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【NEWS】 なんとAIと人類が“お絵描き”を通して闘う『outdraw.AI』が『デヴィエーション・ゲーム』にタイトル変更。背景には同名の企業や昨今のAI事情が関係。タイトル変更に関する特殊ケースは他の開発者の参考になるか?
先日弊誌でもニュースにした、AIと人類が “お絵かき”で何が書かれているかを当てる闘いを行うゲーム『outdraw.AI』。Steamのストアページ発表以来、いくつかのゲームメディアで取り上げられ話題となった本作だが、2月1日になんとタイトル名を『デヴィエーション・ゲーム』(Deviation Game)に変更する発表を公式Xアカウントにて行った。
We have an announcement: https://t.co/pblZthHZY4 is changing its name (back) to Deviation Game!
— Deviation Game / デヴィエーション・ゲーム (@deviation_game) February 1, 2025
お知らせ:https://t.co/pblZthHZY4 は『デヴィエーション・ゲーム』という(元の)名前に変わります!
read why here / 詳しくはこちら ↓https://t.co/wYIonS2GN3
正直なところ、ゲーマーにとっては短期間でのタイトル変更は印象が取っ散らかってしまい、せっかくのゲームタイトルを覚えられないというリスキーなものだ。
しかし、そんなリスクを取ってでも今回の変更を行った背景には、さまざまな要素が絡んでいた。もともとはメディアアートとしてのプロジェクトという原点。しかし商業のビデオゲームの現場にて、プロジェクトを公開しようと考えた時の行き違い……そうした要素が絡んでのことだった模様だ。
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もともとのメディアアートプロジェクトの名前に戻った
まず、今回の『outdraw.AI』というタイトル名から『デヴィエーション・ゲーム』に変えたというのは、『outdraw.AI』から本作を知ったゲームファンからすると唐突でよくわからないかもしれない。しかし実は、『デヴィエーション・ゲーム』という名前こそ、開発の木原共・Playfoolらが当初のこのゲームのタイトルにしたがっていたものなのである。
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steamでの公式のアナウンスでも明らかにされているように、もともと本作は2022年のアートプロジェクトとして始まったものだ。そしてそのプロジェクトのタイトルこそ『デヴィエーション・ゲーム』と名付けられていた。
本タイトルのインスピレーションの元になったのは、コンピューターサイエンスの父、アラン・チューリングが1950年に考案した「イミテーション・ゲーム」(模倣の遊び)だった。これはAIが人間を模倣しようとすることが焦点とした考えを指している。後にこの考えは発展し、「AIが人間のようにふるまえるかどうか」をテストする「チューリングテスト」として広く知られている。
時は進み、現在は生成AIの発展が活発に行われている。画像・音楽・映像……人間のクリエイティブを学習、(そして賛否がある言い方になるだろうが)模倣したクリエイティブが目立つようになった。まだ人間の意図や意思を込めたクリエイティブこそ難しいとはいえ、少なくとも (あるレベルの)“模倣”としてのAIは活発になっている。
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そこで木原共・Playfoolたちは、いまAIによる人間の模倣が加速している時代に、チューリングの考えを逆転させる批評的なプロジェクトを考えていた。
それが『デヴィエーション・ゲーム』(逸脱の遊び)である。これはAIが過剰に使われる時代に、人間がAIの理解から逸脱する可能性を探すことをコンセプトにしている。
表向きは「お絵かきで何が描かれているかAIと人間で対決だ!」みたいなギャグかカジュアルかわからないようなゲームに見えただろう。だが当初は『デヴィエーション・ゲーム』はそんな風に日本や海外のアートスペースやイベントにて、AI利用が産業として加速していく社会をユニークに批評して見せるプロジェクトだったのである。
現代社会に批評的なメディアアートを、商業に持ち込むときのひとつの悩み
そんなメディアアートとしてスタートした『デヴィエーション・ゲーム』だったが、これを商業のビデオゲームシーンにて商品としても展開しようとする際にひとつの悩みにぶつかった。
木原共・Playfoolらは、2022年の初期バージョンの展示の後、誰もが遊べる家庭用バージョンとして開発を続けていた。ところがその時、大規模な商業ゲームスタジオが新しく設立されたことを知りました。そのスタジオの名前こそ「Deviation Games」だったという。
チームは本作が巨大な出資を受けているスタジオと名前が被ってしまうことを恐れ、泣く泣く『outdraw.AI』に名前を変更することを決めたという。タイトルが実は被ってしまっていたとか、開発会社と重なってしまったなどの問題はしばしばありえるが、これもまたメディアアートが商業の現場に作品をそのまま持っていくときに起こり得るひとつのケースかもしれない。
商業のゲームシーンで生成AIに対するユーザーの反発の問題
ところが問題となったDeviation Games社が閉鎖されるニュースがあり、チームはもともとの『デヴィエーション・ゲーム』の名義を使える可能性を見出した。
このことが名義を『デヴィエーション・ゲーム』に戻すきっかけだったことは間違いないが、各種の情報を集めるに『outdraw.AI』という名義自体も苦渋の決断で名付けていたことも伺えた。
また木原共氏に少し話を伺ったところ「(タイトルに)AIを含めることが色々と炎上につながりかねない」ことも大きかったという。商業のビデオゲームやイラストレーターのシーンでは現在、生成AIに対する猛烈な反発が渦巻いている。これはさまざまな生成AIのテック企業が学習データとして自作を盗まれることに関する問題が大きい。
アートとして批評的にスタートしたものが、商業ゲーム展開において批評していた問題のほうにすり替わりかねない問題
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しかしなによりタイトルを戻した理由は、「もともと批判的に見ていた対象に、自分たちがすり替わってしまう問題」が大きいように思う。
先のsteamでの公式発表にあるように、以前の『outdraw.AI』というタイトルに関して「さらに、『.AI』という部分は私たちをテクノロジースタートアップのように見せていましたが、それは私たちらしくありませんでした」 と語っている。現状の生成AIのシーンがいまテック的にトレンドなのは間違いない。しかしやはり産業として無批判に拡大しているものに、商業の理由で『outdraw.AI』を名乗っていたことの苦々しさもうかがえる。
このことは、チームがコンセプトとして批判的に見ていた対象に対して、商業ゲームシーンにて展開しようとした際に、逆に批判的に見ていた対象そのものになっていってしまうフラストレーションも感じられた。そもそも「テクノロジースタートアップ」的にAIを利用する流れを批判するものだったのに、むしろ「スタートアップのようにふるまわなければ商業ゲームではだめなのではないか」と思うことは相当なものがあっただろう。
アートとしてゲームを扱うことは、しばしばそのゲームやテクノロジー自体を批評的に見ることでもある。しかし、商業ゲームでなんらかのビジネスの成果を目指し、舵取りを変えたときには話が変わってくる。今回のタイトル変更の背景には、メディアアートが商業ゲームシーンにもアクセスする問題など複数の観点が読み取れるのである。
あらためて『デヴィエーション・ゲーム』は2025第1四半期にて発売を予定している。おそらくは、かなりすっきりした思いでもとのプロジェクトに戻ってきたと思われる。
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