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嘗て、吉祥寺にあった喫茶店にてep.3/5
半日、店のお守りを任されたことがある。
用事があり留守にする。午前中だけ頼みたいと。
常連さんには午前中、来ないようにと言ってあるが、他に待ち合わせ客があるかもしれないから店は開けておきたいと。
珈琲の淹れ方を念入りに教わった。
「美味しいコーヒーの淹れ方にはコツがあるのよ」
簡単に言っちゃうと。
ちょっとずつ、湯を加えて「美味しくな〜れ。美味しくな〜れ」みたいな。
藤岡弘さんがやってるね。
「好きな音楽を掛けてていいですか?」
「いいわよ」
常連さんが1名「様子見を頼まれた」と来ただけで、他に来客はなかった。
午後、ママが手土産を持ってやってきた。
「CD、このままで良いわよ」
翌日、CDを受け取りに行ったら。
「最初は、派手だなと思ってたけど、聴いているうちに気に入っちゃった。貰っていい?」
「いえ、自分で買ってください」
え?くれないの?と意外そうな顔をした。
(夜の店じゃあるまいし、その手には乗らないよ)
「なんて言う歌手?」
「Dead or Alive(洋楽のグループ名)」
「どういう意味?」
「死ぬか、生きるか」
「え?」
「生きるべきか、死ぬべきかって奴ですよ。ははっ」
思うんだけどさ、ハムレットで「生きるべきか、死ぬべきか」って日本語訳、確かに語呂はいいんだけど。
まずは、「死ぬべきか」って疑問が先に来るはず。で、迷って「生きるべきか」が続く。
そうは、思わないかね?・・・誰も、思わねーだろうなぁ。