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ライリーと私と、シンパイとデモキットダイジョウブと。

〈本執筆には映画のネタバレを含みます。ご覧になる予定のある方はご容赦くださいませ〉

先日、インサイド・ヘッド2の映画を観た。

インサイド・ヘッドシリーズは、主人公である少女ライリーと、ライリーの感情を表すキャラクターたちの物語だ。主なキャラクターはヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリ。皆、ライリーの心の変化に合わせて感情を表現するのが彼らの役目だ。まあ、役目というかそれが彼ら自身というか。

私はインサイド・ヘッド1を観ていないので、今回の2が初めてみたインサイド・ヘッド作品となる。今回の作品では11歳だったライリーが15歳という、思春期真っ只中に差し掛かったことで,一気に複雑な感情が生まれる展開が描かれている。

そんな今作では、先に紹介した5つのメインキャラクターに加えて、新たに4つのキャラクターが加わる。未来を不安に思う「シンパイ」、誰かを羨む「イイナー」、他者の目を気にする「ハズカシ」、そして無気力な気持ちを表した「ダリイ」の4キャラクター。

これらの新たな感情は〈大人の感情〉として、もともといたヨロコビたちに代わり、ライリーの心を支配しようとする。

これら〈大人の感情〉の中で特に印象的だったのはやはり「シンパイ」である。特に印象的だったのは、アイスホッケーの実力を評価されたライリーが高校のアイスホッケーチームに呼ばれ、チームメンバーとして選抜されるか否か、を決める試合のシーン。

ここで、シンパイはあらゆる「最悪の事態」を想定し、ライリーの不安を掻き立てる。

もし、チームに選ばれなかったら?
選ばれず、高校の友達ができないままだったら?

シンパイはある1つの事象に対し、まだ起こってもいない悪い未来が起きることを考え、未然に防ごうとする。しかし、シンパイの感情があまりにも行き過ぎた結果、ライリーは力ずくで試合を進め、少しパニックのような状態になってしまう。

あぁ、こういうことってあるよなあ。そんなことを思いながら観ていた。

ライリーの頭の中の感情を、そっと自分に置き換えて考えてみると、私の頭と心には割とずっとシンパイがいるな、と思った。

漠然としたシンパイ。
明日もし働けなかったら、というシンパイ。
もし自分の文章が一度も評価されずに終わったら?というシンパイ。
今描いている作品が上手くまとまらなかったら?というシンパイ。

ヨロコビはたまに。
カナシミやムカムカは舞台袖待機。
イカリはいないかな。
ダリイは油断するとすぐ出てくる。それはそれでよし。
イイナーとハズカシは4年前くらいまでいたかな。

考えてみるとやはり、私の「感情席」にはシンパイが居座っていることが多い。ただ、同時にこうも思うのだ。

もう1キャラクターが私には存在するぞ、と。

シンパイとニコイチの「デモキットダイジョウブサ」である。このキャラクターは、この1~2年でよく現れてくれるようになった。感情席でシンパイが大暴走を始めようものなら、このデモキットダイジョウブサが表れて「まあまあ」とシンパイを宥めてくれる。シンパイも、デモキットダイジョウブサの前では、大人しく「そ、そうだよね」と暴走を緩めてくれる。

この数年で「デモキットダイジョウブサ」を召喚できるようになってからは今まで嫌いだった私の中のシンパイを少しだけ受け入れられるようになった。シンパイも私のことが大好きで、私が嫌な目に合わないために、最前線で危機を回避してくれていたんだと。

実際に作中でも、最後のシーンでは全ての感情が肩を組んでライリーのために力を合わせている。そうか。どの感情も私で、みんな私のことが大好きで。私のことを守るために、前に出てきてくれているんだと。

今回映画を観てその考えを確信してからは一層、シンパイと、シンパイをなだめながらやってくるデモキットダイジョウブサを好きになれた気がする。

自分の心と感情に向き合い、「どの感情も私のことが好きなんだ」と自分の心と身体と感情を愛おしく思える作品だった。

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