4年前、20歳の私から来たメール
基本的には必要か不要かをおよそ3秒で見極め、テンポよくメールを削除する私。
そんないつもの調子でメールの確認をしていた2月末。正確には2月29日の事だった。
うるう年にしか存在しないこの日付に届いたメールの件名には【PRESENT4229】25になる玲奈へとあった。
不要、必要以前に
“は?24にこないだなったばっかりだし”
というツッコミが先に出てきてしまった。
確かに今年25歳になるのだが、12月生まれの私は早生まれの人と近しい年齢の感覚があるように思う。
怪しさ半分、興味半分で開いたメール。
冒頭には「このメッセージは4年前の2020年2月29日(土)に筧玲奈さんから筧玲奈さんへ書かれたメッセージです」と記載されていた。
あ、とその瞬間にこのメールの存在を思い出した。
4年前、20歳。
大学2年生だった私は大学の春休み期間を利用して確かこの時期に東北に旅をしていた。4泊5日で、気仙沼〜陸前高田周辺を民泊と民宿利用で回っていたのだ。
あぁ、と当時のことが蘇ってくる。
20歳の私はちょうどその時お付き合いしていた方と、上手くいっておらず距離を置いていた(今振り返るともうほとんど別れていたに近しいかな....)
1人で満喫するはずの旅の道中でも、そのことが頭を占めていてきっとすごく不安だったのだと思う。
“この道がどの道に繋がっているのか不安で不安で仕方ありません”はきっとどの時代の私も持っていて、どの時代の私も心の中で叫んでいるのだと思った。
残念ながら誰かの横にはいないし、まだ結婚したい人もいないけれど。「れいちゃんのぼっち飯」の生き方を通じて出会ってご縁を頂けた方が沢山いる。それは特定の1人がいるよりも心強いことなのかもしれない。
ちょっと20歳の自分相手に強がってみたりもする。
夢に見ていることは沢山、沢山ある。
ありすぎるくらいに、ある。
まだおむすびをいっぱい作りたい
あちこちで出店したい
文章を鬼のように描きたい
雑誌で連載がしたい
エッセイや小説の展示がしたい
まだみたことない野菜を食べたい
農家さんの元で住み込みをしたい
この4年間で、少し体を壊してしまって。
生きたいより、死にたいが上回った時期もあるけれど。今は生きたい理由が自分の中を渦巻いていて、溢れ出るくらい、生きたい。
生きて叶えたい夢、行きたい場所、やりたいことがもう私の中に溢れていて。だから、東北旅の道すがらで会った方に「将来は何がしたいの?」と聞かれて口ごもった自分を決して責めないで。輪郭は、見えてきているから。
周りの人を大事にね。
人はお金じゃ絶対に買えないんだよ。
これは、陸前高田に行った時に民泊で泊まったジジとババの家でジジが言っていた言葉。(残念ながらジジとババの名前は忘れてしまった)
被災をして、大切な人を失う経験をした陸前高田の人の言葉は不思議とすっと入ってきた。
「頭の中の思い出を映像にできる技術が欲しい」
「被災から2週間後、全員の無事がわかった瞬間に安心で膝から崩れ落ちた」
彼らにしか発せない言葉に詰まった“人を大切に”の重みは今の私のご縁を大切にする生き方に少しだけ紐づいている。4年前から変わっていないし、むしろあの時以上に体現できているような気がする。
そして道中で出会ったカフェのご夫婦とは今でもSNSを通じて繋がっていて。卒業間際に一度会いに行った。
知らない土地に足を踏み入れると新しい自分をくれる。知らない土地なんて大袈裟でなくても、初めましての人と少し話すだけで新しい自分をくれる。
4年前の自分と会話をしながら、読み進めた。あの時と私は少しも変わっていないし、とは言いつつ色々と大きく変わった。
そんな過去を噛み締めて次は未来。
4年後、28歳の自分にメールを送ってみた。
4年後、何をしているだろう。だけど、あんまり先のことを考えすぎずにもいたい。
「あんまり先のことは考えすぎないの」
「疲れちゃうよ」
東北で最後に立ち寄ったキャンドル屋のおばちゃんが呟いた一言。
今この瞬間を生きて、そして過去を思い出すきっかけができたタイミングで懐かしい目をして微笑ましく振り返りたい。
20歳の自分、4年後を楽しみにしていてね。
28歳の自分、玲奈という人生を満喫してくださいね。