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外国人部下は日本人上司の「いいよ」の意味がよくわからない

日本企業で働く外国人の若手社員(全員日本語が話せる)に研修を行っていたとき、ある受講者から「私が相談すると上司は”いいよ”と答えますが、それが”Yes”の意味か、”No”の意味かわかりません」と質問されたことがありました。

その質問の意図を確認すると、上司から「いいよ」と言われたので「やってよい」と思っていたら、後から上司に「やらないでいいと言ったのに、何でやったんだよ!」と怒られてしまい、結局どっちの意味なのかわからなくなってしまったとのことでした。

その話に対して他の受講者も「うんうん」とうなずいていたので、おそらく多くの外国人社員は同様の悩みを抱えていたと思われます。

例えば、部下のお伺いに対して上司が「いいよ」と返事したとき、相手の表情や前後の文脈から「察する」ことに慣れている人なら以下のような判断ができるかと思います。

(上司が笑顔で)「いいよ⤴」 ⇒ 「Yes、やっていいよ」

(上司が不機嫌な表情で)「いいよ⤵」 ⇒ 「No、やらないでいい」

一方で、言葉を辞書通りに捉える人にとって「いいよ」はあくまで「Yes」なので、上司は「やっていいよ」と答えたと判断してしまいます。

その結果、上司は「部下は話をちゃんと聞いていない」と思ってしまい、部下は「上司が意地悪をしている」と思って互いに不幸な関係になってしまいます。

上司のせいではなく、日本語の特性

この話は「あいまいな返事をする上司が悪い」という単純な話でもありません。日本語が前後の文脈によって意味が変わる言語である以上、日本語で生まれ育った上司はあくまで「明確に答えている」という認識で返事をしています。

そのため、件の外国人社員に対しては「日本語は同じ言葉でも意味が変わる言語なので、日本語ネイティブでない皆さんがわからないのは仕方ないです」と伝え、上司はわざとあいまいな返事をしているのではなく、「いいよ」には「やっていいよ」と、「やらなくていいよ」の両方の意味があると教えました。

その上で、「上司が言っていることの意味がわからなかったら、その都度上司に確認するといいですよ」とアドバイスをしました。
(例えば、自分が「Yes」と思ったら、「それはやっていいよ、ということでしょうか?」を聞き返してみる)

日本語は「グレー」の幅が広い言語

私は言語学者ではないのであくまで個人的な主観ですが、日本語は他の言語に比べて下の図のように「白」と「黒」の間のグラデーションが細かく、「グレー」の幅が広いと思います。

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そのため、「グレー」と言っても「黒に近いグレー」か、「白に近いグレーか」は細かく説明しないと、文脈や背景を共有していない相手にはわかりません。

また、同じ日本人同士でも認識のずれが起きることはありますので、そういう意味では日本語は丁寧なコミュニケーションが求められる言語かもしれません。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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