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7つのホクロを持つ女

何十年前だったか。

電車の右隣に女性が座った。
俺は、ワイシャツの袖を捲って折っていた。
彼女は、座るとカーディガンを脱いで、鞄に仕舞った。

腕をこちらに向けて、見せているような感じがしたので、見ると。
彼女の左腕に、俺と同じ7つのホクロが並んでいた。

同じような場所に、同じような配列で。

驚いた。

なにも話さなかったし、顔を見たりもしなかった。
ただ、腕を見ていた。

そんなことで「お知り合いになりましょう」ってのも違う気がしたし、
彼女から、声を掛けることはあり得なかっただろう。
声を交わすでもなく、それっきりだった。

そんなこと、思い出した。
以前は、北斗七星のようだったのだが、今は加齢ホクロに埋もれている。