檸檬
自分は最低だ。なぜか、なんて聞かれても理解してもらえるかは分からない。とにかく、自分は最低なのだ。
ねェ、あなたって、なんのために生きているの?
そう問われて即答できる人間はいるのだろうか。
きっといる。
でも自分は即答できない。
何度も何度も、もう嫌だと思って、今が絶頂だ今死のうと思って、それでも今自分はこうしてこのエッセイを書いている。
何度、死にたいと思って、何度、生きたいと思ったかなんてカウントなんかしていない。結局図太く生きるしかないのが自分で、結局生き延びるのが自分で、簡単に死ぬことも簡単に覚悟することもできないのが自分なのだ。
絵を描くことを何度やめたいと思ったかなんてカウントしていない。もう描きたくないと思った回数もカウントしていない。そんなことを言っておいて、描けなくなればきっと自分は死ぬのだと思った。
ねェ、なんのために生きているの?
そう問われたときに、こたえられる理由が欲しかった。
もしも大事な人のつらさや痛みをもらってしまうことができれば、自分に与えられるはずの幸せをあげてしまえれば、そのために生きてきたのだといえると思った。
あなたの苦しみを代わりに生きているから死ねないのだと。
あなたの苦しみを代わったから死ぬのだと。
それが生死の理由になると思った。
自分無しでは成しえない何かがあればそれが生きる理由になったのだと思ったし、自分が死ぬことで成しえる何かがあればそれが死ぬ理由になると思った。
あなたの苦しみを欲しがるのだって、あなたへ幸せを与えたがるのだって、死ぬ理由や生きる理由が欲しかっただけだ。
優しさなんかじゃない。
あなたをダシにして自分勝手に人生を展開させたかっただけ。
自分は、最低なのだ。
優しくなんてない。本当に優しい人間ならあなたをダシになんかしたりしない。自分の苦しみの遺棄場所にたどり着くためにあなたの苦しみを使ったりしない。
生きることも死ぬことも、自分のためにはできない弱さが優しさに見えているだけなのだ。
そんなことを願って今日も苦しみ続けるのが自分という最低な人間なのだ。