インドネシア本(13)「狂気の時代」―魔術・暴力・混沌のインドネシアをゆく リチャード ロイド パリー著
英『ザ・タイムズ』紙アジア編集長および東京支局長によるインドネシアにおける暴力、混沌、そして魔術に関する調査と分析をまとめた三部構成のルポルタージュ。
一部がカニバリズムが衝撃的なボルネオ島(カリマンタン島)のダヤク族とマドゥーラ族の民族抗争、二部がスハルト時代の終焉時のジャカルタの混乱と学生デモの鎮圧事件、三部は東ティモール独立時の混乱とに暴力について。
インドネシア社会において起こる暴力や混乱の背景にある文化的・宗教的要素に着目し、魔術の実践や信仰に関する詳細な調査を行っている。また、著者自身が経験した事件や出会った人物たちの話も紹介され、リアルな現場の様子を伝えている。
本書の特徴は、暴力や混乱が起こる背景にある文化的・宗教的要素を探究し、インドネシア社会の複雑な実態を浮き彫りにする点にある。また、著者が現地に入り込み、被害者や加害者、関係者たちと対話を行い、事件の背後にある人間ドラマを描写している点も魅力的。
本書は社会学的・文化人類学的なアプローチに基づいた調査報告書のような形式をとっているが、その内容は非常にリアルで深く、時にはグロテスクな描写もある。インドネシア社会に興味がある人や、文化人類学や社会学に興味のある人には、非常に興味深い読み物である。
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