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2025年の「逃げ恥」

結婚は成約特典付きのシステム

私、28歳。恋人30歳。
付き合って1年と少し、同棲予定。

「結婚とかって考えてる?」

アラサーの恋人同士の間に生まれる至極真っ当な話題である。

「いやぁ…まだ分かんないかな」
「だよねぇ」

いつもこのオチで終わる。
私としては大変ありがたい。

私は、結婚したいと思ったことがない。
現在進行形でもない。
結婚にいいイメージがないとかではない。
ただ、メリットが分からないのだ。

周りの友達は結婚して子供がいる。
みんな好きな人と結婚して幸せそうで、
婚姻届に指輪置くやつとかやってる。
どうして、結婚したいのか。

分からないのだ。
結婚=幸せ、って?

今の私は何もない。

去年、派遣切りにあった。
人件費削減が理由で私以外にも切られた人はいた。
残業して資料を作ったり、システムを構築して派遣先には貢献してきたつもりだったが、その年に正社員になった人がいて私の分は割けない。
それが理由だった。

次の派遣先は合わず、少し前になった鬱傾向がぶり返して辞めてしまった。
今は在宅でできる事務の仕事をしている。
収入は半分になって、今の家の家賃は正直高い。

派遣切りが決定した時、その職場の正社員である恋人は怒っていた。

「勝手すぎる」
「まあね…でも仕方ないよ」
「…」
「これを機に養ってくれよ〜なんて」
「それね、思ったんだけど一緒に住む?」

休憩終わり5分前。
唐突にそう言われて今は引っ越し作業の最中。

なんだか、似たようなドラマあったよな。
と、約10年ぶりに「逃げ恥」を見始めた。

逃げるは恥だが役に立つ

星野源さんが好きで見出したドラマは、気づけば社会現象になっていた。
私がリアルタイムで見ていた時、これは革命だと思った。

なんて、なんて合理的なんだ…!

お互いの理にかなってる結婚で、素晴らしい!と感動した。2人のような結婚が一番理想的だった。

平匡さんが、結婚してよかった理由を述べていたセリフが印象的だった。

「各種控除などでさらに経費削減できて、助かります」

まじそれな。
と、約10年前の私は軽く考えていた。
そして現在の私はみくりさんと同じ状況になった。

2025年に見た逃げ恥は、心にグサグサと刺さる。
みくりさんが作中に言うセリフ。

「みんな誰かの役に立ちたくて」

その通りだった。
仕事において誰かの役に立ちたい。
そう思って頑張ってきたけど、選ばれなかった。
あまりにも共感しすぎて見るのをやめた。


恋人の結婚観

「結婚とかって、考える?」
「うーん…分かんないから今すぐしたいとは言えない。ごめんね」
「んーん、謝ることじゃなくてさ、私と同棲までする関係になるわけじゃん。頭の片隅にそのワードはいるのかなって」
「あるはあるよ」
「そっか」

そりゃそーだ。
恋人らしい恋人は、私が初めてなのに付き合って1年しか経ってない私と結婚なんて簡単に考えられない。

「俺、結婚っていまいち分かってなくて。結婚ってしたら国から特典がもらえるみたいなイメージなんだよね。」
「うん」
「それが本当にいいのか、まだ分かってない。でも女の人が名前を変えるって労力がかかるし、大きなことだからちゃんと納得してからしたいよね」

なんていい人なんだと同時に、
よかった、同じ人がいたと思った。

私には結婚が分からない。
逃げ恥のような合理性を理解してくれる人はなかなか現れない。

そう思っていた。
恋人は平匡さんにそっくりだ。
否定しなくて、優しくて合理的。

2025年の逃げ恥は、
ある意味で私にとって、結婚のよさを教えてくれたような気がする。

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