forget-me-not
藍微塵
私はあの人を愛している。
友人らにこの鼬のような恋路を語れば、「気が触れている」「やめた方がいい」なんて言ってくる。彼らは客観的な見解を述べており、そしてそれは恐らく、正解か不正解で言えば正解なのだろう。
正直に申し上げれば、私だって、わかっている、わかっているさ。これ以上は駄目なんだって。引き際は疾うに過ぎているって。
でも違う。全く違う。私の主観はそう言う。そんなものは私の中では何の意味も持たない。正解だけが全てではない。大切なのは、いかに包容するかだ。弱さも何もかもを。
私は、あの人のことを、敬虔に能動的に生真面目に愛している。誰よりも優先して大切に思っている。あの人が私をどんなに傷つけようとも離れたくないと、どんなに無下にされようともそばに居たいと、今日に至り、本当に、そう思った。本当にそう考えた。
そばに居るだけでよかった。心の底から愛する人に世間のような猥雑な性愛なんかは求めるべきではない。
私は今まで甘かった。歌詞や詩なんかは往々にして、どんな裏切りを受けても永遠に無償の愛を謳っているから、私もこの身が滅ぶまで尽くそうなんて詩で書いたりした。実際、本当にそう思っていた。
しかし、あの人を前にすると私は愚かになっていた。あの人の言葉だけがまかり通るのが理不尽に感じてしまった。
そして、あの人と私、二人の間ではあの人が法であの人が全てであるのに、それを破ってしまった。
鄙陋かつ無意味な私見を述べ、悲しませてしまった。私は本当に後悔している。反省している。私はただ受け止めればよかったのだ。そしてこれから今以上に理解を深め受け入れるべきだった。
私が謳った愛はくだらないものだった。恋が叶う、その間際に理想的な愛など意味がなかった。その時私に必要だったのは堅実的な言葉だった。
私はあの人の過去について何も知らない。学生時代どのような人物だったのか不思議と聞くに聞けなかったからだ。けれど、度々ある発言から、あの人は心に深い傷を負っている、不信になっている、どこまでその心理状態が深いのかは分からないが本当にそう思う。今思うと確かにあの人は私が出会ってきた人間の中で最も不安定の中で生きているように見える。そしてどこか無理をしている。誰がどのように関与してあの人を追い込んだのかは分からない。異常な閉鎖的組織がそうさせたのかも知れない。身を守るため、無意識に他者を切り離す癖が身に付いてしまったのだろうか。深層心理を探るには無限に知り得ないことばかりだ。
ただ一つ言えるのはあの人の精神状態は今、全くもって均衡を保てていない。本人が気づいているかは分からないが、不安定なのは明瞭だ。それが前述の身を守る行為に変化しているのだろうか。分からない。
だからこそ私は根気よく待ち続けることしか出来ない。今はまだ理解が追い付かずとも共に過ごすことで私の理解も包容も限りなく完璧に近づくだろうから。
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