映画日記〜ジョジョ・ラビット〜

私的感想。常識外れな行動をする人、法的、道徳的に過ちを犯した人に対しその人の隅から隅まで全て悪と決定したかのよう糾弾する人。そこら中に。

流れにおいて悪の行為自体の厳密な違法性の有無、被害者が如何思うかなどと細かな明細は無視されることが多く、更には糾弾対象が如何思い何を考えて生きて来たか、これから如何していけば良くなるかに関心を置く人は非常に少ない。

本当はどんな過ちも先良くなる為の礎にした方いい。良くなると思い直すことが可能。嫌なこと、悲しいことを理不尽のままにするよりマシ。そう。希望に向かう推進力は想像力、良い人であろうとする意志を弱めると直ぐに失くす位儚い。　

犯罪者、犯罪組織、歴史上の最悪な惨劇を齎した集団、人に対し真っ黒く塗り潰す様、非人間的な血も涙もない狂った人だと言い切ることが可能。惨劇を理解したフリをするのは容易い。全ての悪いことは何処か頭の可笑しい人がやったもの。何もかもその人の頭が可笑しいせいと言える。犯罪、惨劇は天災と同じ。防ぎようないもの。こんな酷いことをした人は1人残らずに狂っていると考えれば自身とは全く違う種類の人として割り切り共感することなく糾弾可能。防ぐことは不可能という後悔、再発を防ぐ為、試行錯誤をする義務から逃れることが可能。自分が犯罪者と同列に扱われることはない。自分はまとも。常識逸脱人は何時も種も仕掛けもない異常者。違う世界の生物。そう。思いたい。分からない。兎に角、人には悪役は悪役と割り切るダサい習性がある。

大虐殺を描いた映画だと一見では気がつかない位気軽で甘い作風で始まる本作。そう。現代人の決めつけ癖に鮮やかに一石を投じる素晴らしい作品。舞台は第2次世界大戦の最中のドイツ。主人公はナチ軍への入隊を夢見るが臆病で優しい性格は軍事訓練に向かない。訓練最中「食べる為の兎を狩れ」と言われ捕まえたのに隙を見て逃がそうとしてしまい他の訓練生からは兎のよう臆病という意味でジョジョ・ラビットと言われからかわれる。

主人公の心の支えはナチ軍の長・ヒトラー。勇気が必要な時、からかわれ悲しい思いの時、ドキドキ心臓が高ぶる時、寂しい気持ちの時の話し相手は彼。主人公の心の中にのみ住む都合のいい存在。架空の友達のヒトラーと共に主人公は明るく元気に日々を生き抜く。頼もしく優しい母との暮らしの中、自宅の隠し部屋にユダヤ人の少女が隠れ住むことに気付く主人公。初めはユダヤ人を迫害する為の教育を信じ込んだ態度で彼女と接するが意思疎通を取る中、次第に彼女に惹かれる。

斬新な物語、現代に根ざした明るいセンスでどんな人も引き込まれる。戦争を知るつもりのなかった人へも届く可能性を大いに秘める。私も冷静に語るふりをし本当は戦争映画は見たくない。悲しく、怖く、苦しく、何より悲しい出来事があったことが今も何処かで起ころうとしている。何となく忘れている方がずっと生きるのが楽。共感能力の低い人は娯楽の1種とし戦争映画を見る。怖い。

平和呆けした私の精神は大好きな人、嫌な人、会っていない家族、自身。何となく最低限平等。酷い差別をくらい理不尽に命を奪われたりすることなく明日、明後日も生きる。信じる。そう。前提で何とか保たれる。私の精神は繊細。

大虐殺、戦争。悲劇は大好きな人、嫌な人、家族、明日も何となく生きる希望が簡単にへし折られる出来事。映画中、家の壁裏の狭く暗い場所に匿われている少女が如何して外に出て踊ることさえ不可能なのか。彼女がユダヤ人だという理由のみ。主人公の父が帰ってこないのも、大切な人を亡くすのも、今生きる国が戦争をするから、強く反対する人物だから。人の人生が1つ理不尽に終わっていいとは思えない理由。戦争映画。そう。呆気ない現実が描かれる。土を這う水のよう無罪な者の魂さえ存在する場所に進み方を左右される。戦時下を元気に生き抜く術の1つとして架空の友達の存在。主人公の心中に住むヒトラーは実際の人物像を分からない前提で喜劇的に強く、程よく優しく、厳しく、彼を導く。友達模型になる人物の正しさを疑い始めるまで素敵な友達。精神的に弱い人は現実を都合よく歪め盲信。神様は自分で作れる。有効期限は心が本当の大人になるまで。

独特のリズム感で喜劇的に描かれる。臆病な主人公、親友のヒトラー。強い兵士になる為日々特訓。中々上手くいかない。簡略化された物語が浮かび上がり見る人は困惑。ヒトラーの見た目をした人物に親しみを抱く。いい？ナチ兵士になる主人公を応援。いい？兵士中にも様々な人がいる。心からナチの考えに賛同する人、ユダヤ人少女を見逃す人。戦場の町で武器を振り回す人が今この瞬間、誰かの命を救う。主人公の母親もナチ信者の主人公を否定しないまま戦争より後の人生の話を積極的にする。軽やかに踊り。芸人には芸人にしか不可能な方法があり、ポップシンガーにはポップシンガーにしか不可能な方法がある。