸條ノ執行ニ關スル細目及規定漏ノ事項ヲ補足処理スヘシ
第二十七條 締約國ハ本條約ノ規定ヲ其ノ軍隊及特ニ保護セラルル人員ニ教示スル爲及之ヲ入民ニ知悉セシムル爲必要ナル措置ヲ執ルヘシ
第八章 濫用及違反ノ禁止
第二十八條 締約國政府ニシテ現ニ其ノ法令十分ナラサルモノハ左記事項ヲ常ニ防止スルニ必要ナル措置ヲ執リ又ハ之ヲ其ノ立法機關ニ提案スヘシ
(イ)商業上ノ目的ヲ以テスルト他ノ如何ナル目的ヲ以テスルトヲ問ハス個人叉ハ本條約ニ依リ使用ノ權利ヲ有スルモノ以外ノ團躰ニ依ル赤十字又ハ「ジュネーヴ」十字ノ標章叉ハ名稱竝ニ之カ模倣ト爲ル一切 ノ記章及名稱ノ梗用
(ロ)瑞西聯邦國旗ノ著色ノ顛倒セラレタルモノノ採用ニ依リ同國ニ封シ敬意ノ表セラレタルニ鑑ミ商業上ノ誠實ニ反スル目的ニ於ケルト瑞西ノ國民的感惰ヲ毀損スルコトアルヘキ状態ニ於ケルトヲ問ハス個人叉ハ團躰ニ依ル瑞西聯邦ノ紋章又ハ之カ模倣ト爲ル記章ノ製造標若ハ商標叉ハ右製造標若ハ商標ノ要部トシテノ使用
赤十字叉ハ「ジュネーヴ」十字ノ標章叉ハ名稱ノ模倣ト爲ル記章又ハ名稱ノ使用ノ(イ)ニ規定セラレタル禁止及瑞西聯那ノ紋章又ハ之カ模倣トナル記章ノ使用ノ(ロ)ニ規定セラレクル禁止ハ各法令ニ依リ決定セラルル
時期ヨリ且遅クトモ本條約ノ實施後五年ニシテ其ノ效力ヲ發生スヘシ右實施後ハ右禁止ニ反スル製造標叉ハ商標ヲ採用スルハ適怯ナラサルヘシ
第二十九條 締約國政府ハ叉其ノ刑法不十分ナル場合ニハ本條約ノ規定ニ反スル一切ノ行爲ヲ戦時ニ於テ禁止スルニ必要ナル措置ヲ執リ叉ハ之ヲ其ノ立法機關ニ提案スヘシ
締約國政府ハ遅クトモ本條約批准ノ時ヨリ五年以内ニ瑞西聯邦政府ノ仲介ニ依リ右禁止ニ關スル規定ヲ相瓦ニ通告スヘシ
第三十條 本條約ニ封スル違反アリトノ主張アルトキハ一交戰者ノ請求ニ基キ開係當事者間ニ定メラルヘキ手續ニ從ヒ右違反ニ付審査開始セラルヘシ違反確認セラルルトキハ交戰者ハ成ルヘク速ニ違反ヲ止メ且之ヲ禁止スヘシ
最経規定
第三十二條 本日ノ日附ヲ有スベキ本條約ハ千九百二十九年七月一日「ジュネーヴ」ニ開催セラレタル會議ニ代表者ヲ派漕シタル一切ノ國及該會議ニ代表者ヲ派遣セザルモ千八百六十四年又ハ千九百六年ノ「ジュネーヴ」條約ニ参加セル國ノ名ニ於テ千九百三十年二月一日迄ニ署名セラレ得へシ
第三十二條 本條約ハ成ルヘク速ニ批准セラルヘシ
批准書ハ「ベルヌ」ニ於テ、寄託セラルヘシ
各批准書ノ寄託ニ付調書一通作成セラレ其ノ認證謄本ハ瑞西聯邦政府ヨリ自己ノ名ニ於テ本條約カ署名セラレ叉ハ加入カ通告セラレタル一切ノ國ノ政府ニ交付セラルヘシ
第三十三條 本條約ハ少クトモ二箇ノ批准書カ寄託セラレタル後六月ニシテ實施セラルヘシ
爾後本條約ハ各締約國ニ付其ノ批准書ノ寄託後六月ニシテ實施セラルヘシ
第三十四條 本條約ハ締約國間ノ聞係ニ於テ千八百六十四年八月二十二日及千九首六年七月六日ノ條約ニ代ルヘシ
第三十五條 自巳ノ名ニ於テ本條約カ署名セラレサリシ國ハ何レモ本條約實施ノ日ヨリ其ノ名ニ於テ之ニ加入スルコトヲ得
第三十六條 加入ハ書面ヲ以テ瑞西聯邦政府ニ封シ通告セラルヘク加入書カ同國政府ニ到達シタル日ノ後六月ニシテ效力ヲ生スヘシ
瑞西聯邦政府ハ自己ノ名ニ於テ條約カ署名セラレ叉ハ加入カ通告セラレタルー切ノ國ノ政府ニ右加入ヲ通知スヘシ
第三十七條 戰爭状態ハ戰爭開始前叉ハ開始後交戰國ニ依リ寄託セラレタル批准及通告セラレクル加入ニ封シ直ニ效力ヲ生セシムヘシ瑞西聯邦政府ハ戰爭状態ニ在ル国ヨリ受ケタル批准叉ハ加入ヲ最迅速ナル方法ニ依リ通知スヘシ
第三十八條 各締約國ハ本條約ヲ廃棄スルノ權能ヲ有スヘシ廃棄ハ書面ヲ以テ之ヲ瑞西聯邦政府ニ通告シタル後一年ヲ經過スルニ非サレハ效力ヲ生スルコトナカルベシ瑞西聯邦政府ハ右通告ヲ一切ノ締約国政府ニ通知スヘシ
廃棄ハ之ヲ通告シクル國ニ對シテノミ其ノ效力ヲ生スヘシ
尚右廃棄ハ廃棄国カ参加セル戦爭中其ノ效力ヲ生サルヘシ此ノ場合ニ於テハ本條約ハ一年ノ期間滿了後更ニ平和條約締結迄引續キ其ノ效力ヲ有スヘシ
第三十九條 本條約ノ認證謄本ハ瑞西聯邦吹府ノ手配ニ依リ國際聯盟ノ記録ニ寄託セラルヘシ同様ニ瑞西聯邦政府ニ通告セラルヘキ批准、加入及廃棄ハ同政府ニ依リ國際聯盟ニ通知セラルヘシ
右證據トシテ前記全植委員ハ本條約ニ署名セリ
千九百二十九年七月二十七日「ジュネーヴ」ニ於テ本書一通ヲ作成ス右一通ハ瑞西聯邦ノ記録ニ保存セラルヘク其ノ識證謄本ハ會議ニ招請セラレタル一切ノ國ノ政府ニ交付セラルヘシ
(全植委員署名略)
留保
英帝國 英帝國ノ各部分(南阿聯邦ヲ除ク)ノ代表委員ハ本條約ノ署名ハ英國皇帝陛下ガ第二十八條ヲ左ノ意味ニ解釋スヘシトノ留保ノ下ニ爲サルルモノナルコトヲ宜言ス
同條ニ揚クル立法的措置ニ於テハ瑞西聯邦ノ紋章叉ハ骸紋章ノ模倣ト爲ル記章ヲ本條約實施前一切ノ遡法ノ目的ヲ以テ使用シタル個人、組合、商社又ハ會社ハ同一目的ヲ以テスル右ノ紋章又ハ記章ノ使用ヲ繼續スルコトヲ妨ケラルヘキモノニ非サルコトヲ豫見スルコトヲ得
日本国 日本国ハ第二十八條ノ規定ニ主義上賛同スルモ同條(ロ)ニ規定スル禁止ノ實施ノ日ニ關シ留保ヲ爲ス
日本國ハ右ノ禁止ハ該禁止ノ實施前使用セラレ叉ハ登録セラレタルコトアルヘキ紋章及記章ニ適用セラレサルモノト了解ス
日本國ノ代表委員ハ前記留保ノ下ニ本條約ニ署名ス
天佑ヲ保有シ萬世一系ノ帝祚ヲ踐メル日本國皇帝(御名)此ノ書ヲ見ル有衆ニ宣示ス
朕帝國全権委員ガ瑞西國「ジュネーヴ」ニ於テ關係各國全構委員ト共ニ議定シ且留保ノ上署名シタル戰地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ状態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日「ジュネーヴ」條約ヲ閲覧點檢シ右留保ヲ存シテ之ヲ嘉納批准ス
神武天皇即位紀元二千五百九十四年昭和九年十月二十六日東京宮城ニ於テ親ラ名ヲ署シ璽ヲ鈐セシム
(外務大恒副署)