ふたりを繋ぎ止めた手紙
ーーふみの日から始まったふたりの物語。大切な瞬間にはいつも、手紙の存在がありました。
人生は物語。
どうも横山黎です。
作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。
今回は「ふたりを繋ぎ止めた手紙」というテーマで話していこうと思います。
昨日の記事で僕の大切な人に宛てた手紙を書くと綴りました。もちろん、その通りに手紙を書きました。今回の記事はそれにまつわるお話です。
日本郵政が「23」は「ふみ」と読めることから毎月23日を「ふみの日」と定めているんですが、その日を毎月の記念日にしているふたりがいます。
僕と、僕のパートナーです。
シェアハウスで出逢った僕らは何度も顔を合わせるうちに、お互いの距離感や一緒にいるときの安心感から思い合うようになりました。
2023年7月23日。
ふみの年の、ふみの月の、ふみの日に、僕たちはふたりの物語を始めることにしたんです。
それ以降、毎月23日を記念日として、一緒にご飯を食べにいって、その1カ月を振り返りながらふたりの時間を過ごしているんです。
そんな関係も1年半以上続いていて、ちょうど昨日、10月23日、15回目のふみの日を迎えることができたんです。
ただ、昨日のふみの日は今まででいちばん早く迎えたいと思うのと同時に、迎えてしまったら一生後悔するかもしれないと思っていました。
この1ヶ月、僕らはふたりの物語に栞を挿んでいました。会うこともせず、連絡を取ることもせず、それぞれの日々をひとりで過ごしていたんです。
ひょんなことをきっかけに、ふたりでこれまでのことを話す機会がありました。思い出を振り返るのではなく、これまで覚えた違和感や不信感をぶつけ合っていました。
その場では埒が開かないと悟った僕は、これは一度距離を置く必要があるかもしれないと思い始めました。ただ、気軽にそんなことを切り出せるわけでもなく、涙に濡れた沈黙が続いたことを思い出します。
先に切り出したのは、パートナーでした。
なんと同じタイミングに同じ解決策を、パートナーも考えていたのです。すかさず、僕はこう伝えました。
それを聞いて、パートナーの瞳はさらに光りました。手紙を綴るように思いを伝え合ってきた日々のなかで、僕らは似た者同士になっていたのかもしれません。
そのとき僕の頭のなかを、とある提案がよぎりました。
その言葉を聞いて、パートナーは俯きました。肩を小刻みに震わせました。やがてパートナーはこう伝えたのです。
そんな経緯で、1ヶ月後のふみの日、つまり昨日まで僕らは距離を置いていたわけです。
昨日の昼間、僕は本屋さんでレターセットを買って、その中にあるカフェで手紙を書きました。スマホの電源を切って、この1ヶ月のことを振り返り、自分の心の軌跡を辿る旅に出かけました。
はじめから決めていたことですが、伝えたかったことは「これからも共に生きていきましょう」というメッセージでした。永く一緒にいるために、僕らは1ヶ月間距離を置く決断をしたつもりでしたから。
レターセットに入っていた便箋を全部つかって、メッセージを綴りにいきました。いろんな思いが、思い出が鉛筆の先から溢れ出てきました。書きながら泣いていました。
その夜、僕は約1カ月ぶりにパートナーと会いました。
手紙を読み合うのは、パートナーの家と決めていました。最寄り駅近くまで車で迎えにきてもらって、それから家へと向かいました。
車中、何を話していいか分かりませんでした。僕は関係を続けたいと思っているけれど、相手はもう愛想をつかしているかもしれないわけですから。それはきっと、相手も同じようなことを思っていたのかもしれません。
部屋に着いてからすぐ、お互いがお互いに手紙を渡しました。そして、読み合いました。パートナーからの手紙を読んでいる途中から、僕は涙が止まりませんでした。それは、パートナーも同じでした。
ふたりのメッセージは、同じでした。
15回目のふみの日を、無事にふたりで過ごすことができました。近くのイタリアンレストランで夕食を済ませて、この1カ月話したかったことをたくさん話しました。行き帰りは手をつないだし、夜は一緒に眠りました。
ふみの日から始まったふたりの物語。
大切な瞬間にはいつも、手紙の存在がありました。
昨日もそう。これからもきっとそう。本当に伝えたいことがあるとき、もちろん直接言葉にして伝えることも大事だけれど、僕らはそれよりも手紙に綴ることを尊く思う人たちみたいです。
僕らの関係を繋ぎ止めてくれた手紙を一生ものの宝物にしながら、ふたりで永遠を生きられるように物語を綴っていきます。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
20241024 横山黎