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読書日記〜そこのみにて光輝く〜
先日、新しい首飾りを買う。気に入って何時も付けていた小さな金色首飾り。何処かで落とし1ヶ月経過。願掛け。胸に光ると安心。小さな雲丹のような形。トゲトゲの金色の星を瞳に映し、願う。あなたは大切な昔に失くした物を今でも思い返すことはある。
夏は喪失、追憶の季節。何時からか思う。色、匂いが濃く必要以上に記憶が焼き付く。心の方まで痕を残す話。別れて5年。元恋人が忘れられない。新しい人と出会っても心から好きになれない。如何すれば吹っ切れる?別れは作法をきちんとこなすことが出来たら本来とても美しい。
大事に使っていた物、道具。修理を重ね、ようやく力尽きる予感がした頃、感謝をし休ませる。恩を受けた先生、同僚へきちんと挨拶し、前向きに場を離れる。過ごした時を思い出し、自分がつけた傷をなぞる。ピカピカに部屋を掃除し引っ越し。
別れは出会いの唯一の対義語。何かに出会った時に星が弾ける心持ちがしたなら別れる時も同じ重要度で胸に刻まれる。
人は何かと別れる時上手に品よく悔いもなく済ませることは不可能。心で生きる人は尚更。組織じゃない身体は作法の外。寂しい、虚しい、苦しい。感情の言うことを何時も無視しきることは不可能。
失恋から立ち直る映画、新しい出会いから幸福な終わりへ導かれる映画。世界には溢れる。幸福感には甘えず映画を紹介。何かを失ったことのある人に響く。
失い続けた人生の果て。「そこのみにて光り輝く/佐藤泰志」過去にトラウマを背負う無職の達夫。パチ屋で拓児と出会う所から物語は始まる。拓児は喧嘩っ早い人懐っこい性格。直ぐに達夫に懐く。連行された拓児の家で達夫は拓児の姉と出会う。
拓児の家は脳梗塞で寝たきりの父がいる。母は日夜呻き声を上げ求める父の世話に疲れ果てる。姉は昼は工場勤務、夜は身体を売る。拓児の上司にも抱かれ地を這うよう生きる。
登場する人々はみんな何かを失い続けた人生の果てで疲れきる。達夫は職場でのトラウマを何度も夢に見ては汗だくで飛び起きる。
日々襲い来る苦痛、哀しみ。寄る辺のない彼らを真綿で首を絞める。ジワジワ追い詰められる。ずっと追い詰められ続ける。哀しみ、後悔、巨大な喪失は本来とても長い時間をかけあなたに染み渡るはず。
達夫の夢に何度も記憶が出て来る。ついた、つけてしまった胸の傷が深ければ深い程ズルズル痛みを引きずる。当たり前。傷つけ合った記憶だけでなく別れの作法を踏み損ね、気持ちの整頓が拗れたりすると後悔。後々に残る。
平和時が眩しければ眩しい程如何して最終場面を美しく飾れないという自責の念が強まる。別れはあなた1人の人生の場面ではない。別れてゆく誰かにとっての人生の1場面。
生き、出会う。何かがあり別れる。記憶が1人で見た景色より重たくあなたに伸し掛る。当たり前。愛、死に別れる苦しみ。繰り返し前の恋人を思い出すの哀しいから。あなたの好みが染まる人と出会え、知り合い、一緒に過ごし、想いを贈り合う。全部が本当に嬉しい。
本当に嬉しい季節の終わり。どんな形をとってもどんな作法を用いても哀しい。決まっている。自分の間に生まれた愛、死に別れるような苦しみ。
さようならの手続きを済ませ、新しい出会いを受け入れる。尚も何度もあなたの元へ舞い戻る。仕方がない位。あなたはまだ哀しい。あなたの傷は傷のまま。愛するならずっと一緒に居たい。願わずにはいられない。人は寂しがり屋な生き物。
願いが打ち砕かれ続ける度、ずっとを望む心は麻痺。人はみんな何かと逸れることに慣れる。1人でも大丈夫。出会ってもまた1人。悟る。悟りが傷が癒えていない証拠。さようならはとても美しい。哀しい。長い人は20年経ち光が射す。大きな暗闇の合図。
時間は解決しない。あなたの心が哀しみに暮れる。理由では全然休ませてくれない仕事。毎日こなすうち時間は自動で進む。コンベアに乗っていない場所にあなたの哀しみがある。
哀しみは自動で消えずあなたの足が自ら歩む歩幅にのみ合わせ、あなたの身体に溶けて染み込む。時間が解決。無責任な言葉では決して傷が癒えない。時間が運む様々な人生の仕事があなたの目を逸らすのみの表面的な解決法。
哀しみ、別れを笑い飛ばす。明るい歌、大袈裟な幸福な終わりの物語で現実を遠ざける。あなたのあなたのみの哀しみはいつもぴくりとも動かずあなたを見る。目を逸らしたあなたに忘れられるのを生傷のまま見る。姉はどん底の日常を疲れ果て生きる。達夫は姉を愛し「家族を持ちたい」と言う。少しずつ過去のトラウマと向き合い仕事復帰。道を選ぶ。山で道路に使う石を爆破し割る仕事。事故で後輩を殺す。姉の為、新人生を始める。決める。
失ってばかりの彼らを再生に導いたのはダラダラと続く日常ではなく愛。愛を持ち改めて日々は苦しく状況は歪んでいて逃げ出し、逃がしたいと感じ直す2人。呪縛から解放。新しい日々を夢見る。
何も映そうとしない真っ黒い目。達夫は何時からか愛を称えた目で生きる。美しさが哀しみがあった全ての理由と思う程。
何1つ現状は解決せず悪化したまま物語は最終を迎える。最終場面の朝日、佇む達夫の姿。どんな幸せな終わりにも存在しない哀しみの幸福。傷を負ったまま見つめあう2人。
如何しようもなくズタズタに傷ついた2人。見えない本当の切実な光。有難うまで辿り着く。失った人にしか見えない眩しさ。あなたの人生で過去が現在の邪魔をしても絶対大丈夫。少しずつ忘れられない恋を忘れないまま人生を進む。良い。あなたは過去に負った傷を忘れないまま。いい。終わった恋は全部思い出したくないもの。経験=不幸。宝箱は胸中にある。開けちゃいけない悪魔の箱にはしない。
終わり悪ければ全部駄目的な思考。特に若い子はしてしまいがちな現代。女同士で失敗談を語るとつい全部愚痴。解る。あなたが誰かを愛した記憶、あなたが誰かに愛して貰った記憶。どんな終わり方をしてもあなたの人生の宝物。映画は全部が美しくなくて気に入らない台詞があっても心の針が震える場面が1つでもあったら、胸に焼き付く場面が1つでもあったら。あなたにとって出会えてよかったもの。
同じ。あなたの出会い、交際、季節、1場面。あなたの人生を美しく彩る何かがあったならあなたも愛し返して。笑い合い、情を交わし合い、見つめ合い、一緒に何かを見る。そう。1つ1つ星になり浮かぶ夜空。これからもあなたの歩く道を必ず祝福。
触れられる場所にはなくなるさようならの哀しみ。夜の闇になり闇、星であなたの道は今日も程よく歩きづらく、程よく優しい。
何時か、如何してより、寂しいより、ずっと先に輝く有難う。辿り着けたならあなたは忘れられない恋を知る前のあなたよりずっと魅力的な人。時には新しい恋。全然遅くない。哀しみは大切にして。
あなたが誰かをうんと大好きになった証拠。あなたの愛がそのままではいられなくなって凍り付いた姿。溶け、水になり世界に還る日まであなたが大事にして。あなたのみが持つことの出来るあなたの哀しみ。
達夫、姉のよう深い哀しみを負った人同士でしか交わすことの不可能な情があなたにとって何かを失う前の光より価値のある色に輝く。私も願う。哀しみは哀しみのままで。夏は哀しいことが沢山起こる季節。
被爆地では今年も追悼の儀式。日常的にも熱中症などで茹だる熱さを越えきれなかった人が多く命を空に返す。花火は本来亡くなった人への慰霊の意味で行われる。毎年はしゃいでいた自分のことが恥ずかしい。何時の夏。
人は生きるのみでも日々何かを当然のよう失う。遊ぶ玩具は壊れ、愛するペットは動かなくなり、頭を撫でてくれた祖父も世から離れる。あなたの大好きなロックスター、物書き、プロレスラー。あなたが大好きでいるまま合図もなしに居なくなる。
対しどれだけの人がSNSで深刻そうな顔をし呟いても真似する必要はない。「素敵な人がいなくなった。忘れずに生きる。R.I.P.」SNSに書いても亡くなった人には届かない。
フォロワー、SNS上の友達に私は追悼している姿勢を見せるのみに追悼の本質があるとは私は思えない。誰かが世界からすっぽりと居なくなる哀しみは言葉に不可能。いい。
簡単じゃない。いい。哀しみは哀しみのまま。故人を想う姿勢を見せびらかすよりあなたのみの心の世界であなたと此処にはいない人との間に本当に伝える術のないあなたの想いを手向けて。
SNSのフォロワー、街を流れる報道は無関係。あなたの心が居ない人に何時か貰い彩りで育てた本当の花を手向けて。仏花じゃない。いい。心中。
長い時間をかけ哀しみは何時か星になり輝くまでの道を辿る。如何しても辛い時には笑い合ったことを思い出す。その場面も星になって永遠に消えずに在るはず。失うことは夜空に星が1つ増えること。切ない合図。鈴の音があなたの耳に純粋に響きますよう。
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