映画日記〜ホドロフスキーのサイコマジック〜
1ヶ月も前に貰った相談の答えきれない相談一覧をずっと眺めては回答をつらつらと何千文字も書き消してを繰り返す。雨天の静かな土曜日。朝、昼になっても薄暗い。ずっと雨の音がする。何音。ぼんやり頭痛。余計なことを考えない今日。「ホドロフスキーのサイコマジック」社会的距離感拡大戦略の保たれた劇場で見る。3倍の値段を払って。いい。何時もこの位映画館に隙間があって。いい。サイコマジックは主人公が続ける心理療法で自作の中に出てくる場面の再現、奇天烈な体験を齎し相談者の悩みを解き解すほぐす。相談者は家族、夫婦間、人生、ごく個人的な悩みを主人公に打ち明け、悩みに合う処方箋を授ける。按摩、土に埋められた上に生肉をばら撒き鳶に食べさせ憎む家族の顔写真を貼った南瓜を鎚で叩き割る。内容は相談者により異なる。記録映像作品として追う。初めこそ笑う奇妙な光景に見える。段々全く訳が分からないことをしている訳でもない。気付く。ある者は慟哭し、裸になり赤ん坊のよう体を預ける。父を許せない相談者には数々の身体的体験後、最後に父の顔写真を貼った赤い風船を持たせ空へ向けて放つ。記録映像作品中ではサイコマジックを終えた誰もが生まれたての赤ちゃんのよう多くの光を取り込みキラキラと瞳を輝かせる。
家族を許せないと悩む人、人生は思ったよりも大したことがなく落ち込む人、互いの悩みを理解不能な夫婦、吃音により自信が持てない人、生まれる子を愛せるか不安な人。悩みの数々は私も感じることのあるごく一般的なもの。相談者を見て思う。彼らの多くが何かに囚われ感情を自ら抑圧する共通点。本当は思ってはいけない。感情を出した所で第3者から否定される。そう。状態になる経験がない人の方が少ない。世の中を見渡す。有名人の不倫報道で何故か被害者面をし騒ぐ人、ネット上ですれ違ったのみの気の合わない誰かに怒鳴り散らす人、誰かに精神的疲労を与えられていることを本人に言えないまま抱え込む人、無関係な他の誰かに八つ当たりをする人、誰かを馬鹿にすることで無知を隠す人、寂しさを怒りで覆う人。決して綺麗とは言えない感情を抱える人が幾らも目につく。本当は感情が生まれること自体は決して悪いことではない。力を何処にも出すことが不可能、出した所で第3者に否定されることにより自身の腐敗原因になる。生きることは理不尽の連続。親、級友、上司の人格も選ぶことが不可能な上、他人という生き物を自分に合わせ捻じ曲げることも易々と許されない。怒り、悲しみ、拒絶の感情が湧き出る。当たり前。人生から完全に無くすことはどんな金持ち、美人、天才でも不可能。気をつけるべきは負の感情自体を抑圧しされることの方。