過不足ない文章を書きたい。
――やっぱり理想としては、不足も過剰も感じることのない文章。いくら長編を綴るからといってその追求を怠ったら、中だるみが起きてしまいます。
人生は物語。
どうも横山黎です。
今回は「過不足ない文章を書きたい。」というテーマで話していこうと思います。
📚筆が進まない……
最近、新作長編の執筆に励んでいるんですが、なかなか筆が進まなかったんです。というのも、いつどこでどんな情報を出していくのか、どんな順番で何を書いていくのか、それに頭を悩まされていたんです。
長編だし、登場人物が自然と多くなってしまったんですが、誰がどこで登場するのか、どんな役割を担わせるのか、考えだしたらきりがありません。やっぱり意味のない情報は極力少なくしたいし、唐突に新情報を書き足すのは避けたい。
僕の今書いている物語は一人称視点なので、登場人物が思ったことがそのまま文章になります。作者が書きたいことを書きたいときに書いてしまっては不自然な文章になります。
書いているのがミステリーだから、どうしても出さなきゃいけない情報はあるわけで、出すタイミングも鍵になります。より読みやすく、不自然にならないような文章を綴ることを追求したいのです。
📚『天国へのカウントダウン』の緻密性
僕は大のコナン好きで、近日公開される映画最新作『黒鉄の魚影』を心待ちにしているんです。ファン待望の灰原哀主軸の物語ですから。で、気持ちをつくるために、最近はコナンのアニメや漫画、映画を味わっているんです。
今年の映画と同じように黒づくめの男が登場する5作目の映画『天国へのカウントダウン』を久しぶりに観たんですが、やっぱり緻密で面白い。情報の出し方が的確で、全ての情報に意味があり、役割があるんです。
たとえば、物語序盤、少年探偵団のみんなが車の中で30秒を当てるゲームが行われるんです。コナンくんの隣に座っていた吉田歩美ちゃんって女の子が30秒ぴったり当てます。
物語中盤、物語の舞台となるツインタワービルという建物のなかで開催されたパーティーで、高級車が当たるゲームが行われました。これも30秒をあてるゲームでした。少年探偵団も参加したんですが、歩美ちゃんは30秒をあてることができませんでした。
物語終盤、黒づくめの組織によってしかけられていた爆弾が作動し、ツインタワービルが炎の渦に飲み込まれます。パーティー会場にも最後の爆弾がしかけられており、コナンを含む少年探偵団たちが当選用の高級車で脱出を試みるという展開が待っているんです。
爆弾のタイマーはバーカウンターにあって、そのカウントダウンを頼りに、爆発のタイミングをねらい、爆風と共に隣のビルへと飛び移る算段です。車に乗ったらタイマーが見えませんから、ここで役割を果たすのが30秒をぴったりあてられる歩美ちゃんというわけです。
現実的に可能かどうか、子どもが勝手に車を運転するな、とかつっこみどころ満載ではあるけれど、コナンの世界では許されることです(笑)
僕が注目したいのは、「30秒を当てるゲーム」が日常のワンシーンで登場し、物語中盤でも登場し、そしてそれは後に使われる車を登場させるためのもので、さらには物語終盤の脱出劇で使われるのです。
パーティーのときに歩美ちゃんがあてられなかったのは、コナンくんがそばにいなかったからでした。ときめきのリズムにあわせて、30秒をぴったりはかることができたのです。物語序盤、そして物語終盤の車の中ではコナン君のそばにいたから、ちゃんと30秒ぴったりでした。「30秒を当てるゲーム」がラブコメ展開をつくる要素でもあったのです。
その他にも情報のタイミングや伏線の回収の仕方に緻密さを感じることができて、物語を作るうえで参考になるなあと思いました。それがエンタメ性を強くするためのひとつの方法かもしれません。
📚過不足ない文章を書きたい
やっぱり理想としては、不足も過剰も感じることのない文章。いくら長編を綴るからといってその追求を怠ったら、中だるみが起きてしまいます。
最近は短編ばかり書いていたから過不足ない文章を書こうという意識が自然と持てていたけれど、長編を書くのは久しぶりなので難儀しています。ただ、今書いているのが連作短編のような構成を取っているので、まだ書きやすい方ではあります。
読書や映画などを通して物語に触れ、過不足ない文章、緻密で自然な物語を綴れるように努めていこうと思います。
昨日もずっとてこずっていた物語の始め方に答えを出せました。それが正解だったのでしょう、従来の文章を壊して新しく書き始めたら筆の進みが変わりました。
書きたいことははっきりしているけれど、どう始めるのか、どの順番で描いていくのかによって伝わり方は変わってきます。筆が進むということは、流れるような自然な文章を書くことができているということ。もし筆が進まないときは、一度戻ってみる、必要があれば一度壊してみることも大事かもしれません。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
20230413 横山黎