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映画日記〜ライフ・イズ・ビューティフル〜

夏、突然の雷雨、青空の隙間。1年前の光の記憶。思い起こす方は多い。「スタンド・バイ・ミー」をはじめ、夏を閉じ込めた名作は沢山。夏は美しい事象が待っている。

熱帯夜の雨降り。車窓に衝突し落ちる光る雨粒。じっと見つめる。最寄り駅を降り忘れ、通り過ぎ知らない場所まで運ばれる。嗚呼、光は私の目には美しい光。そう。私が感じることは祖母の家の庭から見上げた満天の星も雨の日の蛍光灯も変わらない。雨粒に見蕩れる。何時になく良いだけのことや、悪いだけのことは本当にある。

母や先生は、してはいけないことを幾つか私に教えた。1つの題に触れる。「何故、嘘をつくことが悪い?誰か、自分を守る為。時として嘘は正しい選択?」あなたは今誰かに嘘をついている?どんな嘘。あなたは如何いったことを正しさと定義付ける。

私は今、現在も、例えば、赤点を取った試験、下手な図工の授業の版画、保健の教科書を見て描いた男女の裸体。そう。恥ずかしい秘密。今でも勉強机の鍵付きの引き出し。眠ったまま。

人は恥ずかしい思い、情けない思いをしたくない。等身大よりも何倍か自分を誇張し大きく見せ、得を享受。自分のための嘘をつく。嘘は、バレれば何時も大人から怒られる。情けなさは嘘で隠そうとした大元の情けない出来事よりもずっと深く、如何しようもない。思いを味わう度、嘘はつかなきゃよかったと後悔。

一般的な、嘘という言葉は否定的な意味で想像。嘘は私達の懐に何時も何かしらの形で隠れている身近なもの。母は魔法使い。嘘と聞き、もう1つ思い出す。胸が甘く切なくなる暖かい記憶。

小さな頃、女子向けアニメの推しキャラの人形を買ってもらい、遊ぶ。乱暴に扱い、腕が取れた。母は何も咎めずただ「目を瞑って10秒数え」と言う。私は打たれると恐る恐る目を閉じ、言われた通りにする。目を開くと腕がつき元通りの人形の姿。「如何して直ぐに直った?」と驚き、問う。母はニコニコとしたまま。「ママは実は魔法使い」とだけ言う。

大人になって知る。母は人形収集家。たまたまこの人形を気に入った。人に遊ばせる用、新品。2つを買う。腕は魔法で治ったのではなく、新しい人形にすり替えられていた。

この時を思い出すと一緒に思い出す映画。「好きな映画は?」と問われる度、何度も答えてきた「ライフ・イズ・ビューティフル」
嘘つき王子の恋から始まる本作。

主人公は口が達者。諧謔センスに溢れる男。愛する人を笑わせる為なら周りの迷惑も考えないお調子者。主人公が好きになったのは街の嬢、婚約済みのドーラ。主人公は彼女の心を愛、諧謔に溢れた接近で軽やかに奪い去る。

主人公は端から見れば自己中な人。問題で王子に間違えられたらその後、王子を名乗る。自分の安いボロ帽子、お金持ちの綺麗な高級帽子を勝手に取り替え、彼女に会う為、お偉いさんに成り変わり職場に潜入し出鱈目演説。彼女を乗せる為、他人の車を借り、壊す。車に積載された赤絨毯は彼女と自分が歩く為、土砂降りの階段に鮮やかに敷く。

何より息を吐くよう嘘を吐く。全て彼女への直向きで甘く爽やかな愛。好きだから笑って、好きだから自分を好きになって。素直な欲求。使われるには彼の運、センス、言葉、嘘。あまりにも適合。世界がくるりと劇場に変わる程。結果、彼女、婚約者の晴れ舞台。主人公は周りに大迷惑をかけ彼女を奪い去る。彼女の心からの笑顔と共に。

彼を狡い、卑怯、迷惑、出鱈目と感じる人は注視して描かれていない。本作の世界線にも沢山いる。誰も彼女を心から笑わせることは不可能。彼女の心を解放することは不可能。真実を伝える為の嘘。

あなたに悪い嘘は何?私は人を故意に傷つけ、哀しませる嘘は悪い嘘に含まれる。視点を変えて見る。哀しみ、傷は突きつけられた真実により生まれる。

真実でもそのまま伝える。相手、周囲の人々を傷つける時、あなたは迷う。迷いはあなたの正直な気持ち。「あなたに哀しまれたくない」笑っていて。願う気持ちを正直に相手に手渡し。必要なのは必ずしも有りの侭の真実ではない。

例えば、現実味を追求する内容の映画。多くの場合、撮影現場とカメラのレンズの間に幾つかの嘘が混ざる。場所の自然光だけでなく、照明さんが光を焚き、場面毎にカメラの画角内の人物、小物の配置を変える。

映画中の現実をより視聴者に伝えられるように成される工夫。調整により脚本中の世界が画面中で再構築。映像という規律の中、そのまま撮ることは有りの侭を伝えることに=にはならない。

人と人との間でも同じ。正直さだけが正直な気持ちを伝えてくれる訳ではない。あり得る。正しさの秤は何で決まる?今の話でバレた。私は、嘘=必ず悪では思っていない。何時も正しさはそれぞれの胸の中。判断するの秤もあなた自身のもの。私の秤は主人公を全肯定。気持ちに現れる。愛、諧謔が基準。

沢山の人が創る社会中、地球という奇跡の自然の中、十人十色の視点。見えない法は無数に作成。触れた時、予想した方向、思わぬ方向から怒られる。

他人の規律を知る。脅かさないよう知識をつける。とても大切で優しい。何より1番にあなたにとって1番重要な正しさの判断基準は何。ちゃんと解り、なるべくブレないで立って。願う。

怒声の飛んでくる方角が限りなく広がることと引き換えにあなたの美学、正しさを確かめる。運も現代では無数。広がっている。確かめて解り合った正しさ。この先もずっとあなたと歩く相棒。

愛する息子にかけられた優しい目隠し。主人公、妻の間には息子がすくすくと育つ。3人は幸せに暮らす。3人の愉快な生活の中、ユダヤ人迫害の手が忍び寄る。3人は強制収容所に入れられる。

人の数だけ見える世界。世界は1度あなたの中に情報として入り、理解。人に伝える時、意識的、無意識に自分が見た世界が相手に伝える時、如何見えて欲しいかを踏まえて話す。

まだ小さな息子には見える世界を解らない。主人公は見る。残酷で救いの無い現実。まるきり変え、息子に説明。「ゲームで、1000点を取ったら戦車に乗ってママとお家に帰れる。怖い人が怒鳴るのはゲームに勝ちたいから」

楽しい現実であるよう巧妙に話して聞かせる。怖がっていた息子も元気になり戦車が欲しいと笑う。先の見えない過酷な日々。主人公は息子を楽しませながら過ごす。

未来ある少年にとって、絶望は何の意味もない。真実を知らせないのは自惚れという意見。実際、映画中、周囲の人は「戦車なんて嘘」「全員殺される」と真実を息子に告げようとする。

主人公は嘘を吐き続け、隠れんぼと偽り息子を安全な場所に隠す。自分が殺される直前までウインクし、お退ける。彼の嘘がよく働き、妻子は死を免れる。主人公が守った家族、心、潤いのある心のまま紡がれる明るい未来。どんな真実より、現実より、彼の心が望んでいたことの本当の真実。大切なのは嘘ではなく想像。

人生は愛、諧謔を忘れなければ必ず美しい。誰かが世界に吐いた嘘の数だけ良い嘘か、悪い嘘かの答えがある。優しい嘘、自分を守る嘘、他人の嘘。咎めようとする時、誰かの嘘により傷つけられた時。大切なのは想像。

相手は如何思う。バレた時、笑って。如何して嘘をついた。相手にも事情がある。如何して自分は傷ついた。如何して相手はそう思う。

誰かが世に吐いた嘘の数だけ嘘が生まれた理由がある。主人公は如何すれば小さな息子の心に悪いこと、哀しいことを残さず守りきれるかを果てしなく想像し、言葉を重ねる。

愛する人に話す時、言葉は何時もより心に添いたがる。その時に出てきたものが嘘だとしても愛、笑顔を産むと願う。

嘘も本当も操ることは可能。あなたの想像力で好きになれる世界を再構築。人生は何時も美しい。

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