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ブラレイコの本棚_夏風邪、来たる。家に篭って読みたい本3選

急な悪寒がやって来たのは、好機にも本屋にいるときだった。

悪寒からの、エンドレスに続く くしゃみ&鼻水。
4月以降、連続的にハードワークが続いていたが、先週になって少し落ち着きを取り戻したタイミング。そういう時に、風邪は忍び寄ってくるものだ。

さて、せっかく本屋にいるわけなので、薬代わりに本を調達。
体調の悪化とは裏腹に、久しぶりにゆっくり本を読めることへのワクワクが止まらない。この夏風邪は、「ゆっくり本をお読みなさい」という神様からのギフトなのかもしれない、なんて考えながらフラフラ帰路についた。

という訳で、今回のブラレイコの本棚は「夏風邪のあなたにオススメしたい本3選」をお届け!

リーチ先生  – 原田マハ(著)

風邪をひいたときは、上質で、リズムの良い文章に誘われ、本の世界観に自然と引き込まれていくのが理想。そうなると、小説であれば原田マハさんあたりがベストだろう。

『リーチ先生』は、日本を愛し日本に愛されたイギリス人陶芸家バーナード・リーチ氏の美と友情に溢れた生涯を描くアート小説。「用の美」とも言われる「民藝」の魅力を教えてくれる素晴らしい一冊。

好いものは、好い。

文中、何度か繰り返し出てくる印象的なフレーズ。
ここ最近、左脳的な仕事が増えていたわたしの心に、ズドンと響いたメッセージ。
好いものは、好い。そこに理屈や説明はいらない。

ちなみに、こちらの本は、文庫本サイズで600ページ弱。まあまあ分厚い。
風邪のタイミングで一気読みするには、ピッタリであろう。


旅をする木 – 星野道夫(著)

風邪をひいたときにこそ、好きな本を繰り返し読みたい。
家に引きこもっている分、世界に連れ出してくれる本が理想だ。そうなると、星野道夫さんは外せない。

『旅をする木』は、世界を旅するバックパッカーたちの愛読書。
広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカで暮すエスキモーや白人たちの生活を独特の味わい深い文章で描いたエッセイ集だ。

わたしが一番好きなシーンはこちら。

「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろう。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」
 (中略)
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって……その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」

『旅をする木』もうひとつの時間

大自然から受け取ったメッセージを、言葉にせずとも自分の一部として残しておく。その存在が、きっとわたしたちの世界を少しずつ変えてくれる。

ああ、旅っていいよなあー。
ふと、沖縄県 伊是名島の高台から見た美しい風景を思い出す。


夏風邪にやられている今この瞬間、もうひとつの時間が、伊是名島にゆっくりと流れているんだよなあ。


これが生活なのかしらん  – 小原晩(著)

風邪をひいたからには、何か、新しい本と出会いたい。
そうだ、今こそ、最近話題になっている小原晩さんのエッセイを読むタイミングなのでは!と思い立ち、手に取った一冊。

あっという間に読み切ってしまった・・・。
心地よいリズムで読み進められる、エッセイ。いやー面白かった!

書いてあることは、小原さんの日常の一コマ。
それを「ひとり暮らし」「三人暮らし」「実家暮らし」「寮暮らし」「ふたり暮らし」と切り取っている構成も、面白い。描かれるシーンの数々は共感というわけではないのだけど、何だか妙に惹きつけられる。
小原さんの見る世界の根底には「肯定」というか「包含」というか「優しい気持ち」があるからなのかもしれない。

彼女の言葉えらびのセンスをどうしたら伝えられるか、と悩んだのだけど、「あとがき」のこの一節に触れたら、たぶんすぐ伝わる。

家族と暮らした頃があり、寮をのぞんだ春があり、ひとりで暮らした部屋があり、ふたりで踊った夜があり、三人で食べたマスカットのタルトがあります。
みんなのパジャマ姿が、私はいちばん好きでした。

『これが生活なのかしらん』あとがき

あとがきが、この2文のみ。
好い、実に好い。

軽く読み進められるライトさと、しっかり描かれた人間模様の深さと、時折書かれる考察の鋭いさと。いろんな魅力が詰まっているエッセイ。
小原さん、まだお若いし、デビューしたばかりだし、これからどんどん活躍の幅が広がりそう。楽しみですな〜。

以上、夏風邪をひいたら読んでほしい本3選でした。

まあ、実際のところは、夏風邪じゃなくても
日常を忘れて本の世界に溺れたい人になら、きっとピッタンコだと思われます。

ぜひ、お試しあれ。


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