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私は外国人ですが、もし「日本から出ていけ!」と言われたら

私は永住者資格を持つ在日外国人として日本で45年以上過ごしてきましたが、幸いなことに「外国人」という理由で不利益を被ったことは一度もありません。(外見も言葉も日本人と変わらないので、そもそも外国人扱いされることがほとんどありませんが)

選挙権が無いことを除けば、あとは日本国籍を持つ人と何ら変わらない権利を享受することができます。進学も就職も起業も不動産購入も何でも自由にできます。

もし選挙権が欲しいなら帰化すればいいだけですが(犯罪歴はなく、税金もちゃんと払ってきたのでたぶん断られることはないと思いますが)、外国籍の特権として「夫婦別姓」にできるのであえてそのままにしています。

そんなわけでもはや自分が外国人であるという実感すら沸かない日々が続いていましたが、先月私が住む武蔵野市で外国籍住民にも投票の権利を認める条例案が議会で出されたときに外国人であること意識せざるを得ないことがありました。(条例案は12月21日の市議会で否決)

このような条例は武蔵野市が初めてではなく、既に神奈川県逗子市、大阪府豊中市で成立していますが、武蔵野市の条例案には一部から強い反対の声が上がり、12月上旬の週末には警察が大勢出動する中で吉祥寺駅前の広場で反対派のデモが夜遅くまで行われました。

日本には言論の自由と集会の自由があるのでどのような主張をしても何の問題もないのですが、中には「外国人に乗っ取られる!」、「参政権がほしいなら自分の国に帰れ!」といった声もあり、普段は平和な吉祥寺の駅前もかなり物々しい雰囲気になりました。

私も外国籍なのでもちろん「可決されると嬉しいな」という思いはありましたが、そのような声を聞いてしまうと「投票したいなら日本から出ていけ」と言われているようでやはり嫌な気分になってしまいます。

世の中には様々な考え方の人がおり、何を言おうがその人の自由なのですが、今後はもしかしたら自分にとってものすごく不快な言葉を直接ぶつけられる可能性もあります。

例えば、飲み屋で隣の人がこっちの会話を聞いて「オイ!おまえは中国人か!出ていけ!」なんて言われるかもしれません。

もちろん「出ていけ」と言われたからといって出ていく必要は一切ないのですが、執拗にからまれた場合は以下の点に気をつけようと思います。

反論や露骨な無視はやめたほうがいい

まず、感情の赴くままに言い返したり攻撃したりしてしまうと間違いなく無益な争いに発展するので、何としても回避する必要があります。
(私自身が感情的になりやすいという自覚があるので要注意です)

次に、相手を露骨に無視するのも相手を刺激して更に逆上する可能性があるので、相手によっては無視しないほうがいいかもしれません。

また、ひたすら我慢して相手の言いなりになるのも自分自身のストレスを増やすだけなので、あまりよい選択肢ではありません。

逃げられるのなら逃げる

もしその場を離れることができるシチュエーションであれば、逃げることが最善の対応です。居酒屋で隣の客に絡まれてもし食事が終わっているのであればサッサと会計を済ませて出ていくだけです。

逃げられない場合は相手にする

居酒屋のように見ず知らずの人なら簡単に逃げられますが、例えば取引先の人から言われてしまうと逃げるわけにもいかず、相手にするしかありません。

その際の有効な方法として、相手が言ったことに対して反論も同調もせず、ただ場の真ん中に置くというやり方です。

具体的には「〇〇さんはそう思われるのですね」と相手が言ったことをそのまま繰り返したり、「○○さんが言いたいことはこういうことですね」と言葉を言い換えることですが、ここでのポイントは相手を主語にするということです。

相手を主語にすることで、自分にとって嫌な言葉でも「相手が勝手に言ったこと」として場の真ん中に置き、自分の中で受け止める必要はなくなります。

相手のほうも別に自分の発言が否定されているわけでも無視されているわけでもないので、気分よく喋ることができます。
(自分ではなく、場の真ん中に向かって喋らせるイメージです)

外国人への扱いについては様々な意見があり、どちらも自分たちこそ正しいと主張しているので、「正しい・間違い」の議論はいつまでも終わらないと思います。

もっとも外国人に対する差別は欧米のほうがずっと激しく、例えばアメリカの国内線で白人の隣に座ると露骨に嫌な顔をされることはありますが、日本で外国人に対して面と向かって嫌悪感を示す人はほとんど見たことはありません。(本人の見えないところで差別的なことを言う人はいますが)

そんなわけで、「日本から出ていけ!」と叫ぶ人たちも本当は何とも思っていなくて、単にストレス発散で言っているだけだと思えば相手の言葉を真に受ける必要もなくなります。

相手の言動を変えることは無理ですが、自分がうまく対応すれば不幸な結果にならないで済むので、誰に何を言われてもまずは自分の言動に意識を向けようと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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