映画日記〜グリーン・ブック〜

「グリーンブック」観る。1ヶ月前の話。劇場を出ながら興奮した頭でアカデミー作品賞を取って当たり前。思わず口に出す位、快心の出来。腕っ節が強くいい加減。情に厚く心根の優しい伊人用心棒、孤高の天才黒人ピアニストの心の機微が喜劇的に分かりやすく諧謔に描かれる。大雑把な例えは、誰が観ても何処かしら感動可能。

鑑賞後、外出。雨が降る。映画中でも2人は雨に降られ、車の前照灯反射、2人の体から滴る水。全部綺麗。自分も濡れても悪い気はしない。いい。鑑賞後はこういうことが起こる。私は映画が大好き。

黒人差別が色濃く残る南部への旅。厳しい現実も描かれ優しくていい人にも初めは刷り込み的に疑いなく植えつけられた差別意識が宿る。互いを1人の人としちゃんと見直す瞬間どんどん薄まり出し何時からか相棒の関係性に変わり行く。

本作を見る私は何時からか2人を見守る微笑ましい観客。2人の人としての可愛らしさに胸を打たれ行く。登場人物が理不尽な黒人差別を受ける時、優しいな表現であっても胸が引き裂かれるよう痛む。もっと優しい表現にしてあっても素敵な彼が侮蔑されるのみで私の心は痛む。侮蔑した相手を憎む。画面中で同じよう怒り狂う。本作は中でも諧謔のみは失わないまま旅の最後まで私を連れて行く。笑い泣く旅映画の傑作。

本作がアカデミー作品賞を受賞した時、同じく選出されていた「ブラック・クランズマン」監督・スパイク氏は怒りで席を立つ。話に紐づき本作受賞の背景には喜びと共に多くの批判。

映画雑誌では白人監督が黒人差別を描くことが偽善という文脈で語られる。確か本作に見られる差別表現は実際の史実よりもかなり優しくなる。「ブラック・クランズマン」、同アカデミー賞で助演女優賞を受賞「ビール・ストリートの恋人達」黒人差別の実態をより事実に基づき厳しく痛々しく描く作品群と比べると甘ったるい映画と言われる。理解可能。

映画はそれぞれに違う役割を持つ。当然。もっと言うと役割が違わなければ同時上映される意味が薄まる。「ブラック・クランズマン」には「ブラック・クランズマン」の本作には本作の存在すべき理由がそれぞれある。比べるものではない。

本作は差別問題提起映画。以前、人、人の関わり合いを描く真に素敵なヒューマンドラマ。本作に対し差別問題の描き方の視点からしか批評をしない人の方に私は危機感を感じる。

ピアニストは黒人。古い黒人文化を生きてきた訳ではない。ピアニストとし生き才能で地位、名誉を手に入れる。裕福な白人に招かれどんなに立派なピアノを弾いても何処かに馴染める訳ではない。白人社会中、黒人社会中にもはっきりとした居場所がない。彼には彼固有の彼にしか本当の色、形を分かることが不可能な1つの孤独がある。

ピアニストは特別な存在だからでは決してない。当たり前に本当は1人1人の孤独は本人固有のものという話。分かりやすく肌色、出身で分ける。人の持つ苦痛の種類を分かったつもり。他者理解への重要な過程中思考停止しては本質まで辿り着かない。

本作を差別問題の描き方視点でしか評価しない人は細やかに描かれるピアニスト自身の孤独、悲しみ。全て黒人視点で済ませる?

もっと細部を見る。本作は本当の意味で一見分かり合えない人同士の心の交流を丁寧に描く映画。限りなく豊かで面白い傑作映画だと分かることが可能。

素直な作品に対しちゃんとこちらも素直な気持ちに調教し向き合う。大切。此処から学べるのはどんな差別問題も実は向き合い方次第で自分の身近に引き寄せることが可能。

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