虚構

 明るい光の中でボートを漕ぐ人をえがいていた貴女と黄ばんだような色の向日葵を描いていた私。いちごミルクを友に買いに行かせたのは、二人だけで向き合いたかったから。
 貴女は私を愛していて(冬)。
 私は貴女を愛していて(夏)。
 僕らは愛し愛されていたはずなのに、注がれた愛の行方は今もまだ知らない。世界のどこかで奔流に飲まれているかも知れない。だから、戻って来るかも知れない。

 どうにも脈拍が落ち着いてしまう。
 どうしたって脈が貴女に落ち、着く。
 いやあ、きっと、何かの間違いだと思いたいし思われたい。いやあ、まさかって。そのまさかかも知れないのが堪らなく嫌だ。

 一枚の絵を完成させるまでの間に私は崩れてしまった。
 それなのにどうしたって貴女の心持ちを思うと、上手く笑えない。貴女の為に死にたくなる。
 貴女が私の言葉であったり行動などでほんの少しでも笑うと、私は幸せだ。

 私はこれからの人生に貴女一人がいるのならそれでもう何も望まないのだけれど、貴女は自由だ。貴女はこれから先、どんどん世界を広げて行くだろう。そうなってしまえば、私は端役の端役、つまりは美術館でたまたま同じ絵を見ていて同じタイミングで動き出した相手より価値がなくなる。

 でもそうなってしまっても、いい。
 私にはそのくらいのつらさが丁度いい。
 そして私たちは、とあるカーブを緩やかに曲がり、その先で永遠のフレンドとなるのだ。
 悲しい話だと思いませんか。

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